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第二章 車内でも隣には
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ゆきは一瞬きょとんとした後、それまでと違ういつも通りの明るい笑顔を見せた。
「好きって気持ちは否定しない方が早く忘れられるんです。達治との別れ話の期間で私が悟ったことの一つです。何せ二、三カ月話し合ってましたから。結局卒業式のギリギリになって、でも旅立ちの最終期限までにはもう少しあったので、そこまで友人として会ってました」
はっきりとした答えではないので目雲の不安は払拭されない。
「友人」
疑わしい単語であると目雲は思わずにいられない。今はそうでも、また会ってしまったら気持ちが再燃しないとも言えないのではないのかと。そう思われるのはゆきにも分かっているはずなのに、その言葉を使う。
「もう友人です。恋愛的な好きはもうなくなりました。どこかで元気でいてくれればいいと思う友人です。だから会えなくても大丈夫ですし、思い出しても話しても笑い話みたいなものだし、誰かの話題に出ても素直に近況を聞くことができます。そうなるように二人で話し合ったんですから」
「人の気持ちはそんなに簡単ではないと思います」
ゆきの自分への気持ちを疑っているわけではない目雲だが、割り切れないことだらけの人間関係を思い出させる。
「簡単ではなかったですよ。本当にただ振られた方がまだ楽なんじゃないかと、落ち込む期間は長くなるかもしれないですけど、自分の感情を無理やり変えるって、本当にもう二度としたくありません。だから目雲さんに振られた時も辛かったですけど、好きって思っていられるだけまだ気持ちの安定はありました。ちゃんと告白して振られてるので悔やむことももうなくて、後は時間が薬だと思って。ちょっと仕事増やしてみたりして、規則正しい生活無視して没頭したりするのは、なんだか自分に正直でいられる感じがしてそれもいい薬でした」
ゆきは確かに目雲に振られた時は心が痛んだが、自分の気持ちを否定せずに過ごせるだけでその辛さは紛らわすことができた。多少元気が出なくても、本を読んでいる時に時折思い出して手が止まっても、そうやって思い出すことが共に過ごす未来に繋がっていなくても好きの気持ちから生じるものをそのままに感じられているだけでゆきは穏やかな気持ちになることができた。
それは虚無になった自分を知るからこそ必要な時間だとそれこそが癒しになると分かっていた。
目雲としてもどこかでゆきが自分などいなくても平気だと思っていたから、突き放すことがゆきのためだと思い込もうとしたし、宮前からその予想のままだと聞かされてからもそれでいいと本気で思っている部分もあった。
ただ、目雲はそれは自分の本当の感情を押し殺しているとその後自分で気が付き、その想いのまま行動するようになる。
「風化させようとしてるのを、僕が蒸し返したんですね」
そのことに今は後悔はないが、ゆきにとってはどうだろうかと不安に思うことはまだあった。
ゆきを自分勝手に振った自分と昔付き合っていた男と、どちらに分があるだろうと詮無いことを考えてしまいそうになる目雲だが、ゆきは優しく微笑む。
「嬉しかったです。気持ちが報われるのは何よりの薬ですよ。それこそ一番気持ちを変える必要ないことですから、忘れる必要さえなくなるなんて最高です」
そう言われてほっともしたが、目雲はつい聞かずにはいられなかった。
「その、どんな人なんですか?」
ゆきも別れた原因から話したから、そもそも付き合う過程はまだだったと思い出した。
「大学の学部もゼミも一緒の同期です。入学して初めて会った時はすごくよくしゃべる人っていうのが印象です。どんなイベントにも内部外部なく積極的に参加して、私とは真逆の人でした。軽いというより我武者羅という方が似合う感じです」
目雲は自分と比較しても全く違うタイプの人間だと思った。
「そういうところに惹かれたんですか?」
聞かれてゆきは思い返してみるが、そうだからだとははっきり思い至らず、過程を口にしてみる。
「うーん、あまり始めは関りがなかったんです、授業は一緒のことが多かったですが、私は図書館とか浅田教授の部屋に籠って本ばっかり読んでたので、行動的な彼とはそもそも合わないですよね。ただ、たまに一緒に本を読んでいることがありました。あと本に夢中な私を外の世界に無理やり誘ったりもなかったので、他人を尊重する人なんだなとは思いました」
