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第一章《ギルド》「闇の権力者編」
第十四話 「首都ロキロキ」
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「着いたぞ、首都ロキロキだ」
目の前には外壁に囲まれた巨大な土地が広がっている。その中心にそびえ立つお城こそがこの国の王が住む王宮で、今回の旅の目的地だ。
あの後、ブリガンダインとの戦闘でかなりのダメージを負った私たちは、近くの森で数日間過ごした。体を休め、治療に専念するためだ。
野宿にはなってしまったが、久しぶりにゆったりとした時間を過ごすことが出来て結構楽しかった。
他人の怪我なら私が治せるのだが、実は自分自身に治癒魔法はかけられない。治癒スキル所持の影響で常人よりは多少自然回復するスピードが早いが、それでもあの大怪我が治るまでには時間を有した。
私の血小板ちゃん達が頑張ってくれたおかげで、今はもうすっかり元気だ。旅を再開し、今やっと目的の地にたどり着いた。
「これがこの国の首都…」
今までとは比べ物にならない規模の街に、レイが感心している。さぞ圧巻だろう。
「久しぶりだぁ♡」
ティアはこの国の出身で、ロキロキにはたまに商売で来ていたようだ。
彼女の実家は魔物牧場で、そこで使う霊魂球を買いにきていたのだ。
そして、霊魂球で育てた魔物をペットとして街の金持ちに売りに来る。それが彼女らテイマーの本来の仕事だった。
しかし、ギルドも霊魂球売買を始めたのが運の尽きだった。奴らが霊魂球を集めるようになった理由は分からないが、軍事用かなんかだろう。
テイマーが邪魔になったギルドは、どんどんと圧力をかけていき、いよいよ法を変えてしまった。しかもそれだけでは飽き足らず、黒い噂を流して目に見えて迫害し始めた。
国民が信用しきっているギルドに誰も反感を抱きもせず、テイマー迫害の流れは広がり続けている。
勿論...ギルド本部が置かれたこの街が例外である筈がない。
「なぁ、ティア。ジャックの事なんだが、街には連れて行けないぞ?テイマーであることを周りに公言するようなものだからな」
一応、「使役」のちからの持ち主と「テイマー」である事は別になのだが、「使役」を持っている者の大概はテイマーなので、国民は同一に扱っているようだ。
「なら1箇所寄ってもいいかな?そこに寄れれば問題は解決だからぁ♡」
ふふん、とティアが自信満々に胸をつきだす。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お久しぶりです、レイです。
僕らはジャックをアンナに預け、ふたりで先に街へ来ていた。ジャックを隠す「とあるアイテム」を買うためだ。
この世界には「魔道具」という、魔力で動く機械のような物が存在している。アンナが使っていたポケベルなんかもその一種だ。
この街には「使役」使い向けの、便利な魔道具屋さんがあるようで、ティアちゃんの案内でそこへ向かっている。
ベビーシッターもとい、ジャッカロープシッターにアンナを選んだのは、彼女が僕達の中で1番戦闘力が高いからだ。なんびとからも、ジャックを絶対に守ってくれるという信頼の証だ。
さっきはキャラじゃないとか言って嫌がっていたけど、大丈夫かな?仲良くやってるといいけど。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ほぉうら、ジャックちゃん♡ょぉーしよし」
「ふぃおんぬ!!」
「いいこだねぇ、ジャックちゃん!いつも偉いねぇ♡そぉれ!コチョコチョコチョコチョ」
「ふぃ!ふぃぉーーーーーお♪」
...めちゃくちゃ楽しんでいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「レイくん!ここだよぉ♡」
ティアちゃんが足を止めたのは、いかにもな雰囲気の、路地裏にある小さなお店だった。
「……動物愛護団体ひがし店?」
店の雰囲気だけでなく、名前も十分に胡散臭かった。
前から思っていたけど、この世界のネーミングセンスはどこかズレている。通貨なんて「@」だよ?
でもアンナとティアちゃんの名前は普通だよな…?
あ、そうでも無いか。苗字が「エイ」と「ミロスフィード」だもん。
自分の名付けの親がこの世界の人じゃなくて良かったと心から思う。
「おじさぁーん!久しぶりぃ♡」
カランコロンとドアを元気よく開け、ティアちゃんが大声で挨拶する。かなりの常連なのだろう。
「オゥ…そうかい」
「んもぉ!おじさん!! 私だよ?ティアだよぉ?」
「そうかい、そうかい。わしは茶漬けだ」
中に居たのは70歳はいっているだろうか...ヨボヨボのやせ細った小さいおじいさんだった。
会話が全然噛み合ってないことより、この世界にも茶漬けがあることに興味が向いてしまった。それとも名前が「チャヅケ」と言うのか…?いずれにせよこのおじいさん...
