婚約破棄?喜んで!復縁?致しません!浮気相手とお幸せに〜バカ王子から解放された公爵令嬢、幼馴染みと偽装婚約中〜

浅大藍未

文字の大きさ
上 下
17 / 29

“恐ろしく”意味不明な言動

しおりを挟む
無事に話し合いも終わり、遅れながらに学園に向かう。お父様には今日はもう休めばいいと言われたけど、何となくギルの顔が見たかった。
二時限目が終わった頃に到着し、先生には今来たことを伝える。
教室に行くとギルから面白い話を聞いた。
クラッサム嬢に友達が出来たと。階級は同じ男爵家。クラスは違うけど、今日の朝から仲良くしている姿を見たらしい。
面白いのはクラッサム嬢と友達になった令嬢二人が、私の友達であるということ。クラッサム嬢が私の交友関係を把握しているわけはないし、殿下だって興味はない。故に彼女達が私の友達であることも知らないわけで。
殿下はとても喜んでいたそうだ。クラッサム嬢に同性の友達が出来たことに。

「アンリース!!」

私を見るなり睨みながら大股で近付いてくる殿下。怒っていることはわかるけど、何に怒っているのか。
私が陛下と会っていたことを知っているはずはないし、まさか。朝、登校しなかったことを?
だとしたらなんて身勝手な。この人に私を縛る権利など持ち合わせていないのに。

「君は最低だ!!」

加減を知らない力で腕を掴まれただけでなく、意味のわからないことを言ってきた。

「やるなら直接、僕にすればいいだろう!?」
「はい?」
「無力なデイジーにあんな酷いことを……!!」
「殿下!!」

掴まれた手を振り払った。理由もなしにこんなことをされたくはない。
心はザワつくことなく落ち着いたまま。
今の私は冷めた目をしているのだろう。あんなに強気だった殿下が怯む。

「何を仰っているのか説明して下さい」
「君がそんな冷たく最低な人間だったなんて。デイジーに心から謝罪するまで、君の寝室に足を運ばないから、そのつもりでいることだ」

私の質問には答えず、自分の言いたいことだけを言って、クラッサム嬢の肩を抱きながら今日は早退すると告げて行ってしまった。

私に言われてもなぁ……。

先生に伝えるように言われていないから、二人は無断早退になる。
仮に伝えるとして、理由はどうするつもりなんだろ。私のようにちゃんとした理由がないと、後で怒られるのはあの二人なのに。

「で、私はなんで怒られたわけ?」
「さぁ?」

ギルも首を傾げた。
私がクラッサム嬢に何かをしたみたいだったけど、身に覚えがなさすぎる。
いつの話をしているのだろうか。
クラス全員が殿下の怒りの正体はわからないまま。もちろん側近候補の生徒達も。

「アン様。おはようございます」
「おはよう、エアル」
「あの……。殿下に変な言い掛かりをつけられませんでした?」
「つけられたわ。原因を知っているの?」
「アン様がクラッサム嬢のブレスレットを壊したとかで、殿下に泣きついていました」
「えーっと、いつ?」
「今朝だそうです」
「今朝。今日の朝ということね?」
「はい」

私、いなかったはずなんだけど。

クラッサム嬢が誰と勘違いしているのか。それとも本気で私がやったと思っているのか。
どちらにしてもタチが悪い。
私を陥れようとしているのだから。
殿下も殿下だ。クラッサム嬢の話しか聞かずに、一方的に決め付けて。
冤罪だったらどう責任を取るつもりなのだろうか。
間違いでした、で、事は済まない。

「教えてくれてありがとう」
「いえ」

時間を気にしながら教室に戻っていく。
チャイムがなる前に私も席につこうとした。

「待ってギル」
「どうした?」
「エアルは今朝って言ってたわよね?」
「そうだな」
「ねぇ。まさかあの二人。私が遅れて来たことを知らないなんて、ないよね……?」

同じくゾッとしたであろうギルは答えないまま席についた。

ちょ……せめて何か言って!?

他の生徒も私と目を合わせないように俯いたまま授業を受けるために席につく。
門で待ち伏せてをして、私と会わなかった時点でいないことはわかりそうなものだけど。
いくら視野が狭くても、いるかいないかぐらいは、わか……るよね?
姿を見ていなければ普通はいないと思うもの。
私にいじめの罪を着せて寛大な心で許す代わりに、側室にする計画だとしたらなんともバカ丸出し。
ギルがいるから、私もいると思い込んでいそうなのが怖い。
今までで一番、怖い経験をしてしまった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

【完結】勘違いしないでくれ!君は(仮)だから。

山葵
恋愛
「父上が婚約者を決めると言うから、咄嗟にクリスと結婚したい!と言ったんだ。ああ勘違いしないでくれ!君は(仮)だ。(仮)の婚約者だから本気にしないでくれ。学園を卒業するまでには僕は愛する人を見付けるつもりだよ」 そう笑顔で私に言ったのは第5王子のフィリップ様だ。 末っ子なので兄王子4人と姉王女に可愛がられ甘えん坊の駄目王子に育った。

公爵夫人は愛されている事に気が付かない

山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」 「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」 「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」 「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」 社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。 貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。 夫の隣に私は相応しくないのだと…。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜

ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。 けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。 ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。 大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。 子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。 素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。 それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。 夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。 ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。 自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。 フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。 夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。 新たに出会う、友人たち。 再会した、大切な人。 そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。 フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。 ★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。 ※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。 ※一話あたり二千文字前後となります。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

【完結】婚約破棄させた本当の黒幕は?

山葵
恋愛
「お前との婚約は破棄させて貰うっ!!」 「お義姉樣、ごめんなさい。ミアがいけないの…。お義姉様の婚約者と知りながらカイン様を好きになる気持ちが抑えられなくて…ごめんなさい。」 「そう、貴方達…」 「お義姉様は、どうか泣かないで下さい。激怒しているのも分かりますが、怒鳴らないで。こんな所で泣き喚けばお姉様の立場が悪くなりますよ?」 あぁわざわざパーティー会場で婚約破棄したのは、私の立場を貶める為だったのね。 悪いと言いながら、怯えた様に私の元婚約者に縋り付き、カインが見えない様に私を蔑み嘲笑う義妹。 本当に強かな悪女だ。 けれどね、私は貴女の期待通りにならないのよ♪

処理中です...