ゆきは好きで一人でいるわけでも、誰かと関わることが苦手で一人でいるわけでもなかったが、好きなように行動していた結果、活字に埋もれるように過ごしていて、他者とのコミュニケーションに割く時間が最低限になってしまっていただけで、そうと知らずとも何か言われることもなく、けれど大勢を誘うような時には必ず声を掛けてくれていたので、ゆきもそういう時は参加するようにしていた。
「そこからゆきさん自身が変わり始めるんですね」
「そうです、大学最初の夏前に宝亭でバイトを始めて、夏休みにお店でメグに怒られて、それからよくしゃべる人物だった彼は観察対象でした。人間関係構築の才にとても秀でた人でしたからすごく良い見本として、人と喋ってるところに遭遇したら眺めたりして」
「話したわけではなくて眺めていたんですね」
「あの頃彼と話すと彼からの一方的になってしまって、会話にならなかったんですよね。畳みかけるように次々話されて、まともに相槌も打てなかったです」
人の話を聞くのも好きなゆきなので、それはそれでとても有意義な時間ではあったが、自分の会話術の向上には不向きな関係性だったので、眺めている方が勉強になったのだ。
目雲の方はその情報だけで直感が働いた。
「もしかしてですけど、彼はそのころからゆきさんが好きだったのかもしれないですね」
「……分かるんですか?」
ゆきは心底驚いていた。
けれど目雲にとっては何も難しいことはなかった。当時のゆきがどんな様子だったのか正確にイメージできてはいなかったが、今よりもっと物静かだとも思われるゆきに必死に話すのは気を引きたい以外には考え辛かっただけだ。
「当たりましたか」
「付き合いだしてしばらくしたら教えてくれました。緊張して余裕がなかったそうです。私にはまったく分かりませんでした。ただすごくしゃべる人が私に向かって、ただすごくしゃべってるという感じで」
新入生に対して催される行事はそれなりに多く、同じ学科であれば一緒になることも多かったので、そういう場では他と違わずゆきもそれなりに交流をしていたので達治と言葉を交わす機会は幾度もあった。二人きりということは稀だったが、たまたま学食でお互い一人の時に出くわしたり、班分けのある授業で生徒の欠席の具合でゆきと達治だけがいるということがあったりして、何度か二人で話したことがあった。最初のうちは普通に話せていたのだが、時が経つにつれて達治の話す量がどんどん増していき、本来がそういう人で知り合いの度合いが深まってきただけなのだとゆきは思っていた。
「少し分かってきました、タツジという人がどんな人物かが」
ちょっと考えただけでも目雲にはその心理が手に取るように分かる。普段はただただ本に夢中なゆきが今のゆきの様に話を聞いてくれるのならば、それは夢中になって言葉を続けてしまうなんて容易い想像だ。その先にもっと自分に興味を向けて欲しいと言う欲求があるならば尚更だと饒舌でない目雲でさえ理解できるのだから、今までのゆきの話す人物像と組合せば人となりはそれとなく把握できた。
「そこで分かるんですね」
どうも無自覚そうなその様子に若干の気がかりを抱きながらも目雲はゆきに話の続きを促す。
「ゆきさんは付き合う以前は彼を眺めるだけなんですね、そこから関係が深まるのは何か切っ掛けが?」
そこからはもうゆきは我ながら苦笑するしかない理由だった。
「私の生活がばれるんです。この前あきくんが言ってた羽目を外してたっていう。スゥって呼ばれだしたのもその頃です」
「本に夢中になるあまりって言ってたことですね」
世間一般の羽目の外し方が遊びまわる事ならば、ゆきは完全に正反対の引きこもりのような暮らしだった。ただ自分のマンションにだけいるわけではなく大学の授業もきちんと出席しているし、バイトも始めるし、最低限の交流の場にも顔を出すので、表面上はその他大勢に十分に紛れていた。ただそれ以外に大学内で見かける時はほぼ読書をしている程度だったのが、ずっと何か読んでいるに変わるのにそれほど時間は掛からなかった。
「どうも生活能力を疑われたみたいで、いろんな人が私の世話を焼いてくれるようになって。あと私が人に対して消極的だと思われてたのが、急に一生懸命話をするようになったのが、野良猫を手なずけた感覚になったらしくて、それで余計にあれこれと」