「おじさん、だんだんボケが進行してきているねぇ」
前の家の近所にもボケているお爺さんが居た。左右の手に入れ歯を持って、奇声を発しながら街を走り回っていた時は警察沙汰になったぐらいだ。
「ティアちゃん、意外と辛辣だね」
苦笑いで一応ツッコむ。まぁ、ボケてるのは間違い無いだろうけどそれを本人の前で言うのもなかなか大胆だ。
「しっかりしてよぉ!今日はジャックくんのためにボールを買いに来たんだからぁ」
「ビーフストロガノフはワインと合うんじゃ」
どんなボケ方だ!何と間違えた!
って、それより...ボール?ボールってもしかして…
「ほら!この魔物ボールをくださいって言ってるのぉ!」
ティアちゃんがドンッと、そのボールをテーブルに置く。ボールと聴いた時にはドキッとしたが、見た目も名前もあの有名なボールとはかけ離れていて安心した。
「これください♡」
ボールの中には目玉があり、ギョロギョロと妖しく動いている。巻き付けられた赤い鎖も、かなり不気味だ。
「2500@だぞ」
1@は大体4円だと認識してる。大体の市場の物の相場を見る限り、多分それくらいだ。だとするとこのボールさんはだいたい1万円ぐらいか。
「今日は2500ね?はいどうぞ。おじさん、ありがとぅ♡」
今日...は?
「また来てなぁ」
このおじいさん商売の時だけボケがきれいさっぱりなおっている気がする。いや、人を疑うのは良くない。きっとたまたまだ。
またねぇ、と手を振りながら店を出るティアちゃんについて店を出る。これでお使いはおしまいだ。
なんだか振り回されてばっかりな気がする。これじゃ僕がいる意味が無い。助けになれていない。代金も高いだろうに、また支払わせてしまった...。
やっぱり僕はお荷物なのかなぁ…劣等感が込み上げる。
最近は前より戦えるようになった…と思う。しかし、それでもまだ、アンナには敵わない。ブリガンダイン戦では、アンナが僕を庇ったり、回復してくれたりなんかするからブリガンダインに攻め入る隙を作ってしまった。
力もお金もない、ただのお荷物。この世界にも疎く、役に立つことなんてひとつもない。
何もかもおんぶにだっこだ。深いため息が漏れ出す。
ふたりを手伝いたい、助けたい。なのにどうすることも出来ない自分がもどかしい。僕は...
「レイくん!」
ティアちゃんに急に手を握られ、物思いからさめる。
「ど、どうしたの?」
「ちょっと寄り道しよ?デートだよ♡」
「…え?」
突然のお誘いに戸惑うが、彼女はただ笑っていた。
目の前には外壁に囲まれた巨大な土地が広がっている。その中心にそびえ立つお城こそがこの国の王が住む王宮で、今回の旅の目的地だ。
あの後、ブリガンダインとの戦闘でかなりのダメージを負った私たちは、近くの森で数日間過ごした。体を休め、治療に専念するためだ。
野宿にはなってしまったが、久しぶりにゆったりとした時間を過ごすことが出来て結構楽しかった。
他人の怪我なら私が治せるのだが、実は自分自身に治癒魔法はかけられない。治癒スキル所持の影響で常人よりは多少自然回復するスピードが早いが、それでもあの大怪我が治るまでには時間を有した。
私の血小板ちゃん達が頑張ってくれたおかげで、今はもうすっかり元気だ。旅を再開し、今やっと目的の地にたどり着いた。
「これがこの国の首都…」
今までとは比べ物にならない規模の街に、レイが感心している。さぞ圧巻だろう。
「久しぶりだぁ♡」
ティアはこの国の出身で、ロキロキにはたまに商売で来ていたようだ。
彼女の実家は魔物牧場で、そこで使う霊魂球を買いにきていたのだ。
そして、霊魂球で育てた魔物をペットとして街の金持ちに売りに来る。それが彼女らテイマーの本来の仕事だった。
しかし、ギルドも霊魂球売買を始めたのが運の尽きだった。奴らが霊魂球を集めるようになった理由は分からないが、軍事用かなんかだろう。
テイマーが邪魔になったギルドは、どんどんと圧力をかけていき、いよいよ法を変えてしまった。しかもそれだけでは飽き足らず、黒い噂を流して目に見えて迫害し始めた。
国民が信用しきっているギルドに誰も反感を抱きもせず、テイマー迫害の流れは広がり続けている。
勿論...ギルド本部が置かれたこの街が例外である筈がない。
「なぁ、ティア。ジャックの事なんだが、街には連れて行けないぞ?テイマーであることを周りに公言するようなものだからな」
一応、「使役」のちからの持ち主と「テイマー」である事は別になのだが、「使役」を持っている者の大概はテイマーなので、国民は同一に扱っているようだ。
「なら1箇所寄ってもいいかな?そこに寄れれば問題は解決だからぁ♡」
ふふん、とティアが自信満々に胸をつきだす。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お久しぶりです、レイです。
僕らはジャックをアンナに預け、ふたりで先に街へ来ていた。ジャックを隠す「とあるアイテム」を買うためだ。
この世界には「魔道具」という、魔力で動く機械のような物が存在している。アンナが使っていたポケベルなんかもその一種だ。
この街には「使役」使い向けの、便利な魔道具屋さんがあるようで、ティアちゃんの案内でそこへ向かっている。
ベビーシッターもとい、ジャッカロープシッターにアンナを選んだのは、彼女が僕達の中で1番戦闘力が高いからだ。なんびとからも、ジャックを絶対に守ってくれるという信頼の証だ。
さっきはキャラじゃないとか言って嫌がっていたけど、大丈夫かな?仲良くやってるといいけど。
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「ほぉうら、ジャックちゃん♡ょぉーしよし」
「ふぃおんぬ!!」
「いいこだねぇ、ジャックちゃん!いつも偉いねぇ♡そぉれ!コチョコチョコチョコチョ」
「ふぃ!ふぃぉーーーーーお♪」
...めちゃくちゃ楽しんでいた。
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「レイくん!ここだよぉ♡」
ティアちゃんが足を止めたのは、いかにもな雰囲気の、路地裏にある小さなお店だった。
「……動物愛護団体ひがし店?」
店の雰囲気だけでなく、名前も十分に胡散臭かった。
前から思っていたけど、この世界のネーミングセンスはどこかズレている。通貨なんて「@」だよ?
