偽物令嬢〜前世で大好きな兄に殺されました。そんな悪役令嬢は静かで平和な未来をお望みです〜

浅大藍未

文字の大きさ
上 下
6 / 69

政略結婚

しおりを挟む
今日は顔合わせとそれぞれの魔法属性を調べるらしい。
基本は一人につき一つの属性しか持てない。長男と次男は二つ持ってるからチヤホヤされる。婚約者様もだっけ。
確か公爵様はかなりチートで光と闇以外の属性が使えた。
子供の属性っていうのは親の影響からなる。だからユファンは光と風。二つを持ち、初日で有名人となった。
両親の属性を受け継げなかったことも愛されない要因の一つだとひどく落ち込む時期もあった。
愛に飢えた孤独な少女。
それが本当のシオン。
シオンに転生して過ごしてきた私だからこそわかる。
愛情の求め方は間違っていたかもしれない。でも、シオンの周りにはその間違いを教えてくれる大人がいなかった。
ちゃんとした大人がいてくれたらこんなに性根が腐ることはなかったのに。
私の番がきて、水晶に手をかざすと、さっきまでユファンの光で輝いていたのに一瞬にして真っ黒になった。まさに闇。
教室がどよめいた。
ドン引きされてるのが背中から伝わってくる。
ちょっと待ってよ。魔法は個性だって王様も言ってたじゃん。
だからさ。受け入れるのが普通じゃない?
水晶に映し出される色の濃さで、その人がどれほどの才を秘めているのかわかる。
黒すぎるんだ。私の色は。
荒んだすさんだ心を表したかのようなドス黒さ。
公女でなければ噂の的となっていたかもしれない。肩書きもたまには役に立つ。
気にしないふりをして席についた。
今日のやることはもう終わ………りじゃない。レクリエーションの班決めがあったんだ。
誰と組むかわかってるから帰りたい。

「至らない点が多々あると思いますが、皆さんの足を引っ張らないように頑張ります」
「そんなに気負わなくていい。私達がちゃんとフォローする」

貴族にさえ生まれれば簡単な魔法の扱い方は家で習う。シオンは完全に我流で多少は他の人とやり方が違うかもしれない。
それはそれでいいんだけどな。

「婚約者様の言う通りですわ。これはただの親睦を深めるゲーム」
「お二人は婚約者同士なのですね。すごくお似合いです」
「そう……。互いの権力を利用する者同士ってことかしら?」
「え?いえ、そういう意味では……」
「ユファンさん。本気で貴族が自分の好きな人と結婚出来るとでも?」
「何を言い出すんだ急に」
「少なくとも私達は政略結婚。愛なんて微塵もありません」
「ご、ごめんな……さい」

あぁーーもう私のバカ!!
シオンになりきろうとすると、どうしても意地悪な言い方になる。
しかもシオンは可愛い系のユファンとは真逆で綺麗系だから凄むと迫力があってしょんぼりさせてしまう。
小動物のように落ち込むユファンが可愛くて抱きしめたい。

「シオンは……好きな男がいるのか?」

突然の質問。
自分からシオンを気にかけたことなんて一度もないのに。
いつだって婚約者という立場でマニュアル通りの会話しかしなかった。それなのに初めて婚約者様の意志でシオンに興味を持った?
本物のシオンならさぞ喜ぶことでしょうね。

「いたとして報告する義務はありませんよね?婚約者様が私を好いてくれているなら話は別ですが……。私は公女だから貴方の婚約者に選ばれただけ」

あんたが私を見て言った言葉を私は忘れない。
初めての顔合わせの帰り道、私が聞いているとも知らずに従者に「噂よりもおぞましい姿だったな」と。
家族の誰とも似てない白銀の髪は呪われた象徴として屋敷内では煙たがられていた。
そんな失礼なことを言った婚約者様に、シオンは惹かれていった。上辺だけの優しさでも嬉しかったんだ。
優しくされることが。
それでもあの言葉だけは心に刺さったまま。
シオン自身もどうしたいのかわからない。多少の好意はある。でもそれは、愛されたいではない。

明日のレクリエーションは休むのはマズいよね。
私は何もするつもりはないけど、ゲームではシオンが魔法を使ってユファンを崖から突き落とす。それを婚約者様が助ける。
万が一のことを考えて二人から離れて歩こう。やってもない罪を着せられたくない。
明日の出来次第で今後の評価が決まる。
失敗すれば断罪ルートに一歩近づく。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

悪女の私を愛さないと言ったのはあなたでしょう?今さら口説かれても困るので、さっさと離縁して頂けますか?

輝く魔法
恋愛
システィーナ・エヴァンスは王太子のキース・ジルベルトの婚約者として日々王妃教育に勤しみ努力していた。だがある日、妹のリリーナに嵌められ身に覚えの無い罪で婚約破棄を申し込まれる。だが、あまりにも無能な王太子のおかげで(?)冤罪は晴れ、正式に婚約も破棄される。そんな時隣国の皇太子、ユージン・ステライトから縁談が申し込まれる。もしかしたら彼に愛されるかもしれないー。そんな淡い期待を抱いて嫁いだが、ユージンもシスティーナの悪い噂を信じているようでー? 「今さら口説かれても困るんですけど…。」 後半はがっつり口説いてくる皇太子ですが結ばれません⭐︎でも一応恋愛要素はあります!ざまぁメインのラブコメって感じかなぁ。そういうのはちょっと…とか嫌だなって人はブラウザバックをお願いします(o^^o)更新も遅めかもなので続きが気になるって方は気長に待っててください。なお、これが初作品ですエヘヘ(о´∀`о) 優しい感想待ってます♪

完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。

水鳥楓椛
恋愛
 わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。  なんでそんなことが分かるかって?  それはわたくしに前世の記憶があるから。  婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?  でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。  だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。  さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

ある愚かな婚約破棄の結末

オレンジ方解石
恋愛
 セドリック王子から婚約破棄を宣言されたアデライド。  王子の愚かさに頭を抱えるが、周囲は一斉に「アデライドが悪い」と王子の味方をして…………。 ※一応ジャンルを『恋愛』に設定してありますが、甘さ控えめです。

婚約破棄をいたしましょう。

見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。 しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

処理中です...