私を支配するあの子

葛原そしお

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第十五話②

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 シャワーをおえて、私はアヤちゃんの作り置きしてくれた夕飯を食べた。食欲がわかなかったのでスーパーの惣菜は、明日の二人のお昼に食べてもらうことにした。
「それでエリザちゃん、お部屋だけど──」
 エリザちゃんはハナちゃんが小学生の時に買った、淡いピンク色のパジャマを着ていた。彼女は私の正面に、ハナちゃんの左横に座って、美味しそうにカップアイスを、スプーンで削って食べていた。彼女が今日うちに泊まるからと買ってきたものだった。バニラとチョコレート味を二つずつ。ハナちゃんはバニラ味のを、エリザちゃんの横で、ゆっくりと食べていた。アヤちゃんはチョコ味を。私はバニラ味。
「私、ハナちゃんたちの部屋で、お姉ちゃんのお布団を借りて、床で寝ようと思うの。お姉ちゃんにはハナちゃんと一緒に寝てもらう感じでもいいかな。お姉ちゃんもハナちゃんも、それでいい?」
「うん、いいよ……」
 アヤちゃんがうなずいた。
「でもエリザちゃんはお客さんだから、私の部屋で寝ていいよ……?」
 私はそう抗議するのが限界だった。
「ママは明日もお仕事でしょ? 平気だよ。ママはゆっくり休んで。それに私たちは、遅い時間まで起きてるかもしれないから」
 私はエリザちゃんに、二人と一緒にいてほしくないけれど、強く反対することができなかった。私が反対する理由を、二人に説明することができないから。
 それから何気ない会話を、エリザちゃんが中心になってしていた。
「ハナちゃん、もうすぐ期末テストだね。平気そう?」
「お姉ちゃん、最近バイトはどう? 夏休みはたくさんバイトするのかな?」
「ママ、この間一緒にいた人はお友達? もしかして恋人だったりして。今度、紹介して」
 アヤちゃんもハナちゃんも、私も、それに曖昧に返事をした。
「そろそろ部屋に行こう。ママは明日もお仕事だから、早く休んでね」
 夜八時ごろ、エリザちゃんはそう言って、アヤちゃんとハナちゃんと一緒に部屋に入っていった。私は二人のことが心配で、とても眠れるような気分ではなかった。
 部屋を暗くして布団に入ると、エアコンの風を送る音や、ときおり外を走る車の音が気になった。隣の部屋からは、エリザちゃんの笑い声だろうか、女の子の甘い声が漏れ聞こえてくるような気がした。
 一度様子を見に行こうか。アヤちゃんがいるから平気だと思うけれど、心配で仕方なかった。ただ私が行くことで、二人の前で私に何かするかもしれない。
 お風呂でエリザちゃんは「続きはまたあとで」と言った。二人がいる前では何もしてこなかったけれど、きっとこのあと、続きをするつもりなのは分かっていた。
 布団に入って一時間ぐらい経ったころ、不意に部屋のドアがノックされる。
「誰……?」
「ママ、起きてる? 入ってもいい?」
 扉越しにエリザちゃんの声がした。
「いいよ……」
 ドアノブが音を立てて回る。部屋の鍵は開けていた。
 誰か来るかもしれない。何かあった時、アヤちゃんとハナちゃんが逃げて来るかも。ただその訪問者の中に、エリザちゃんがいる可能性も分かっていたけれど。
 もし私に何かしようとしてできなければ、それに対してエリザちゃんが不満を抱いたり気を悪くすれば、二人に手を出すかもしれない。
 エリザちゃんの目的は私の体だから、素直に差し出せば、彼女は満足してくれるはず。
 エリザちゃんは部屋に入ってドアを閉めると、明かりを点けた。
「エリザちゃん……?」
「ママ、お風呂での続きをしよう」
