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やっぱりフラグなど存在しない話?
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『うっそだろ』
翌日、またあの場所を通ると、女の子が刺さったままだった。
他にも人が歩いているのにも関わらず、あの子の事を一切気にかけていない。スルースキル検定一級か?
俺はカニ歩きをしながら、現代アートに近づいてみた。
好奇心と恐怖心が入り混じったこの感情をどうすればよいのやら。
『あのぅ、そこに誰かいますよね?』
『……はい、いますが』
声を掛けられてしまい、うっかり返事をしてしまう。俺がここにいるとして、何が変わるのだろうか。
『私のことが見えるだなんて、あなたも人間じゃないってことですか?』
あなたも?
『君は人間じゃないのか?』
『はい。私、モニョプネ星から偵察に来たんです』
……モニョ、何?
彼女は戸惑う俺のことなんか気にもせず、言葉を続けた。
『先遣隊を錨として、本隊がこの地球に訪れる計画なんですよぉ。楽しみです』
長台詞が出たと思ったら、とんでもない電波だったので、俺は何も言わずにその場を後にした。やってらんねぇ。
——その一時間後、空から数多の人型兵器が飛来。それらは次々と地面に刺さり、瞬く間に街が火の海と化した。
建物は破壊され、道路は穴だらけ、飛来物と衝突した人間は……いや、言うのはやめておこう。
人々の悲鳴、怒号、呻き声、阿鼻叫喚。一瞬で地獄絵図だ。
SNSには呑気に『人が降ってきたwww』という投稿が拡散されたが、その投稿主の更新は既に途絶えている。
あれはただの電波じゃなかった。本当に宇宙人だったんだ。
俺は燃え盛る自宅を眺め、恐怖に打ち震える。
あ、人型と目が合った。
* * * * *
「ゆ、夢か……」
目の前に広がるのは火の海ではなく、自室の天井だった。
ああ、夢オチで良かった。あんなので地球滅亡だなんて悪い冗談にも程がある。
安堵していると、壁掛け時計が目に入った。時計の針が指しているのは、八時十分だ。
「行ってきまーす!」
俺は起き上がり、傍らの食パンをくわえて家を飛び出した。
返事をしてくれる人は誰もいないが、それは気にしないことにした。
外はいつも通りの閑静な住宅街。家は破壊されていないし、道に穴ぼこも空いていない。例のあそこ以外は。
「まだ刺さってるぅ……」
奴は未だにオブジェを続けていた。いい加減、誰か気づけよ。
それにしても、姿勢が一切崩れていない。人間とは思えない真っ直ぐさだ。
とりあえず、そこを通らなければ学校には行けないため、アレの横を慎重にすり抜けた。
「……モニョプネ星人」
ぼそり、と口にしてみる。明らかに普通の人間ではないが、かといって宇宙人だなんて現実味の無い話だ。彼女が知っているはずがない。
俺の言葉が聞こえなかったのか、彼女は何も反応を示さなかった。それならそれで別に良い。
気にせず、いつも通りに進めば良いんだ。
「何でわかった」
「え?」
翌日、またあの場所を通ると、女の子が刺さったままだった。
他にも人が歩いているのにも関わらず、あの子の事を一切気にかけていない。スルースキル検定一級か?
俺はカニ歩きをしながら、現代アートに近づいてみた。
好奇心と恐怖心が入り混じったこの感情をどうすればよいのやら。
『あのぅ、そこに誰かいますよね?』
『……はい、いますが』
声を掛けられてしまい、うっかり返事をしてしまう。俺がここにいるとして、何が変わるのだろうか。
『私のことが見えるだなんて、あなたも人間じゃないってことですか?』
あなたも?
『君は人間じゃないのか?』
『はい。私、モニョプネ星から偵察に来たんです』
……モニョ、何?
彼女は戸惑う俺のことなんか気にもせず、言葉を続けた。
『先遣隊を錨として、本隊がこの地球に訪れる計画なんですよぉ。楽しみです』
長台詞が出たと思ったら、とんでもない電波だったので、俺は何も言わずにその場を後にした。やってらんねぇ。
——その一時間後、空から数多の人型兵器が飛来。それらは次々と地面に刺さり、瞬く間に街が火の海と化した。
建物は破壊され、道路は穴だらけ、飛来物と衝突した人間は……いや、言うのはやめておこう。
人々の悲鳴、怒号、呻き声、阿鼻叫喚。一瞬で地獄絵図だ。
SNSには呑気に『人が降ってきたwww』という投稿が拡散されたが、その投稿主の更新は既に途絶えている。
あれはただの電波じゃなかった。本当に宇宙人だったんだ。
俺は燃え盛る自宅を眺め、恐怖に打ち震える。
あ、人型と目が合った。
* * * * *
「ゆ、夢か……」
目の前に広がるのは火の海ではなく、自室の天井だった。
ああ、夢オチで良かった。あんなので地球滅亡だなんて悪い冗談にも程がある。
安堵していると、壁掛け時計が目に入った。時計の針が指しているのは、八時十分だ。
「行ってきまーす!」
俺は起き上がり、傍らの食パンをくわえて家を飛び出した。
返事をしてくれる人は誰もいないが、それは気にしないことにした。
外はいつも通りの閑静な住宅街。家は破壊されていないし、道に穴ぼこも空いていない。例のあそこ以外は。
「まだ刺さってるぅ……」
奴は未だにオブジェを続けていた。いい加減、誰か気づけよ。
それにしても、姿勢が一切崩れていない。人間とは思えない真っ直ぐさだ。
とりあえず、そこを通らなければ学校には行けないため、アレの横を慎重にすり抜けた。
「……モニョプネ星人」
ぼそり、と口にしてみる。明らかに普通の人間ではないが、かといって宇宙人だなんて現実味の無い話だ。彼女が知っているはずがない。
俺の言葉が聞こえなかったのか、彼女は何も反応を示さなかった。それならそれで別に良い。
気にせず、いつも通りに進めば良いんだ。
「何でわかった」
「え?」
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