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第十章 仁義なき文化祭!
10-9 文化祭開始!
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* * * * * * * *
「コスプレ喫茶でーす」
そんなこんなで文化祭当日になりました。僕は我がクラスの店の前で呼び込みをしている。
場所は教室ではなく、サブ体育館。メインの体育館よりは狭いが、奥に合宿所が繋がっている。
合宿所には調理場があるため、ここを使ったほうが都合が良いのだ。
「ちょっと休んでいきませんかー? 軽食もございますよー」
まだ始まったばかりで、客足は少ない。
何故僕が呼び込みなんだ。翼が『男だってバレねーよ!』ってふざけた事抜かしていたが。
背丈は座って誤魔化し、肩幅はウィッグを垂らして誤魔化し、喉仏はチョーカーで隠し、声は気合いで変え、脚はロングスカートで隠した。
徹底的に対策したように見えるが、こんな座高が大きい女子なんかいないだろ。無理だろ。
唯一の救いは、試着で着たメイド服でなく、僕の体格に合ったクラシックなメイド服であることだ。これならぱつんぱつんじゃないし、脚も隠れる。こればかりは二階堂君に感謝せねば。
翼曰く、『メイド服は絶対クラシック。ミニスカは許さねぇ。あの清楚なロングスカートからチラリと覗く白い足首が至高』らしい。フェチズムはよくわからないし、あいつ気持ち悪い。
実際に着るのは男子だし、フェチもへったくれもない。
「珀弥君、とっても可愛いよ!」
ひょっこりと現れたのはホール担当の千真だ。
黒い燕尾服に身を包み、長い髪を後ろでまとめている。服のサイズもぴったり合っており、なかなか似合っている。
「千真さん、仕事に戻りなさい」
「ぶー!」
千真を追い返した直後、客が近づいてきた。女の子二人組だ。それぞれうちの制服と、他校の制服を着ている。
「いらっしゃいませ、お飲み物はいかがですか?」
営業スマイルを顔に貼りつけ、呼び込みをする。
「ここ入っちゃう?」
「うん! メイドさん見たい」
女の子たちは僕を見てキラキラと目を輝かせた。残念だが中は半分地獄絵図だ。
彼女たちが中に入るとき、『入り口の人、美人じゃない?』という会話が聞こえた。
け、化粧ってすごいな。それよりも、男ってバレていない?
また客が来た。今度は男二人組の上級生だ。少し軽薄そうな印象を受ける。
「君、美人だね。シフト終わったら一緒に回らない?」
「は、はい?」
突然のナンパ。僕は男ですよ。体格で少なくとも女ではないことはわかるでしょ?
「名前教えてよ!」
もう片方がにやりと笑う。
「田中です」
「田中ちゃんかぁ。ねぇ、メアド教えてよ」
「ふふ、お店に入って頂けたら考えます」
口元を手で隠し、お上品に笑ってみた。天Styleである。
こんな感じでナンパを躱し、呼び込みを続ける。どうせまぐれだ。
人生初のナンパが男からっていうのが腹立たしいが、これ以降はもう無——。
「うっわ、脚なげぇ! もしかして君モデル?」
「可愛いね!」
「メアド教えて!」
「写真一緒に取ってください!」
「付き合ってください!」
「お姉様と呼ばせてもらっていいですか!」
「踏んでください!」
何、この嬉しくないモテ期。
次々と近付いてくる野郎共、時々女の子。お陰で我がクラスは繁盛している。でも、君たちの目は節穴なんですか?
