上 下
5 / 14
第一章 主と下僕

名付

しおりを挟む
前にも後ろにも魁がいるこの状況。

わーい、イケメンが二人もいる!


なんて、喜べるような状況ではございません。



え、なんで魁が二人?
でも、着ている服装も違うような…。
なんか雰囲気もなんか違う。


目の前に居る【】は、スーツを綺麗に着こなしている。
ワックスで綺麗に髪を整え、銀縁の眼鏡がインテリな印象を与えていた。


魁にそっくりな【誰かさん】は、魁を見るなり、溜息をついて



「人に面倒押し付けておきながら、いきなり呼び出すの、勘弁してくださいよー。
貴方の振りをしたりして、微笑みを絶やさないでいなきゃいけないし、気を使わなきゃならないし。
俺、マジ過労死しますって。」





…魁にそっくりだが、どうやらその性格は違うらしい。


肩が凝っているのか、慣れないことをしていた所為か、肩を回すとぽきぽきと軽快な音がした。
よっぽど疲れているのだろう。
顔がゲンナリとしていた。


私の視線に気がついたのか、魁そっくりさんは、私を見ると、目を丸くした。



「あれ、この子が貴方の言ってた【主】ですか?
人間の中でも弱そうだし、っていうか、まだ餓鬼じゃないですか!?
貴方のような高貴な存在が、【契り】を交わした事自体、俺には信じられなかったのに。
何を血迷ってこんな脳味噌小さそうな餓鬼んちょの下に付こうと思ったんです?
そいつなんかの為に俺がこんな重労働されられたと思うと…。」



鋭い瞳をさらに鋭くさせ、
苛立ちを隠さずに、【魁】の姿で




「マジ、食い殺したくなりますね。」




そう嫌悪を隠さずに言ってのけた。
その殺意の籠った視線と、恐ろしい言葉で、全身の鳥肌が立った。


一体目の前に居る人は【誰】なのだ?
魁にそっくりだが、その口調や、態度は別人だ。


威圧感に押され、思わず後すざりすると、背中に何かが当たった。
見上げるとそこには、



怒りをあらわにした魁が居た。



「【化け狐】ごときが口がすぎますよ?
一生その口が聞けないように
私の手自ら、お前を地に沈めてやりましょうか?」



微笑みながらも、その目は笑っていなかった。


怖い。
魁が二人居るだけで怖かったのに、怒り狂っているダブル魁に挟みうちにされて余計に恐ろしいことこの上無い。



「それに、私の姿で我が主に暴言を吐くなんて言語道断です。
まるで私が言っているようで反吐が出る…。
まずは、変化を解きなさい【化け狐】。」

「は、はぃ…。」



魁の殺気と怒りに怯えた様子の魁そっくりさん。
何かを唱えると、風と葉が彼を包み、それが弱まると、そこには



別人が立っていた。



艶やかな栗色の癖の付いた髪に、炎を思わせる紅色の瞳の私と同じ年くらいの少年が立っていた。
その顔立ちは、幼さを残していたが、とても整った顔立ちはジャ○ーズばりだ。
きっと世の女子は彼を放っておかないだろう。
先ほどの暴言を聞かなければ、推し活始めるかもしれない。
ただ、気になる点があるとすれば、服はスーツでは無く、


何故か我が高の学生服を着こんで立っていることだろうか。



「さぁて、どう料理してあげましょうか?
私の妖力の一部として取り込んでやりましょうか?
我が【主】をコケにした罪は、海よりも深いものなのですよ?」

「す、すみませんって!
口が過ぎました!本当に反省してます!
100年も貴方に仕えて来た俺に
その仕打ちって酷すぎません!?」

「黙らっしゃい。
私の広い心で苦しまずに一瞬にしてあの世に送って差し上げますよ。」

「ちょっ、冗談ですよね!?」

「冗談に見えますか?」




恐ろしい事を連呼する魁に対して青い顔をして必死に許しを乞う少年。
どうやら、原因は私に対する暴言らしい。

まぁ、確かに殺す発言は恐ろしかったけれど、彼は行動に移さなかったわけなのだから、命を取るのは、やりすぎだろう。



っていうか、人権(?)完璧に無視ってるって!!