どうして疑われだしたのかはゆき自身は分かっていなかったが、それほど不健康そうに見えたのだろうかと思ってはいる。
「好きって気持ちは否定しない方が早く忘れられるんです。達治との別れ話の期間で私が悟ったことの一つです。何せ二、三カ月話し合ってましたから。結局卒業式のギリギリになって、でも旅立ちの最終期限までにはもう少しあったので、そこまで友人として会ってました」
はっきりとした答えではないので目雲の不安は払拭されない。
「友人」
疑わしい単語であると目雲は思わずにいられない。今はそうでも、また会ってしまったら気持ちが再燃しないとも言えないのではないのかと。そう思われるのはゆきにも分かっているはずなのに、その言葉を使う。
「もう友人です。恋愛的な好きはもうなくなりました。どこかで元気でいてくれればいいと思う友人です。だから会えなくても大丈夫ですし、思い出しても話しても笑い話みたいなものだし、誰かの話題に出ても素直に近況を聞くことができます。そうなるように二人で話し合ったんですから」
「人の気持ちはそんなに簡単ではないと思います」
ゆきの自分への気持ちを疑っているわけではない目雲だが、割り切れないことだらけの人間関係を思い出させる。
「簡単ではなかったですよ。本当にただ振られた方がまだ楽なんじゃないかと、落ち込む期間は長くなるかもしれないですけど、自分の感情を無理やり変えるって、本当にもう二度としたくありません。だから目雲さんに振られた時も辛かったですけど、好きって思っていられるだけまだ気持ちの安定はありました。ちゃんと告白して振られてるので悔やむことももうなくて、後は時間が薬だと思って。ちょっと仕事増やしてみたりして、規則正しい生活無視して没頭したりするのは、なんだか自分に正直でいられる感じがしてそれもいい薬でした」
ゆきは確かに目雲に振られた時は心が痛んだが、自分の気持ちを否定せずに過ごせるだけでその辛さは紛らわすことができた。多少元気が出なくても、本を読んでいる時に時折思い出して手が止まっても、そうやって思い出すことが共に過ごす未来に繋がっていなくても好きの気持ちから生じるものをそのままに感じられているだけでゆきは穏やかな気持ちになることができた。
それは虚無になった自分を知るからこそ必要な時間だとそれこそが癒しになると分かっていた。
目雲としてもどこかでゆきが自分などいなくても平気だと思っていたから、突き放すことがゆきのためだと思い込もうとしたし、宮前からその予想のままだと聞かされてからもそれでいいと本気で思っている部分もあった。
ただ、目雲はそれは自分の本当の感情を押し殺しているとその後自分で気が付き、その想いのまま行動するようになる。
「風化させようとしてるのを、僕が蒸し返したんですね」
そのことに今は後悔はないが、ゆきにとってはどうだろうかと不安に思うことはまだあった。
ゆきを自分勝手に振った自分と昔付き合っていた男と、どちらに分があるだろうと詮無いことを考えてしまいそうになる目雲だが、ゆきは優しく微笑む。
「嬉しかったです。気持ちが報われるのは何よりの薬ですよ。それこそ一番気持ちを変える必要ないことですから、忘れる必要さえなくなるなんて最高です」
そう言われてほっともしたが、目雲はつい聞かずにはいられなかった。
「その、どんな人なんですか?」
ゆきも別れた原因から話したから、そもそも付き合う過程はまだだったと思い出した。
「大学の学部もゼミも一緒の同期です。入学して初めて会った時はすごくよくしゃべる人っていうのが印象です。どんなイベントにも内部外部なく積極的に参加して、私とは真逆の人でした。軽いというより我武者羅という方が似合う感じです」
目雲は自分と比較しても全く違うタイプの人間だと思った。
「そういうところに惹かれたんですか?」
聞かれてゆきは思い返してみるが、そうだからだとははっきり思い至らず、過程を口にしてみる。
「うーん、あまり始めは関りがなかったんです、授業は一緒のことが多かったですが、私は図書館とか浅田教授の部屋に籠って本ばっかり読んでたので、行動的な彼とはそもそも合わないですよね。ただ、たまに一緒に本を読んでいることがありました。あと本に夢中な私を外の世界に無理やり誘ったりもなかったので、他人を尊重する人なんだなとは思いました」