こんなに男に好かれる日が来るとは思わなかった。ちょっとどころじゃない、超怖い。
「白くーん!」
僕が身体の震えを抑えながら接客していると、よく通る声がこちらに飛んできた。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
「ちょ、ホントにメイドさんやってるーっ!」
「いだだだだ、痛いよ呉羽」
翼の妹である呉羽は、僕の肩を笑いながら何度も叩く。痛い。容赦なくケラケラと笑う辺りが、翼そっくりだ。
「くーちゃん、笑い過ぎだよ……」
控えめにそう言うのは、呉羽の同級生。僕が中学生の時に所属していた部活の後輩でもある。
「須藤さん、久しぶり」
「お久しぶりですっ! 珀弥先輩!」
彼女は少しだけ頬を赤らめ、にこりと笑った。
「あの、その……とっても似合ってます!」
「ありがとう」
ごめん、物凄く嬉しくない。だけれど、勇気を振り絞ったような様子の彼女の前で、そんなことは言えない。
「似合ってるけどさー、何か物腰の柔らかい白君マジきもい」
「いや、そういうキャラだから」
呉羽は何のためらいもなく毒を吐く。
彼女と顔を会わせるときは大体、珀弥としてではなく白鬼としてだ。イメージが合わないのは分かるが、心にグサッとくるな。
「ずっと気になってたけど、白君とか、キャラって一体……?」
須藤さんは状況が掴めないのか、頭にハテナを浮かべている。
僕の名前から『白君』というあだ名を導き出すことは、容易ではない。『白君』の性格と僕の性格が正反対なこと、そもそも『白君』の存在を彼女は知らない。混乱するのも当たり前だ。
「それはね、白君と二人だけの、ヒ・ミ・ツ」
呉羽はウインクし、ピースサインをきめた。
「翼や雨ヶ谷さんは知ってるでしょ」
「空気読めや」
「申し訳ございません」
そういえば、この二人はそんなに仲が良かったのか。性格のタイプが正反対な気がするが。
「すどーちゃんとは今年のクラスが一緒になったんだけどぉ、白君と同じ書道部じゃん? で、白君の話してたら意気投合しちゃったんだな、これが!」
「なるほどね。いつの間にか話の種にされたのか、僕は」
この子、千里眼で心を読んだのか。おぉ、くわばらくわばら。
「その、気を悪くさせちゃってごめんなさい……」
須藤さんは眉をハの字にして、何度も頭を下げた。
「大丈夫。二人の友達の輪を広げるのに貢献できたんだから、むしろ嬉しいよ」
以前から控えめな性格だったが、こんなにネガティブな子だったっけか。何か、様子がおかしい気が……。
「白君ったら普通に優しくてキモーい!」
呉羽はまた毒を吐きつつ、僕の肩に腕を回し、耳に顔を近付けてきた。
「気付いた? やっぱり何かおかしいでしょ?」
彼女は真面目な声で囁いた。そうだ、彼女が近くに居て気付かないわけがない。
「うん、何かに——」
「珀弥君、厨房からお呼びがかかってるよ!」
僕の台詞に割り込むように、千真が現れた。もうそんな時間か。
「わかった。ありがとう、千真さん」
そろそろ行くね、と後輩二人に断ろうとしたときだ。
「ち、さ、なァ?」
呉羽が般若のような形相で千真を睨み付けていた。
「はひィ!?」
千真は呉羽の覇気に圧され、猛禽類を恐れる小動物のように、カタカタと震え始めた。
「へぇ~……ふーん……」
呉羽は鷲のような鋭い眼光をチラつかせ、千真のアホ毛から足の先まで値踏みするようにまじまじと見る。
そして満足したのか、一度頷くと、千真を鼻で笑った。
「顔は結構かわいーじゃん。でもさ、なーんか色気無いっつーか乳臭いよね、あんた。胸無いし。白君は何で——」
「うぉあああああ!!」
呉羽の容赦無い言葉が降り注ぐ。
特に『胸無い』発言が決め手となったのか、千真は頭を抱えて発狂しだした。
「呉羽! 千真さんはちょっと慎ましやかなだけだ! 侮辱するのは許さない!!」
「遠回しに小さいっつってんじゃねぇよ!!」
ここで千真にアッパーを戴く。
顎がダンディーに割れたかと思うくらい、痛い。彼女のどこにこんな力があるのだろうか。
「ってゆーか話遮らな——」
「オイ、くー。入んならさっさと入れよー」
「なっちゃ……おにい!?」
呉羽が再び口を開いたところに、翼がやってきた。彼女は兄の姿を見て、面を食らっているようだ。
