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信じるつもりはないくせに

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さて……。
これはどういう状況かな?
レクリエーションは何とか終わったと安心していたら長男に呼び出された。生徒会室ってのがまた……。
教室に来られるより遥かにマシだけどさ。
呼び出したくせにさっきから私には目も向けず書類仕事に精を出す。
帰っていいかな。時間の無駄すぎる。

「はぁ……」

ようやく顔を上げたかと思えばため息をつかれた。
握りしめた拳を見られる前に後ろに隠した。殴りたい衝動にかられてしまったけど、ここで騒ぎを起こせば色々と面倒になる。

「せめて言い訳くらいはすると思っていたが」
「はい?」
「ユファン嬢が平民であるという理由だけで危害を加えたそうだな。彼女が光魔法の使い手だから嫉妬しているのか?」

その話か。婚約者様が報告でもしたんだろうな。
どうせ何を言っても聞く耳を持たない。長男がシオンの言葉をまともに聞くとも思えない。
言い訳をしたらしたで怒るに決まってる。やること言うこと、全部が気に食わないくせに。
このまま黙ってるほうが得策。
今日は帰ったら何をしようかな。この沈んだ気分を上げるにはノアールと遊ぶしかない。
よく考えればノアールの遊び道具がなかった。
そうよね!ノアールは唯一の家族で友達。うんと贅沢させてあげないと!!
お金なら腐るほどあるんだし。

ーバチン!!

乾いた音と頬の痛み。じんわりと熱くなる。
拳は握られていなかったけど、中々の力。
教育でも躾でもない。これはただの暴力だ。

「なぜお前のような出来の悪い奴が私の妹なんだ」

それはこっちの台詞よ。例え偽物でもあんたみたいな奴の妹なんて最悪だっての。

「以上でしたら私はこれで」

私は長男と違ってちゃんと礼儀作法は身に付けている。
嫌いな相手にも頭は下げる。
バタン!!とドアを力いっぱい閉めたいのを我慢して令嬢らしくお淑やかに振る舞った。
ここには大嫌いな長男と次男がいる。それだけでも気分が悪いのに、ぶたれたことによって何かもう……色んなことがぐちゃぐちゃだ。

「あーくそ!ムカつく!!」

誰もいないのを確認して大声出してストレスを発散させた。
言い訳すると思ってた?
したらしたで、叩くくせに!!
公女でありながら嘘をつくとは恥を知れ!とか言ってさ。
この涙はシオンのもの?私の意志とは関係なく溢れてくる。
悔しいのと悲しいのが同時に駆け巡る。
ユファンが私は何もしてないと言えば言うほど、私が脅して言わせたと思われる。
シオンは過去にそれだけのことをしてきた。
それでも……信じようとさえしてくれないのは辛いなぁ。















「会長。妹……シオン嬢と何かありました?」
「何のことだ。それよりアル。一年のユファン嬢。彼女を気にかけておけ。シオン・グレンジャーが手を出すかもしれん」
「妹でしょう?信じてあげないんですか」
「あの女にそれ程の価値があるとでも?」
「はは……そうですか」
「もしあの女が何かするならすぐ退学を命じろ。いいな?」
「(貴方はきっと知らないんでしょうね。あんな風に泣くシオン嬢を)」
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