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第一章《ギルド》「闇の権力者編」
第二十話 「王宮会議」
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「話し合いは騎士団長の彼女も交えて話そうと思うんだけど、大丈夫かな?」
彼女は獣人猫族なのだろう、頭からは獣ミミが生えており、長いしっぽがゆらゆらと揺れている。しかしそんなことはどうでもよかった。
「あ、あのぉ...アンナ博士?」
じーー........
なんて大きな胸なんだ。スライムでも詰め込まれているみたいだ。一体何を飲み食いしたらこうなる?しかもウエストまで細い。ズルすぎる。
……くそっ。
「まぁまぁアンナちゃん、落ち着いて」
うるさい、アホハルト。これはとても重大なことだ。言ってしまえば生物学だ。
「アンナ失礼でしょ!
アーサーさん、ごめんねぇ。アンナは胸が無いこと気にしてるのぉ」
「い、いえ、大丈夫ですよ」
「な!?おいティア!無いとはなんだ無いとは!?」
「ハルトさん、シャーシャー言ってるアンナはほっといて話を始めましょう。騎士団長さんは、陛下が信頼してるというのなら話に加わって頂いても問題ないと思います」
「君は確かレイくんだったね。ありがとう、じゃあ話を始めようか」
ねぇ、なんで誰もフォローしてくれないの?無いことはないよね!?ね!?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「では王宮会議を始めます。まずはアンナちゃんから今回の経緯を話して」
「結論を先に言うと、私達の目的はギルドを潰すことだ」
胸女は一瞬驚きの声をあげるが、流石は騎士団長、速やかに聞く姿勢に戻る。
「今、ギルドは権力を振りかざして好き勝手にやっている。それらには目に余るものも少なくない」
私はティア達テイマーへの差別の事や、霊魂玉売買の話をした。
「ギルドが作った身勝手な法律のせいで、今や霊魂球はギルドが独占したようなものだ」
法を認めてしまったハルトは肩身が狭そうだ。
「陛下は反対しようとしました。でも沢山の冒険者達の圧に負け、仕方なく...」
胸女がハルトの弁解をする。
「その通りだ。ギルドが国民からの信用を完全に得ているのも逆風だ。ある程度のことなら世論が認めてしまう」
それが信じているものなら、ある程度の悪事にも目を瞑ってしまうのが人間という生き物だ。例えば、恋人のDVからなかなか逃れられないのもそういった心理があるからだ。
「うちの息子がお世話になっているギルドさんが悪いことをする筈がない」大半の人はそんなことでも思っているのだろう。
「それとな、ハルト。お前は知らなかったかも知れないが、お前の父親もギルドの手によって...」
「何となく察しはついてたよ。当時父上はギルドのやり方に疑問を抱いて、色々調査したり手を回したりしてたみたいだから」
「そうか」
胸女は目を丸くしている。国民的なギルドが、まさか王の暗殺を行ったとは夢にも思わなかっただろう。彼女だけでは無い。国民全員が真実も知らず、のうのうと生きている。
「アンナちゃんの体もギルドを暴く証拠になるかも」
「ハルト、それについては…まだ」
ごめんとハルトが呟く。
「他にもギルドがやった悪事をあげていったらキリがない。それに関しては王宮が情報を掴んでいるだろ?」
「うん、大変だったけど、何とか調べがついた。例えば...最近だとこの近くの町に暴食魔人という上級の魔物を放って暴れさせたという話もある」
あの口だけお化けもギルドの仕業か!危うく町ひとつが壊滅仕掛けたんだぞ!?奴ら正気なのか!?