翼も僕と同じ全身フリフリである。
前髪を下ろして額を隠し、後ろ髪はエクステでポニーテールにしている。
驚いたことに、雨ヶ谷さんにそっくりなのだ。下手をしたら双子にさえ間違われそうだ。伊達にイトコ設定があるわけじゃない。
彼は僕より顔面偏差値が上というふざけた裏設定があるため、女装に違和感が無いのも納得がいく。死ね。
「えっ、何でなっちゃんの真似してんの?」
「貧乳のナツもまた良いんじゃねーかなと思って」
「キモい」
呉羽は兄の変態発言を一刀両断し、ため息をついた。
「はぁ……んじゃ、さっさと案内してよ。チサナはちょっとツラ貸しな」
「ひぃっ!」
そのまま千真の襟首を掴むと、口を挟む間もなく中へ入ってしまった。
「じゃ、じゃあ、お邪魔します」
「はい、ごゆっくりー」
暫し固まっていた須藤さんを見送り、僕は息をついた。
呉羽は最初から千真が気に食わなかったようだ。何故だろうか。彼女には節度を守るくらいの常識はあるが、少し不安だ。
「黎藤君! 早く厨房入って!」
「はい」
すっかり忘れてた。
「コスプレ喫茶でーす」
そんなこんなで文化祭当日になりました。僕は我がクラスの店の前で呼び込みをしている。
場所は教室ではなく、サブ体育館。メインの体育館よりは狭いが、奥に合宿所が繋がっている。
合宿所には調理場があるため、ここを使ったほうが都合が良いのだ。
「ちょっと休んでいきませんかー? 軽食もございますよー」
まだ始まったばかりで、客足は少ない。
何故僕が呼び込みなんだ。翼が『男だってバレねーよ!』ってふざけた事抜かしていたが。
背丈は座って誤魔化し、肩幅はウィッグを垂らして誤魔化し、喉仏はチョーカーで隠し、声は気合いで変え、脚はロングスカートで隠した。
徹底的に対策したように見えるが、こんな座高が大きい女子なんかいないだろ。無理だろ。
唯一の救いは、試着で着たメイド服でなく、僕の体格に合ったクラシックなメイド服であることだ。これならぱつんぱつんじゃないし、脚も隠れる。こればかりは二階堂君に感謝せねば。
翼曰く、『メイド服は絶対クラシック。ミニスカは許さねぇ。あの清楚なロングスカートからチラリと覗く白い足首が至高』らしい。フェチズムはよくわからないし、あいつ気持ち悪い。
実際に着るのは男子だし、フェチもへったくれもない。
「珀弥君、とっても可愛いよ!」
ひょっこりと現れたのはホール担当の千真だ。
黒い燕尾服に身を包み、長い髪を後ろでまとめている。服のサイズもぴったり合っており、なかなか似合っている。
「千真さん、仕事に戻りなさい」
「ぶー!」
千真を追い返した直後、客が近づいてきた。女の子二人組だ。それぞれうちの制服と、他校の制服を着ている。
「いらっしゃいませ、お飲み物はいかがですか?」
営業スマイルを顔に貼りつけ、呼び込みをする。
「ここ入っちゃう?」
「うん! メイドさん見たい」
女の子たちは僕を見てキラキラと目を輝かせた。残念だが中は半分地獄絵図だ。
彼女たちが中に入るとき、『入り口の人、美人じゃない?』という会話が聞こえた。
け、化粧ってすごいな。それよりも、男ってバレていない?
また客が来た。今度は男二人組の上級生だ。少し軽薄そうな印象を受ける。
「君、美人だね。シフト終わったら一緒に回らない?」
「は、はい?」
突然のナンパ。僕は男ですよ。体格で少なくとも女ではないことはわかるでしょ?
「名前教えてよ!」
もう片方がにやりと笑う。
「田中です」
「田中ちゃんかぁ。ねぇ、メアド教えてよ」
「ふふ、お店に入って頂けたら考えます」
口元を手で隠し、お上品に笑ってみた。天Styleである。
こんな感じでナンパを躱し、呼び込みを続ける。どうせまぐれだ。
人生初のナンパが男からっていうのが腹立たしいが、これ以降はもう無——。
「うっわ、脚なげぇ! もしかして君モデル?」
「可愛いね!」
「メアド教えて!」
「写真一緒に取ってください!」
「付き合ってください!」
「お姉様と呼ばせてもらっていいですか!」
「踏んでください!」
何、この嬉しくないモテ期。
次々と近付いてくる野郎共、時々女の子。お陰で我がクラスは繁盛している。でも、君たちの目は節穴なんですか?
