私を支配するあの子

葛原そしお

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第十五話③

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 私はエリザちゃんのお尻の下から、必死にアヤちゃんに弁明する。
「アヤちゃん、これは違うの! 二人でふざけていただけで──」
 おふざけでこんなことになるわけがなかった。全裸で、お互いのあそこを舐め合うようなことを、どう言い訳したらいいのだろうか。私は頭が真っ白になった。
 そこで私は、アヤちゃんが下着姿であることに気づいた。
 黒いレースの下着は透けていて、それだけでなく、胸と股の間に切れ目が入っていた。高校生のアヤちゃんが着るようなものではなかった。
 ただでさえ取り返しのつかない状況なのに、アヤちゃんの異様な姿に、私の頭はついていけなかった。
 アヤちゃんが私たちの方に近づいてくる。エリザちゃんが私のあそこを、割れ目を開いた。剥き出しになったそこに外気が触れて、私は身震いした。
「ほら、ママのここ、こんなに濡れてる。アヤちゃんが慰めてあげて」
 エリザちゃんのお尻で見えないけれど、アヤちゃんは私の足の間にうずくまったようだった。
「え、アヤちゃん、なんで……? どういう、こと……?」
「私が呼んだの。お姉ちゃんも一緒にしよう、って」
 エリザちゃんが私の上に乗ったまま、知らないうちに友達を遊びに誘ったような、なんでもないことのように言った。
 私のあそこに、風が、息が当たった。エリザちゃんじゃない。アヤちゃんだ。
 エリザちゃんは私の顔にあそこを押しつけて、背中をそらして、その様子を見守っているようだった。
 アヤちゃんが何をしようとしているのか、最悪の可能性に気づいて、私は逃れようとしたけれど、エリザちゃんが私の体の上に乗って押さえつけてくる。せめて足を閉じようとしても、アヤちゃんがいてできなかった。
「待って、アヤちゃん、私たち母娘なのよ⁉︎」
「あんまり大きい声を出すと、ハナちゃんにバレちゃうよ」
 エリザちゃんの言葉に、私は声をこらえた。
 もしハナちゃんまで来たら──どうしてアヤちゃんがエリザちゃんの言いなりになって、こんなことをしているのか分からないけれど、この悪夢のような光景をハナちゃんに見せるわけにも、巻き込むわけにもいかなかった。
 私は小さな声で抗議することしかできなかった。
「やめて……アヤちゃん、ダメ……」
「お母さん、ごめんなさい……ごめんなさい……」
 アヤちゃんの声が震えていた。泣いていることが分かった。
 そしてアヤちゃんの舌が、私の割れ目の内側に触れた。
「ううぅ……!」
 私は身構えていたせいか、舌が触れた瞬間に、弾かれたように体が震えた。
「あやちゃん……こんなこと、やめて……」
 恥ずかしい、情けない、そんな気持ちよりも、人として、母娘として、こんなことしてはいけない、怖くて恐ろしい気持ちになった。こんなこと母娘で、許されることじゃない。こんなおぞましいこと。
「ここから、お姉ちゃんもハナちゃんも産まれてきたんだよね。とても素敵な場所。私もここから産まれたかったなぁ」
 エリザちゃんがどこかさびしげに言った。
 どうしてエリザちゃんは、実の母娘の私たちにこんなおぞましいことをさせるのか。
「どうして……どうしてこんな、ひどいこと……」
「ひどい? どこが? 愛し合っている家族同士がする、普通のことだよ」
「普通じゃない、こんなこと……」
 エリザちゃんは狂っている。誰に教わらなくても、これが異常なことだと分かるはず。彼女はいろいろなものが欠けている。
 エリザちゃん越しで見えないけれど、アヤちゃんが私のあそこを舐めている。アヤちゃんの舌が私の内側を舐めるたび、私たちは人間じゃなくなっていく、そんな恐ろしい気持ちになった。
 獣だ。私たちは獣だ。それを私たちにさせるエリザちゃんも人間じゃない。少女の姿をした怪物だ。
「ほら、ママ。自分だけ気持ちよくなってずるいよ。私にもして。お姉ちゃん、ママがイったら交代していいよ」
 エリザちゃんが私の顔にあそこを押しつけてくる。私が舐めないでいると、エリザちゃんは腰を前後に動かして、私の顔にこすりつけてくる。
「んんっ……!」
 アヤちゃんの舌が、私の内側をなぞり、エリザちゃんに責め立てられて充血した突起に触れる。照明のスイッチが押されて電流が駆け抜け、明かりが点くように、私のあそこから刺激が背筋を駆け抜けて、頭の中で火花を散らした。
 もうやめて──そう叫びたくても、エリザちゃんに口を塞がれて、私はうめくことしかできなかった。どかそうとして、彼女の体の前からお尻の横を掴むけれど、うまく力が入らなくて、余計に強く押しつけられるだけだった。
 その間にもアヤちゃんの舌に、何度も何度も責め立てられた。
 これ以上はダメ、まだ引き返せるから、アヤちゃんやめて──
 心の中で必死に叫んだ。けれどアヤちゃんには届かなかった。
「んっ、んんんんっ──」