でもアンナとティアちゃんの名前は普通だよな…?
あ、そうでも無いか。苗字が「エイ」と「ミロスフィード」だもん。
自分の名付けの親がこの世界の人じゃなくて良かったと心から思う。
「おじさぁーん!久しぶりぃ♡」
カランコロンとドアを元気よく開け、ティアちゃんが大声で挨拶する。かなりの常連なのだろう。
「オゥ…そうかい」
「んもぉ!おじさん!! 私だよ?ティアだよぉ?」
「そうかい、そうかい。わしは茶漬けだ」
中に居たのは70歳はいっているだろうか...ヨボヨボのやせ細った小さいおじいさんだった。
会話が全然噛み合ってないことより、この世界にも茶漬けがあることに興味が向いてしまった。それとも名前が「チャヅケ」と言うのか…?いずれにせよこのおじいさん...
「おじさん、だんだんボケが進行してきているねぇ」
前の家の近所にもボケているお爺さんが居た。左右の手に入れ歯を持って、奇声を発しながら街を走り回っていた時は警察沙汰になったぐらいだ。
「ティアちゃん、意外と辛辣だね」
苦笑いで一応ツッコむ。まぁ、ボケてるのは間違い無いだろうけどそれを本人の前で言うのもなかなか大胆だ。
「しっかりしてよぉ!今日はジャックくんのためにボールを買いに来たんだからぁ」
「ビーフストロガノフはワインと合うんじゃ」
どんなボケ方だ!何と間違えた!
って、それより...ボール?ボールってもしかして…
「ほら!この魔物ボールをくださいって言ってるのぉ!」
ティアちゃんがドンッと、そのボールをテーブルに置く。ボールと聴いた時にはドキッとしたが、見た目も名前もあの有名なボールとはかけ離れていて安心した。
「これください♡」
ボールの中には目玉があり、ギョロギョロと妖しく動いている。巻き付けられた赤い鎖も、かなり不気味だ。
「2500@だぞ」
1@は大体4円だと認識してる。大体の市場の物の相場を見る限り、多分それくらいだ。だとするとこのボールさんはだいたい1万円ぐらいか。
「今日は2500ね?はいどうぞ。おじさん、ありがとぅ♡」
今日...は?
「また来てなぁ」
このおじいさん商売の時だけボケがきれいさっぱりなおっている気がする。いや、人を疑うのは良くない。きっとたまたまだ。
またねぇ、と手を振りながら店を出るティアちゃんについて店を出る。これでお使いはおしまいだ。
なんだか振り回されてばっかりな気がする。これじゃ僕がいる意味が無い。助けになれていない。代金も高いだろうに、また支払わせてしまった...。
やっぱり僕はお荷物なのかなぁ…劣等感が込み上げる。
最近は前より戦えるようになった…と思う。しかし、それでもまだ、アンナには敵わない。ブリガンダイン戦では、アンナが僕を庇ったり、回復してくれたりなんかするからブリガンダインに攻め入る隙を作ってしまった。
力もお金もない、ただのお荷物。この世界にも疎く、役に立つことなんてひとつもない。
何もかもおんぶにだっこだ。深いため息が漏れ出す。
ふたりを手伝いたい、助けたい。なのにどうすることも出来ない自分がもどかしい。僕は...
「レイくん!」
ティアちゃんに急に手を握られ、物思いからさめる。
「ど、どうしたの?」
「ちょっと寄り道しよ?デートだよ♡」
「…え?」
突然のお誘いに戸惑うが、彼女はただ笑っていた。
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