こんなに男に好かれる日が来るとは思わなかった。ちょっとどころじゃない、超怖い。
「白くーん!」
僕が身体の震えを抑えながら接客していると、よく通る声がこちらに飛んできた。
「いらっしゃいませ、ご主人様」
「ちょ、ホントにメイドさんやってるーっ!」
「いだだだだ、痛いよ呉羽」
翼の妹である呉羽は、僕の肩を笑いながら何度も叩く。痛い。容赦なくケラケラと笑う辺りが、翼そっくりだ。
「くーちゃん、笑い過ぎだよ……」
控えめにそう言うのは、呉羽の同級生。僕が中学生の時に所属していた部活の後輩でもある。
「須藤さん、久しぶり」
「お久しぶりですっ! 珀弥先輩!」
彼女は少しだけ頬を赤らめ、にこりと笑った。
「あの、その……とっても似合ってます!」
「ありがとう」
ごめん、物凄く嬉しくない。だけれど、勇気を振り絞ったような様子の彼女の前で、そんなことは言えない。
「似合ってるけどさー、何か物腰の柔らかい白君マジきもい」
「いや、そういうキャラだから」
呉羽は何のためらいもなく毒を吐く。
彼女と顔を会わせるときは大体、珀弥としてではなく白鬼としてだ。イメージが合わないのは分かるが、心にグサッとくるな。
「ずっと気になってたけど、白君とか、キャラって一体……?」
須藤さんは状況が掴めないのか、頭にハテナを浮かべている。
僕の名前から『白君』というあだ名を導き出すことは、容易ではない。『白君』の性格と僕の性格が正反対なこと、そもそも『白君』の存在を彼女は知らない。混乱するのも当たり前だ。
「それはね、白君と二人だけの、ヒ・ミ・ツ」
呉羽はウインクし、ピースサインをきめた。
「翼や雨ヶ谷さんは知ってるでしょ」
「空気読めや」
「申し訳ございません」
そういえば、この二人はそんなに仲が良かったのか。性格のタイプが正反対な気がするが。
「すどーちゃんとは今年のクラスが一緒になったんだけどぉ、白君と同じ書道部じゃん? で、白君の話してたら意気投合しちゃったんだな、これが!」
「なるほどね。いつの間にか話の種にされたのか、僕は」
この子、千里眼で心を読んだのか。おぉ、くわばらくわばら。
「その、気を悪くさせちゃってごめんなさい……」
須藤さんは眉をハの字にして、何度も頭を下げた。
「大丈夫。二人の友達の輪を広げるのに貢献できたんだから、むしろ嬉しいよ」
以前から控えめな性格だったが、こんなにネガティブな子だったっけか。何か、様子がおかしい気が……。
「白君ったら普通に優しくてキモーい!」
呉羽はまた毒を吐きつつ、僕の肩に腕を回し、耳に顔を近付けてきた。
「気付いた? やっぱり何かおかしいでしょ?」
彼女は真面目な声で囁いた。そうだ、彼女が近くに居て気付かないわけがない。
「うん、何かに——」
「珀弥君、厨房からお呼びがかかってるよ!」
僕の台詞に割り込むように、千真が現れた。もうそんな時間か。
「わかった。ありがとう、千真さん」
そろそろ行くね、と後輩二人に断ろうとしたときだ。
「ち、さ、なァ?」
呉羽が般若のような形相で千真を睨み付けていた。
「はひィ!?」
千真は呉羽の覇気に圧され、猛禽類を恐れる小動物のように、カタカタと震え始めた。
「へぇ~……ふーん……」
呉羽は鷲のような鋭い眼光をチラつかせ、千真のアホ毛から足の先まで値踏みするようにまじまじと見る。
そして満足したのか、一度頷くと、千真を鼻で笑った。
「顔は結構かわいーじゃん。でもさ、なーんか色気無いっつーか乳臭いよね、あんた。胸無いし。白君は何で——」
「うぉあああああ!!」
呉羽の容赦無い言葉が降り注ぐ。
特に『胸無い』発言が決め手となったのか、千真は頭を抱えて発狂しだした。
「呉羽! 千真さんはちょっと慎ましやかなだけだ! 侮辱するのは許さない!!」
「遠回しに小さいっつってんじゃねぇよ!!」
ここで千真にアッパーを戴く。
顎がダンディーに割れたかと思うくらい、痛い。彼女のどこにこんな力があるのだろうか。
「ってゆーか話遮らな——」
「オイ、くー。入んならさっさと入れよー」
「なっちゃ……おにい!?」
呉羽が再び口を開いたところに、翼がやってきた。彼女は兄の姿を見て、面を食らっているようだ。
翼も僕と同じ全身フリフリである。
前髪を下ろして額を隠し、後ろ髪はエクステでポニーテールにしている。
驚いたことに、雨ヶ谷さんにそっくりなのだ。下手をしたら双子にさえ間違われそうだ。伊達にイトコ設定があるわけじゃない。
彼は僕より顔面偏差値が上というふざけた裏設定があるため、女装に違和感が無いのも納得がいく。死ね。
「えっ、何でなっちゃんの真似してんの?」
「貧乳のナツもまた良いんじゃねーかなと思って」
「キモい」
呉羽は兄の変態発言を一刀両断し、ため息をついた。
「はぁ……んじゃ、さっさと案内してよ。チサナはちょっとツラ貸しな」
「ひぃっ!」
そのまま千真の襟首を掴むと、口を挟む間もなく中へ入ってしまった。
「じゃ、じゃあ、お邪魔します」
「はい、ごゆっくりー」
暫し固まっていた須藤さんを見送り、僕は息をついた。
呉羽は最初から千真が気に食わなかったようだ。何故だろうか。彼女には節度を守るくらいの常識はあるが、少し不安だ。
「黎藤君! 早く厨房入って!」
「はい」
すっかり忘れてた。
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