「少し前から、各地の村が何者かによって占領されていってる。それもギルドの行いと見て多分間違いない」
他にもこれだけあるよ。ハルトが紙の束をヒラヒラと揺らしてみせる。
「ありがとう。次に、当日の実際の戦いの話だ。王宮はどれくらいの戦力を提供できる?」
「ちょっとまって」
黙って聞いていたレイが口を開く。
「ギルドと戦うって、冒険者達と戦うってこと?」
「そうなるな」
ギルドが抱えてる冒険者の数は計り知れない。全員が敵ではないだろうが、ブリガンダインのようにギルドの闇を知りつつ協力している者が他にも居ないとは限らない。
そいつらは完全に敵対してくるだろう。
「全員と戦う必要は無い。国王であるハルトにギルドの闇を民衆の前で告白してもらい、ギルド長を捕らえると発表してもらう。大人しくしてくれればいいが、それでも抵抗して来る者だけが敵だ」
「ブリガンダインみたいに闇に関わってなくても、ただ混乱しているだけの人だっているんじゃない?」
「王宮への反逆罪。これで攻撃する理由ができる」
皆が静まりかえる。無理もない。私は今、かなり冷酷なことを言っている。
私だって本当はこんなこと言いたくない、したくない。
だけど、今ここで心を鬼にしなければ現状は良くならない。分かってくれみんな。
「そう、するしかないね」
王が決断、それは決定を意味する。異議を唱える者は居ない。
「戦力の話に戻すけど、王宮の騎士団は全員使ってくれて構わない。だいたい300人ぐらい居る」
「胸女もそれでいいか?」
「む、胸女!?」
武力の最高指揮である彼女にも確認をとる。
「私は…」
突然こんな話をされて困惑するのも仕方ない。今まではギルドの悪事なんて考えたことも無かったに違いない。ギルドは冒険者を雇う大型の組織、他の人々のようにそれぐらいの認識しかなかった筈だ。
彼女にしてみれば急に現れて、こんなことを言い出す私達のほうがよっぽど疑わしいに違いない。
それでも彼女は、まっすぐに私の目を見つめ、こう言った。
「私は陛下を信じてます。陛下のご決断なら、それを拒む理由なんてありません。騎士団一同、この戦いに参加します」
やはりハルトは良い王だ。これだけの信頼を向けられるとは、大したものだ。
「ティア、レイ。私達がやるのは、正義の名の元であっても褒められるような事じゃない。やっていることは戦争だ。それでも...」
「それでも」
レイが被せる。
「それでも僕はアンナに着いていく。アンナがやろうとしてることは冷酷な事かもしれない。だけど正しい事だと僕は思った、だから着いていく」
「レイくんの言う通り。私達はアンナを信じてる。だからアンナも私たちを信じて、背中を預けて欲しい。仲間だもん」
「ありがとう」
「みんな!決行は五日後の日曜日。毎週やってる城下集会で、僕が民にギルドの事を告げる。それと同時に騎士団はギルドに突撃。ギルド長と抵抗する者を拘束せよ」
全員が無言で、しかし力強く頷く。五日後の日曜日、いよいよ決戦が始まる。
彼女は獣人猫族なのだろう、頭からは獣ミミが生えており、長いしっぽがゆらゆらと揺れている。しかしそんなことはどうでもよかった。
「あ、あのぉ...アンナ博士?」
じーー........
なんて大きな胸なんだ。スライムでも詰め込まれているみたいだ。一体何を飲み食いしたらこうなる?しかもウエストまで細い。ズルすぎる。
……くそっ。
「まぁまぁアンナちゃん、落ち着いて」
うるさい、アホハルト。これはとても重大なことだ。言ってしまえば生物学だ。
「アンナ失礼でしょ!
アーサーさん、ごめんねぇ。アンナは胸が無いこと気にしてるのぉ」
「い、いえ、大丈夫ですよ」
「な!?おいティア!無いとはなんだ無いとは!?」
「ハルトさん、シャーシャー言ってるアンナはほっといて話を始めましょう。騎士団長さんは、陛下が信頼してるというのなら話に加わって頂いても問題ないと思います」
「君は確かレイくんだったね。ありがとう、じゃあ話を始めようか」
ねぇ、なんで誰もフォローしてくれないの?無いことはないよね!?ね!?