「はい、魁ちょっとストップ!
そこらへんにしておきなさいって。
別に彼は、行動に起こしてないでしょう?」

「いえ、貴方に対する暴言は死罪に値します」



一体誰がそんな法律を決めた。
だったら、今ごろ弥鶴の私に対するイジリは全て死罪に値するのか?
だったら何回、弥鶴は死んでるんだ。



「そんな理不尽な理由で簡単に殺しちゃいけません。
それに命に代えは利かないの!
簡単に奪っちゃいけません!!」

「ですが…」

「ですがもへったくれもない!!
私がいいって言ってるんだから、いいの。
それとも私の言うことが聞けないの?」



そういうと、『うっ』と押し黙る魁。
暫く栗色の髪の少年を恨めがましく睨むと、諦めたのか溜息をついて渋々了承した。


これで、なんとか朝から血生臭い光景を見ずに済んだわ…。
いくらなんでも私の所為で誰かが殺されるだなんてまっぴら御免だわ。



「で、魁、目の前に居る少年は一体誰なの?」

「あぁ、私の配下に当たるものです。」



ふーん、つまり魁に仕えてるんだ。
そういえば、さっきもなんか100年仕え来ただの言ってたな・・。



って、100年!?



「え、もしかしなくても、
彼も・・・魁と同じく【怪異】?」

「お察しの通りで。
まだまだ未熟者ですが、
変化へんげは得意なものですから。
貴方のお傍に居るために必要な手続きを全て彼に任せておきました。」



面倒な事務作業全部丸投げするやつですね。
こんな先輩や上司がいたら大変なんだろうな…。
思わず哀れみの目で見てしまう。


そういえば、結局聞けず仕舞いだったが、どうやって魁は私の傍に居るつもりなのだろう?



「魁、貴方一体全体どういう形で私の傍に居るつもりなの?」



すごく嫌~な予感がしてならない。
スーツ姿、キッチリとした髪、眼鏡。
その姿はまるで…




「貴方の担任の教師としてですよ。」




見事に私の予感は的中してしまった。
この時期に?
新しい教師でしかも、担任?
今までの担任はどうなった?



「え、でも、前の担任は?」

「それなら俺の妖術で校長操って3日前に解雇処分にしてどっか別の場所に飛ばした。」



そうサラッと少年は答えた。

…マジですか?
私1人の為に15年間この学校に勤めていた教員を解雇させちゃったの!?



罪悪感、半端ない。先生本当にごめんなさい。



主君しゅくんがどうしても、
アンタの傍に居たいからやっとけっつーから、俺が妖術使って人間操って。
主君をアンタの担任になるように操作して…。
えーと、戸籍と教員免許とやらも、偽造させたり…ほんっとーにマジこの3日疲れた」



仕えて来た100年の中で一番の労働ですよー。
と、魁に対してブーブー文句を言う少年。
彼は、一体自分がした重大さに気付いていないに違いない。



完璧に犯罪だからね、それ?



だけど、怪異である彼らには人間の法律や罪なんてどうでもいいのだろう。
少年も魁に言われたからやっただけだし、魁は私の傍に居たいからそうした。
ただそれだけの事。



本当に自由奔放だ。



「こら【化け狐】言葉づかいに気をつけなさい。
私の【主】ですよ?
私よりも上の存在、お前より遥か彼方上に立つ者なのです。
お前なんか菜舂様から見たら蚤虫みのむし以下です」



いや、そんな事思ってないし、私言ってないからね!?!?


不服そうに私をジトーと見つめる少年。
絶対嫌われた。
好感度完璧ダウンした。



印象最悪じゃないかぁっ!!



「でも、逆に俺が敬語にしたら、困るのは菜舂さんなんじゃないですか?
だって、俺は転校生としてクラスで彼女を守んなきゃいけないんでしょ?」

「ちっ、口だけは達者ですね。
これで菜舂様が掠り傷一つして御覧なさい、原型が残らないほど切り刻みますから。」



あー、なんかまた恐ろしい言葉がー。
でも、聞こえない、聞こえない!
幻聴だ、幻聴だと思い込むんだ。

この現代社会において、そんな言葉が日常に使われる筈ないんだから!!


それよりも、転校生?
少年は、転校生として学園に潜り込むつもりだろうか?


