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第一章
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少し休んだ後、さっそくその元冒険者の狩人に話を聞きに行った。偏屈そうな爺さんだったが、話せばいい人だった。
この近くで狩猟出来る動物や一日の狩猟制限等の他、狩猟時の注意点等を詳しく話していただいた。
エルフとしての知識はあったが、実際の狩猟は素人もいい所だったので、長年の熟練者の話はとても為になった。
その後依頼のつもりはないが、一応村長に報告に行く。
歓迎の意向及び無理しないようとの心配や、正式なライセンス持ちじゃないので依頼にはならない(練習扱い)が幾許かのお礼も考えている旨を言われた。
お金は本当に要らなかったがアテナにも「貰っておきなさいよ」と言われたので快諾した。
またこういう経験を承認して貰う事で、ライセンスを取る時にも考慮されるとの事だ。
夕方になり、木の伐採をしていた男連中が戻ってくる。鹿肉のお陰で大歓迎を受け、大分飲まされた(アテナたちは未成年だし参加していない)。
捕ってきた鹿肉は熟成が必要なので出なかったが、同じ程度の量の肉を振舞われた。これは明日の狩りの時頑張らねばな。
適度に酔っぱらってアテナの家に帰り、亡くなったという父親の部屋に案内され、明日の為にすぐ寝た……残念ながらエッチなイベントはなかった……残念ながら!
……翌日、狩猟にはアテナも同行する事になった。今は林業の最盛期で村としてのノルマがあり成人の村人は同行出来ないとの事だった。
まあこの世界では成人は俺の世界よりもずっと若く、こういう村の場合十歳頃から成人扱いされ色んな仕事を手伝わされているとの事だった。
「ちなみにアテナは何歳なんだ?」
「ん? 来年で成人よ? あなたも同じくらい……ってエルフは人間よりずっと年上だっけ。あまりエルフって見た事ないから不思議ね……け、敬語で話した方が宜しいでしょうか?」
……この世界のエルフは森は森でも奥の方に秘密の集落があり、普通の人間は精霊に惑わされ辿り着く事は出来ないらしい。
偶に(俺の設定の様に)狩人や冒険者になりたいといった変わり者が出てくるが、彼らは直接都会の方に行ってしまい、こういう辺鄙な村に来る事は珍しいのだとか。
「いや、実年齢は多分村長や狩人の爺さんより上だろうが、周りが俺の年齢以上の者ばかりだったし、今迄変化のない村にいたんだ。記憶喪失の事もあって世の中の常識はアテナよりずっとないだろうし気にせずさっきまでと同じ話し方でいい」
「……そう、判ったわ。改めて宜しくね」
……見張りに話を付け、村の門を出る。ちなみにアテナが仕事の間ルナちゃんは村の老婆数人が交互に面倒を見てくれているらしい。
「さ、ルナちゃんの為にもしっかりと成果を出さなければな」
「……何でにやついてるのよ?」
アテナが上目使いで覗き込んでくる。ルナちゃんインパクトでアレだったが彼女自体本当に美少女だ。短い黒髪が活発そうな印象に似合うし、かといって男勝りという訳ではないのが動作の至る所で感じられた。現実の少女に興味はなかったが、近付くとふわっといい香りがしてドキドキする。胸もぺったんことは言わないが慎ましやかで丁度いいし……。
「……変なの。さ、さっさと出発するわよ♪」
「随分乗り気だな。一応危険なんだし気を抜くなよ」
「だって、村の外に出るなんて滅多にないんだもん♪」
この世界の集落の外はまさに自然で、一応都会の方は街道も整備されてきているが、こういう村の方はまだまだらしい。
確かに昨日の、のじゃロリの様な(喋りの)狼のモンスターや、さっきから上空にちらほら見かけるドラゴン? みたいなのが闊歩しているのなら、俺の世界のように気軽に隣街へ、という事もないだろうな。