 お腹の下が締めつけられる感覚。全身がびくびくと震えた。それは感電したようで、私の意思で抑えることができなかった。頭の中では火花が散り、目の前が真っ白になる。脳みそをかき回されたような、何か大切なことがあったのに思い出せないような気分だった。
「ママ、お姉ちゃんの舌でイっちゃったね」
 エリザちゃんが楽しそうに言った。私はそれで、アヤちゃんの、実の娘の舌でイってしまったことを自覚した。
「それじゃ交代」
 エリザちゃんが私の上から降りる。けれど私は抗議することも、起き上がる気力も残っていなかった。天井がぼんやりとにじんで見える。息が苦しい。私は泣いているのか、どうなっているのかもよく分からなかった。
「ママ、欲張りだね。まだしてほしいの?」
 その言葉に私は急いで起き上がった。もうこれ以上、こんなこと耐えられない。立ち上がろうとしたけれど、腰に力が入らなくて、そのままへたりこむ形になった。
 私の前には裸で立つエリザちゃんと、下着姿でうつむき正座のアヤちゃんがいた。
「それじゃ次はお姉ちゃん」
 エリザちゃんは無邪気で、無慈悲だった。
「もう、やめて……」
 私の必死に絞り出した声は、か細かった。自分でも聞こえないほどだった。
 エリザちゃんがアヤちゃんの横に膝をつく。
「ママが嫌だって。もうおわりにする?」
 それにアヤちゃんが怯えた顔でエリザちゃんを見る。エリザちゃんはいつもと変わらない微笑みを浮かべていた。
「いいの……?」
「別にいいよ。その代わり、わかっているよね?」
「なんで……? 私、言われた通りにしたよ……?」
「うーん、私がもっと見たいから? それじゃダメ?」
「だって……だって私……こんなこと、もう……」
 アヤちゃんが顔を崩して泣き始めた。両手で顔をぐしぐしと拭う。
 それに私は、私はエリザちゃんに対して怒りがわいてきた。私の大切な娘にこんなひどいことをして、彼女を許せないと思った。
「どうして、アヤちゃんまで……私だけで十分でしょ……それに私たちにこんなことをさせて……」
「これはお姉ちゃんが自分で選んだんだよ。私はお願いしただけ。ママとしてるところを見せてって」
「なんで、そんな──」
 エリザちゃんに理由を聞いても、どうせ意味の分からないことを言うだけ。聞くだけ無駄だ。それよりも──
「アヤちゃんに、いったい何をしたの……?」
 許せない。私だけじゃなく、私の娘にもこんなことをさせて。
「別に何も。ねぇ、お姉ちゃん。これはお姉ちゃんが自分で選んだんだよね?」
「はい……」
 アヤちゃんが泣きながらうなずく。こんな苦しんでいるのに、自分からこんなことをするわけがない。
「そんなわけない。アヤちゃんのことも、脅したの……?」
「そんなんじゃないよ。でも、私を裏切ったお姉ちゃんへの罰でもあるかな」
「それは、いったいどんなこと……?」
「お姉ちゃんは、私を裏切って、お友達と一緒に私にひどいことをしたの。私のことを呼び出して、叩いたり蹴ったりして、私に自慰をするように強要したの。たまたまダリアちゃんとマリーちゃんが助けてくれたからよかったけれど。私、すごく傷ついて悲しかった。だからその罰として、お姉ちゃんには私のお願いを聞いてもらったの。ママとしてるところを見せて、って」
 エリザちゃんはにっこりと笑った。
「アヤちゃんが、エリザちゃんにひどいことしたのは謝るから……もうこんなことやめて……」
「私、別に怒ってないよ。ただ悲しかっただけ。今はお姉ちゃんが私のお願いを聞いてくれて、すごく幸せだよ」
「だったら、もういいでしょ……? 私たちは、エリザちゃんのことを、家族のように思って接しているから、もうこんなことしなくていいでしょ……?」
「まだまだ全然足りない。まだこれじゃ本当の家族になれない」
「どうしたら……どうしたらエリザちゃんは、満足してくれるの……?」
 エリザちゃんがアヤちゃんを抱きしめ、その頭を撫で、髪に唇を埋める。
「ママやお姉ちゃん、それにハナちゃんのことが大好きだから、いつまでも一緒にいたいと思っているよ」
「もう、もう許してよ……私はいいから、アヤちゃんやハナちゃんに、ひどいことしないで……」
 私は溢れ出す涙をこらえることができなかった。その私を見ても、エリザちゃんは何も感じていないどころか、どこか苛立ったような様子だった。
「ママは私よりも、お姉ちゃんやハナちゃんの方が大事なんだね」
「当たり前でしょ……?」
 エリザちゃんの顔から一瞬、表情が消えた。それを隠すようにアヤちゃんの耳元に口を寄せる。
「お姉ちゃん、ママとしてるところ私に見せて。言うこと聞かないと、わかるよね?」
「はい……」
 アヤちゃんがむせびながら、私の方に這い寄って来る。
「どうして、こんなことさせるの……? あなたに、人の心はないの……?」
 エリザちゃんは答えず、微笑みながら私たちのことを見ていた。
 アヤちゃんが私を押し倒し、覆い被さってくる。
「ごめんなさい、お母さん……」
 私はこんなに泣いて怯えるアヤちゃんを突き放すことができなかった。
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