しかも、その理由がまた私の護衛みたいだ・・。
我が家族ブラコン以上に心配性だよ、魁…



「魁、彼の名前なんていうの?」

「【化け狐】は化け狐ですよ。
それ以外に名前なんてありません。」



いやいやいや、それは妖怪の名前でしょう!?
名前というより種族なのかしら?
分からないが、少なくとも一般世間のいう名前ではなさそうである。

少年の正体が【化け狐】というのはもう理解した。
だから魁の姿になれたわけね。
でも、本来の彼の【人】としての姿はこの姿ってこのなのかな?


って、そんなことよりも、【化け狐】なんて名前の人日本中探しても居ないから!!



「それじゃ不自然すぎでしょ!
【化け狐】は、妖怪の種類で、名前とは異なるものだし、そんな名前の人間は居ないわよ!」

「じゃー、適当に付けますか?
私は、別に【蚤虫】でも全くいいのですが」

「そんなの嫌ですよ、俺!!」

「お黙りなさい。
お前の意見なんて聞く価値も無い。」



よっぽど先程起こった事を根に持っているらしい…。
大人気ない・・・。

私は盛大な溜息をついて、【化け狐】君に向き直る。



「えーと、【化け狐】君?」

「はい、なんですか菜舂さーん?」



私に対する苛立ちを隠さずに腕を頭の後ろに組んで私を鬱陶しげに見つめる。


100年も仕えて来たって事は、本当は、100歳以上なんだから、16歳の私なんて彼から見たら赤ん坊見たいなもの。


彼ら【怪異】のように何の力も無いただの【人間】の私に仕え、ましてや護衛しなくてはならないのだから。
それはそれは、屈辱的だろう。



「ごめんね、幼い私が【契り】とやらを交わしたばっかりに、貴方までを巻き込んでしまって…。
私みたいなのを護衛するの、面倒だよね。
無理しなくてもいいんだよ?
別に普通の学校だし、危険なんて無いからさ。」



そう笑って彼に、自由になってもいいよと話しかけると、目の前に居る美少年は、くりくりとした赤い瞳を丸くさせた。
何か変な事、言ったか私?


数秒固まった後、目の前に居る少年は、クツクツと笑い出した。


初めて見た彼の笑み。
それは、私を小馬鹿にしたものだろうがそんなことが気にならなくて、思わず見惚れてしまった。

造形が整っているだけで、得だよね。
罪ですね、イケメンって。


口元に手を構えて、意地悪そうな笑みで私に向き直ると



「へー、随分と面白いお嬢さんだ。
主君が気に入ったのも何となく分かるや。
普通の人間なら図に乗るものを…いいよ、アンタの護衛になってあげる。
これは俺の意思だから、気にすんな。」

「ほう、お前に意思があったとは
初耳ですね~【化け狐】。」

「俺にだって感情くらいはありますよ。」



どこか不機嫌そうに【化け狐】君を見つめる魁。
それに対して、軽くあしらって得意そうに笑う少年。

えーっと、あれですね。
よく少女漫画である「おもしれー女」認定されたんでしょうか。

どこにそんな要素があったんでしょう。
本当に不思議です。



そして、なんで魁は不機嫌なんでしょ?



「あのっ、【化け狐】君。
やっぱり悪いよ。
貴方を拘束するようなものだし…。
やっぱり後ろめたいというか、罪悪感が…」

「だったらちょっと取引きしよ?
俺のお願い聞く変わりにアンタを俺が護衛する。
それなら別に罪悪感も糞もないだろ?」



…それなら幾分かマシだけど。

でも、食べられるとかそういうのだったら嫌だなー。
さっきまで私のこと食い殺すって言ってたし…。



「名前」

「え?」

「だから、名前付けてよ。
俺、今名前無いからさ。
名字は、【七尾ななお】って決めてんだ。
化け狐の俺の尾が7本しか無いからさ。
というわけで、名前付けて。
それが護衛の交換条件♪」



ニヤリと笑って言う彼。
それに相反して、魁の取りまく空気は悪くなる一方だ。



「【化け狐】、私の主に条件を出すとはいい御身分ですね?
タヌキ汁ではならぬ、キツネ汁にでもしてやりましょうか?」

「だって、主君。
菜舂さんが俺が護衛すると、罪悪感抱えるっていうんですよ?
それ解消してあげないと、菜舂さん苦しんじゃうじゃないですか。
主を苦しみから解放するのも配下の勤めでしょう?」