ゆきは好きで一人でいるわけでも、誰かと関わることが苦手で一人でいるわけでもなかったが、好きなように行動していた結果、活字に埋もれるように過ごしていて、他者とのコミュニケーションに割く時間が最低限になってしまっていただけで、そうと知らずとも何か言われることもなく、けれど大勢を誘うような時には必ず声を掛けてくれていたので、ゆきもそういう時は参加するようにしていた。
「そこからゆきさん自身が変わり始めるんですね」
「そうです、大学最初の夏前に宝亭でバイトを始めて、夏休みにお店でメグに怒られて、それからよくしゃべる人物だった彼は観察対象でした。人間関係構築の才にとても秀でた人でしたからすごく良い見本として、人と喋ってるところに遭遇したら眺めたりして」
「話したわけではなくて眺めていたんですね」
「あの頃彼と話すと彼からの一方的になってしまって、会話にならなかったんですよね。畳みかけるように次々話されて、まともに相槌も打てなかったです」
人の話を聞くのも好きなゆきなので、それはそれでとても有意義な時間ではあったが、自分の会話術の向上には不向きな関係性だったので、眺めている方が勉強になったのだ。
目雲の方はその情報だけで直感が働いた。
「もしかしてですけど、彼はそのころからゆきさんが好きだったのかもしれないですね」
「……分かるんですか?」
ゆきは心底驚いていた。
けれど目雲にとっては何も難しいことはなかった。当時のゆきがどんな様子だったのか正確にイメージできてはいなかったが、今よりもっと物静かだとも思われるゆきに必死に話すのは気を引きたい以外には考え辛かっただけだ。
「当たりましたか」
「付き合いだしてしばらくしたら教えてくれました。緊張して余裕がなかったそうです。私にはまったく分かりませんでした。ただすごくしゃべる人が私に向かって、ただすごくしゃべってるという感じで」
新入生に対して催される行事はそれなりに多く、同じ学科であれば一緒になることも多かったので、そういう場では他と違わずゆきもそれなりに交流をしていたので達治と言葉を交わす機会は幾度もあった。二人きりということは稀だったが、たまたま学食でお互い一人の時に出くわしたり、班分けのある授業で生徒の欠席の具合でゆきと達治だけがいるということがあったりして、何度か二人で話したことがあった。最初のうちは普通に話せていたのだが、時が経つにつれて達治の話す量がどんどん増していき、本来がそういう人で知り合いの度合いが深まってきただけなのだとゆきは思っていた。
「少し分かってきました、タツジという人がどんな人物かが」
ちょっと考えただけでも目雲にはその心理が手に取るように分かる。普段はただただ本に夢中なゆきが今のゆきの様に話を聞いてくれるのならば、それは夢中になって言葉を続けてしまうなんて容易い想像だ。その先にもっと自分に興味を向けて欲しいと言う欲求があるならば尚更だと饒舌でない目雲でさえ理解できるのだから、今までのゆきの話す人物像と組合せば人となりはそれとなく把握できた。
「そこで分かるんですね」
どうも無自覚そうなその様子に若干の気がかりを抱きながらも目雲はゆきに話の続きを促す。
「ゆきさんは付き合う以前は彼を眺めるだけなんですね、そこから関係が深まるのは何か切っ掛けが?」
そこからはもうゆきは我ながら苦笑するしかない理由だった。
「私の生活がばれるんです。この前あきくんが言ってた羽目を外してたっていう。スゥって呼ばれだしたのもその頃です」
「本に夢中になるあまりって言ってたことですね」
世間一般の羽目の外し方が遊びまわる事ならば、ゆきは完全に正反対の引きこもりのような暮らしだった。ただ自分のマンションにだけいるわけではなく大学の授業もきちんと出席しているし、バイトも始めるし、最低限の交流の場にも顔を出すので、表面上はその他大勢に十分に紛れていた。ただそれ以外に大学内で見かける時はほぼ読書をしている程度だったのが、ずっと何か読んでいるに変わるのにそれほど時間は掛からなかった。
「どうも生活能力を疑われたみたいで、いろんな人が私の世話を焼いてくれるようになって。あと私が人に対して消極的だと思われてたのが、急に一生懸命話をするようになったのが、野良猫を手なずけた感覚になったらしくて、それで余計にあれこれと」
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