村を出て一時間ほど、エルフ知識で狩りに最適な場所にたどり着き、まずは周りを見渡してみると何頭かの鹿の群れが見える。アテナに静かにするよう合図をし、バッグから弓を取り出し、矢をつがえ引き絞る。
まだ使用二回目だがしっかりとした弓矢だ。前の世界の弓道部の見学時一度的を狙ってみた事があるが散々だった……だが今は技能・種族特性のお陰で、力の入れ加減や風の向き、どこを狙うべき等判る。
100mほどの風下から狙った矢は弧を描き、見事群れの一頭に命中した。続けて狙うが……まだ狩猟LV1なので次は外してしまい、群れは散開してしまった。
カーンカーン。狩猟経験値が溜まりました。狩猟LV1がLV2になります。狙える距離が60mになりました。狙える的の大きさが1cm縮まり、99㎝になりました。
というアナウンスが聞こえた。説明すると「必中」の距離・獲物の大きさがそうなっただけで、実際はそれ以上でも当たる時は当たるらしい。1、2回目で100mほど離れていたのが1発で当たったのはまぁ獲物の大きさと、運が良かったのだろう。
「すごーい♪ 私と同じような見た目なのに実際見ると素晴らしい腕ね♪ 私も数回弓矢試した事はあるけど、前に飛ばすのも苦労したわよ」
「ま、そこは (技能のお陰だが)長年の経験だ。生憎二発目は外してしまったしな」
「充分よ♪ 父と一緒に老猟師さんの狩猟についていった事もあるけど、一流の猟師って凄いのね」
「ありがとよ。さっ、狼等に横取りされる前に回収するぞ」
……って、技能のお陰なのだが褒められるのは悪い気はしない。
因みに異世界転生者以外で「技能」自体ついているという事がまれで、LV1とはいえ必中というものがついてる事自体チートの様なものだ。どんな達人でも技能を持っていなければ99%当たっても必中ではないらしいし。
とりあえず数匹狩った所で、今度はアテナにも狙わせる。
「うまく当たるかしら……」
「大丈夫だ。もっと肩の力を抜け。風の向きも考え、無理に頭を狙わず一番でかい所に当てるようにしろ。頭や心臓に当たっても息絶えるまでしばらく動くから注意しろ」
……と、エルフ知識&弓技能の感覚を噛み砕いてアテナに教える。数発の失敗の後……
ビシッ! ピイイイイイイイイイッ!
「あ、当たった……?」
アテナの放った矢は見事一頭の鹿の身体に当たり、少し走った後ふらふらとその場に崩れ落ちた。
「おめでとう。まだ生きてるかもだし油断せず止めを刺せ」
とさもベテラン猟師のように言う。前世の狩猟系漫画の受け売りで、俺自体初めて鹿を狩ったのは昨日だというのは黙っている。
「あ、ありがとう……私でも、鹿を狩れたんだ……」
「筋がいいな、アテナは冒険者になったら狩人が適正かもしれないな。エルフの俺が言うのだし間違いないよ」
「う、うん……」と照れるように顔を隠す、可愛い。
……開始5時間、3頭 (1頭はアテナが仕留めたもの)の鹿、6羽の兎、2羽の鴨を狩った。狩猟LVも3に上がり順調だが
「ま、そろそろ帰宅するか。初日としては充分だろう」
「充分過ぎるわよ……鹿1頭だけでも滅多に味わえないのに……しかしよくあんな小さい兎や鴨を狙えるものだわ」
兎や鴨を狙ったのは練習がてらだ。的が小さいので何発かは外したが、エルフ特性として気配を薄くする事が出来るようで、上手く必中の距離までは近付け倒す事が出来た。狙っているうちにリアルのコツも掴めたようで、外す事も少なくなった気がする。
ちなみにアテナは下処理の手伝い経験があるらしく、現場で血抜きのやり方を教えて貰った。バッグがあるのでその場で下処理をせずとも街に持っていけばいいのだが、自分で出来るとまた違うだろう。