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「では王宮会議を始めます。まずはアンナちゃんから今回の経緯を話して」
「結論を先に言うと、私達の目的はギルドを潰すことだ」
胸女は一瞬驚きの声をあげるが、流石は騎士団長、速やかに聞く姿勢に戻る。
「今、ギルドは権力を振りかざして好き勝手にやっている。それらには目に余るものも少なくない」
私はティア達テイマーへの差別の事や、霊魂玉売買の話をした。
「ギルドが作った身勝手な法律のせいで、今や霊魂球はギルドが独占したようなものだ」
法を認めてしまったハルトは肩身が狭そうだ。
「陛下は反対しようとしました。でも沢山の冒険者達の圧に負け、仕方なく...」
胸女がハルトの弁解をする。
「その通りだ。ギルドが国民からの信用を完全に得ているのも逆風だ。ある程度のことなら世論が認めてしまう」
それが信じているものなら、ある程度の悪事にも目を瞑ってしまうのが人間という生き物だ。例えば、恋人のDVからなかなか逃れられないのもそういった心理があるからだ。
「うちの息子がお世話になっているギルドさんが悪いことをする筈がない」大半の人はそんなことでも思っているのだろう。
「それとな、ハルト。お前は知らなかったかも知れないが、お前の父親もギルドの手によって...」
「何となく察しはついてたよ。当時父上はギルドのやり方に疑問を抱いて、色々調査したり手を回したりしてたみたいだから」
「そうか」
胸女は目を丸くしている。国民的なギルドが、まさか王の暗殺を行ったとは夢にも思わなかっただろう。彼女だけでは無い。国民全員が真実も知らず、のうのうと生きている。
「アンナちゃんの体もギルドを暴く証拠になるかも」
「ハルト、それについては…まだ」
ごめんとハルトが呟く。
「他にもギルドがやった悪事をあげていったらキリがない。それに関しては王宮が情報を掴んでいるだろ?」
「うん、大変だったけど、何とか調べがついた。例えば...最近だとこの近くの町に暴食魔人という上級の魔物を放って暴れさせたという話もある」
あの口だけお化けもギルドの仕業か!危うく町ひとつが壊滅仕掛けたんだぞ!?奴ら正気なのか!?
「少し前から、各地の村が何者かによって占領されていってる。それもギルドの行いと見て多分間違いない」
他にもこれだけあるよ。ハルトが紙の束をヒラヒラと揺らしてみせる。
「ありがとう。次に、当日の実際の戦いの話だ。王宮はどれくらいの戦力を提供できる?」
「ちょっとまって」
黙って聞いていたレイが口を開く。
「ギルドと戦うって、冒険者達と戦うってこと?」
「そうなるな」
ギルドが抱えてる冒険者の数は計り知れない。全員が敵ではないだろうが、ブリガンダインのようにギルドの闇を知りつつ協力している者が他にも居ないとは限らない。
そいつらは完全に敵対してくるだろう。
「全員と戦う必要は無い。国王であるハルトにギルドの闇を民衆の前で告白してもらい、ギルド長を捕らえると発表してもらう。大人しくしてくれればいいが、それでも抵抗して来る者だけが敵だ」
「ブリガンダインみたいに闇に関わってなくても、ただ混乱しているだけの人だっているんじゃない?」
「王宮への反逆罪。これで攻撃する理由ができる」
皆が静まりかえる。無理もない。私は今、かなり冷酷なことを言っている。
私だって本当はこんなこと言いたくない、したくない。
だけど、今ここで心を鬼にしなければ現状は良くならない。分かってくれみんな。
「そう、するしかないね」
王が決断、それは決定を意味する。異議を唱える者は居ない。
「戦力の話に戻すけど、王宮の騎士団は全員使ってくれて構わない。だいたい300人ぐらい居る」
「胸女もそれでいいか?」
「む、胸女!?」
武力の最高指揮である彼女にも確認をとる。
「私は…」
突然こんな話をされて困惑するのも仕方ない。今まではギルドの悪事なんて考えたことも無かったに違いない。ギルドは冒険者を雇う大型の組織、他の人々のようにそれぐらいの認識しかなかった筈だ。
彼女にしてみれば急に現れて、こんなことを言い出す私達のほうがよっぽど疑わしいに違いない。
それでも彼女は、まっすぐに私の目を見つめ、こう言った。
「私は陛下を信じてます。陛下のご決断なら、それを拒む理由なんてありません。騎士団一同、この戦いに参加します」
やはりハルトは良い王だ。これだけの信頼を向けられるとは、大したものだ。
「ティア、レイ。私達がやるのは、正義の名の元であっても褒められるような事じゃない。やっていることは戦争だ。それでも...」
「それでも」
レイが被せる。
「それでも僕はアンナに着いていく。アンナがやろうとしてることは冷酷な事かもしれない。だけど正しい事だと僕は思った、だから着いていく」
「レイくんの言う通り。私達はアンナを信じてる。だからアンナも私たちを信じて、背中を預けて欲しい。仲間だもん」
「ありがとう」
「みんな!決行は五日後の日曜日。毎週やってる城下集会で、僕が民にギルドの事を告げる。それと同時に騎士団はギルドに突撃。ギルド長と抵抗する者を拘束せよ」
全員が無言で、しかし力強く頷く。五日後の日曜日、いよいよ決戦が始まる。
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