魁は、苦虫を噛みつぶしたような表情をしたのち、いやいやながら、『仕方がありませんね』と、言葉を絞り出し無理やり納得ようだ。

パンッと両手を鳴らすと、


「と、いうわけで菜舂さん、早く考えて!
そうじゃないと、HRとやらが始まっちゃうよ?」



確かに、そうこうしてる間に時間が経ってしまった。
もう時刻は、8時15分を回っていた。


急がねば…。



ーー栗色の髪。
ーー紅の美しい瞳。
ーー変化。
ーー人を操る。



「…シュリ」

「しゅり?」

「朱色の【朱】に利口の【利】で【】。
君の紅色の瞳が凄く綺麗で私、思わず見惚れちゃったの。
そこから【朱】を取って、頭の回転が速くて、化けるのが得意な狐だからお利口さんという事で【利】。
それで【朱利】。どうかな?」



ちょっと漢字の見栄えは悪いかもだけど…。
しかも、意味もかなり単純だし…。
大丈夫かな?



「朱利…ん、気に入った!
ありがとう、菜舂さん。
まさか短時間で本当に名前付けてくれるとは思わなかったよ。」



嬉しそうに笑ってくるっと一回転すると魁に向き直り



「これからは、あいつ等にも朱利って呼ばせよっと!
あ、主君も俺の事朱利って呼んでくださいよー?」

「お前なんぞ【化け狐】で、十分ですよ。
調子に乗るな馬鹿狐。」

「あれー?
菜舂さんが一生懸命この短時間で考えて下さった、たーいせつな名前ですよ?
【主】の努力を無駄になさるおつもりですか~?」



楽しそうにケラケラ笑いながら魁に話しかける朱利。
心底不快そうに顔を歪ませた後、盛大な溜息をついて力無く少年の名を【朱利】と呼ぶということを
了承した。

それにしても朱利は、苗字だけでどうやって転入手続きを済ませたんだろう。
そして、どうやって今決めた名前に差し替えるつもりなんだろう…。

これもまた魑魅魍魎ちみもうりょうな力でちょちょいと解決するんだろうか。
何それズルイ。



「菜舂様言い忘れておりましたが学校とやらでは教師を名字で呼ぶのが主流だそうで。
私も勝手ながら名字を作りましたので名で呼ばれないのは大変残念なのですが…。
その名字の方で愛を込めて呼んで下さいませ。」


あ、それもそうだ。
教師を名前で呼んでいたら、それは違和感ありすぎる。


「あ、魁も名字作ったんだ!なんていう名字なの?」

「【山神】と呼ばれていたのでその名の通り、少し漢字だけ変えて山の上と書いて【山上やまがみ】と、名乗ることに致しました。」

「うん、すごくいいと思うよ。
じゃあ、山上先生って呼ぶわね。」

「はい、お願い致します。
私もそろそろ準備しなくては…。」



そういうが否や、何処から共なく葉が入り混じった竜巻が魁を覆った。
それが晴れた時、魁は、朱利が魁の変化をしていた時と同じ格好をしていた。
先程までのワイルドかつ紳士的な印象とはまるで違って、彼の知性が滲み出ている。


本当にどんな服でも似合うな…。
イケメンって本当にズルイ。


「私と朱利は、後でまいりますので。
菜舂様は、先に教室でお待ちください。
もう8時18分ですから、遅刻してしまいますよ?」

「えっ、嘘!?
流暢に話してる場合じゃなかった!!
じゃあねっ!!!」

「くれぐれもお怪我をなさらないよう、気をつけてくださいね。
そうでないと私は、きっと正常じゃいられなくなりますから。」

「はいはい、また後でねー。」



魁が言った恐ろしい言葉は聞かなかった事にして、私は屋上を後にした。
猛ダッシュのおかげかクラスに滑り込みセーフで席に着くことが出来たのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

見知らぬ男に監禁されています

月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。 ――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。 メリバ風味のバッドエンドです。 2023.3.31 ifストーリー追加

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...