……まああまりグロ態勢はなく、表面上は冷静を装っていたが内心吐きそうだった。
さ、村までは一時間ほどだ。ゆっくりと帰ろうとしたが……。
「……狙われているな……」
この近くで狩猟出来る動物や一日の狩猟制限等の他、狩猟時の注意点等を詳しく話していただいた。
エルフとしての知識はあったが、実際の狩猟は素人もいい所だったので、長年の熟練者の話はとても為になった。
その後依頼のつもりはないが、一応村長に報告に行く。
歓迎の意向及び無理しないようとの心配や、正式なライセンス持ちじゃないので依頼にはならない(練習扱い)が幾許かのお礼も考えている旨を言われた。
お金は本当に要らなかったがアテナにも「貰っておきなさいよ」と言われたので快諾した。
またこういう経験を承認して貰う事で、ライセンスを取る時にも考慮されるとの事だ。
夕方になり、木の伐採をしていた男連中が戻ってくる。鹿肉のお陰で大歓迎を受け、大分飲まされた(アテナたちは未成年だし参加していない)。
捕ってきた鹿肉は熟成が必要なので出なかったが、同じ程度の量の肉を振舞われた。これは明日の狩りの時頑張らねばな。
適度に酔っぱらってアテナの家に帰り、亡くなったという父親の部屋に案内され、明日の為にすぐ寝た……残念ながらエッチなイベントはなかった……残念ながら!
……翌日、狩猟にはアテナも同行する事になった。今は林業の最盛期で村としてのノルマがあり成人の村人は同行出来ないとの事だった。
まあこの世界では成人は俺の世界よりもずっと若く、こういう村の場合十歳頃から成人扱いされ色んな仕事を手伝わされているとの事だった。
「ちなみにアテナは何歳なんだ?」
「ん? 来年で成人よ? あなたも同じくらい……ってエルフは人間よりずっと年上だっけ。あまりエルフって見た事ないから不思議ね……け、敬語で話した方が宜しいでしょうか?」
……この世界のエルフは森は森でも奥の方に秘密の集落があり、普通の人間は精霊に惑わされ辿り着く事は出来ないらしい。
偶に(俺の設定の様に)狩人や冒険者になりたいといった変わり者が出てくるが、彼らは直接都会の方に行ってしまい、こういう辺鄙な村に来る事は珍しいのだとか。
「いや、実年齢は多分村長や狩人の爺さんより上だろうが、周りが俺の年齢以上の者ばかりだったし、今迄変化のない村にいたんだ。記憶喪失の事もあって世の中の常識はアテナよりずっとないだろうし気にせずさっきまでと同じ話し方でいい」
「……そう、判ったわ。改めて宜しくね」
……見張りに話を付け、村の門を出る。ちなみにアテナが仕事の間ルナちゃんは村の老婆数人が交互に面倒を見てくれているらしい。
「さ、ルナちゃんの為にもしっかりと成果を出さなければな」
「……何でにやついてるのよ?」
アテナが上目使いで覗き込んでくる。ルナちゃんインパクトでアレだったが彼女自体本当に美少女だ。短い黒髪が活発そうな印象に似合うし、かといって男勝りという訳ではないのが動作の至る所で感じられた。現実の少女に興味はなかったが、近付くとふわっといい香りがしてドキドキする。胸もぺったんことは言わないが慎ましやかで丁度いいし……。
「……変なの。さ、さっさと出発するわよ♪」
「随分乗り気だな。一応危険なんだし気を抜くなよ」
「だって、村の外に出るなんて滅多にないんだもん♪」
この世界の集落の外はまさに自然で、一応都会の方は街道も整備されてきているが、こういう村の方はまだまだらしい。
確かに昨日の、のじゃロリの様な(喋りの)狼のモンスターや、さっきから上空にちらほら見かけるドラゴン? みたいなのが闊歩しているのなら、俺の世界のように気軽に隣街へ、という事もないだろうな。
村を出て一時間ほど、エルフ知識で狩りに最適な場所にたどり着き、まずは周りを見渡してみると何頭かの鹿の群れが見える。アテナに静かにするよう合図をし、バッグから弓を取り出し、矢をつがえ引き絞る。
まだ使用二回目だがしっかりとした弓矢だ。前の世界の弓道部の見学時一度的を狙ってみた事があるが散々だった……だが今は技能・種族特性のお陰で、力の入れ加減や風の向き、どこを狙うべき等判る。
100mほどの風下から狙った矢は弧を描き、見事群れの一頭に命中した。続けて狙うが……まだ狩猟LV1なので次は外してしまい、群れは散開してしまった。
カーンカーン。狩猟経験値が溜まりました。狩猟LV1がLV2になります。狙える距離が60mになりました。狙える的の大きさが1cm縮まり、99㎝になりました。
というアナウンスが聞こえた。説明すると「必中」の距離・獲物の大きさがそうなっただけで、実際はそれ以上でも当たる時は当たるらしい。1、2回目で100mほど離れていたのが1発で当たったのはまぁ獲物の大きさと、運が良かったのだろう。
「すごーい♪ 私と同じような見た目なのに実際見ると素晴らしい腕ね♪ 私も数回弓矢試した事はあるけど、前に飛ばすのも苦労したわよ」
「ま、そこは (技能のお陰だが)長年の経験だ。生憎二発目は外してしまったしな」
「充分よ♪ 父と一緒に老猟師さんの狩猟についていった事もあるけど、一流の猟師って凄いのね」
「ありがとよ。さっ、狼等に横取りされる前に回収するぞ」
……って、技能のお陰なのだが褒められるのは悪い気はしない。
因みに異世界転生者以外で「技能」自体ついているという事がまれで、LV1とはいえ必中というものがついてる事自体チートの様なものだ。どんな達人でも技能を持っていなければ99%当たっても必中ではないらしいし。
とりあえず数匹狩った所で、今度はアテナにも狙わせる。
「うまく当たるかしら……」
「大丈夫だ。もっと肩の力を抜け。風の向きも考え、無理に頭を狙わず一番でかい所に当てるようにしろ。頭や心臓に当たっても息絶えるまでしばらく動くから注意しろ」
……と、エルフ知識&弓技能の感覚を噛み砕いてアテナに教える。数発の失敗の後……
ビシッ! ピイイイイイイイイイッ!
「あ、当たった……?」
アテナの放った矢は見事一頭の鹿の身体に当たり、少し走った後ふらふらとその場に崩れ落ちた。
「おめでとう。まだ生きてるかもだし油断せず止めを刺せ」
とさもベテラン猟師のように言う。前世の狩猟系漫画の受け売りで、俺自体初めて鹿を狩ったのは昨日だというのは黙っている。
「あ、ありがとう……私でも、鹿を狩れたんだ……」
「筋がいいな、アテナは冒険者になったら狩人が適正かもしれないな。エルフの俺が言うのだし間違いないよ」
「う、うん……」と照れるように顔を隠す、可愛い。
……開始5時間、3頭 (1頭はアテナが仕留めたもの)の鹿、6羽の兎、2羽の鴨を狩った。狩猟LVも3に上がり順調だが
「ま、そろそろ帰宅するか。初日としては充分だろう」
「充分過ぎるわよ……鹿1頭だけでも滅多に味わえないのに……しかしよくあんな小さい兎や鴨を狙えるものだわ」
兎や鴨を狙ったのは練習がてらだ。的が小さいので何発かは外したが、エルフ特性として気配を薄くする事が出来るようで、上手く必中の距離までは近付け倒す事が出来た。狙っているうちにリアルのコツも掴めたようで、外す事も少なくなった気がする。
ちなみにアテナは下処理の手伝い経験があるらしく、現場で血抜きのやり方を教えて貰った。バッグがあるのでその場で下処理をせずとも街に持っていけばいいのだが、自分で出来るとまた違うだろう。
……まああまりグロ態勢はなく、表面上は冷静を装っていたが内心吐きそうだった。
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