 エリザちゃんはいつものように微笑む。そこには少しも悪意が感じられなかった。本当に彼女は悪意などなく、純粋にこの行為を楽しんでいるか、家族になるための行為と信じて疑っていないのかもしれない。
「鍵、閉めて……」
「ダメ」
「お願い……」
「ダメ」
 エリザちゃんがゆっくりと、私に近づいてくる。彼女が近づくほど、不安で私の心臓は激しく脈打った。私の上にまたがると、影になって顔が隠れた。彼女の琥珀色の瞳が光って見えた。
「だから早くおわらせよう。お姉ちゃんやハナちゃんが心配して、見に来るかもしれないから」
 その言葉に私は凍りついた。
 エリザちゃんとしていることを、二人に知られるわけにはいかない。もしも知られたら、二人は私のことを軽蔑するだろうし、ショックを受けるかもしれない。
 エリザちゃんは私のシャツをまくりあげ、下着をずらして、露わになった私の胸に両手を重ね、その細くて小さな指を沈める。
 私は彼女のことが怖くて、起き上がって逃げることも、拒むこともできなかった。
「ん……」
 その冷たい手に、揉まれた感触に驚いて、私は息を漏らしてしまった。
 その反応にエリザちゃんは、楽しそうに笑う。それから体を屈めて、顔を近づけてくる。
「ママ」
 甘く笑う。彼女がキスを求めているのが分かった。思わず顔を背けてしまった。彼女はそのまま私の頬にキスをする。さっきの続きなら、私の全身を舐め回すつもりなのだろうか。ただ今夜は、わざわざ泊まってまで、そんなことをしに来たとは思えなかった。今夜は何か違う気がした。
「ママ、私を見て。顔をそらしちゃやだ」
 甘えるような声音だったけれど、私はなぶり殺しにされる小動物になったような気持ちだった。
 私はエリザちゃんの方を向く。それに彼女は唇を重ねてきた。
 エリザちゃんの舌が唇を割って、私の口の中に入ってくる。歯を閉じて拒むけれど、彼女の舌は私の歯や歯茎を、形を確かめるように執拗に舐めてくる。そのままエリザちゃんは私の胸を揉む。
 キスをしたり、胸に触れられることは初めてではない。私からもさせられたこともあるけれど。まだ私たちが越えていない一線。それをエリザちゃんは越えようとしている、そんな気がした。
 彼女の右手が私の股の間に割って入ってくる。そのまま服の上から、私のあそこをこすってくる。彼女の指と衣服の擦れる感触に、私はむず痒く不快な、恐ろしい気持ちになった。
「エリザちゃん、これは──」
 悪ふざけや、母娘ごっこの延長では済まされない。お風呂だったら、体を洗うためと言い訳ができるけれど、この状況でこの行為が意味するのは一つしかなかった。それは越えてはいけない最後の一線だった。
 私はエリザちゃんの肩を掴んで、押しのけようとした。それにエリザちゃんが囁くように言う。
「早くおわらせないと、いつまでも戻らない私に、お姉ちゃんやハナちゃんが変に思うかも」
 それに私はエリザちゃんを拒むことができず、かといってどうすればいいかも分からなかった。
 私が戸惑っていると、エリザちゃんは私から体を離し、上を脱ぐ。下着をつけていなかったので、彼女の痩せた細い体が露わになった。
「ね、ママも私にして。二人で一緒に気持ちよくなろう」
 私の手をとって、腰を浮かせると、彼女の股の間に触れさせる。
「別にママからしなくてもいいけれど、その代わり、いつまでもおわらないから」
 エリザちゃんの気が済まなければ、いつまでもおわらないということだった。彼女をイカせることができたら、満足してくれるだろうか。
 エリザちゃんとは、キスや、お風呂でお互いの体を洗ったり、授乳ごっこやオムツ替え、自慰を見せ合ったことはあるけれど。これはもう、ごっこ遊びではなく、セックスだった。
 中学生の娘の友達とそんなことできるわけない──けれど私は逆らうこともできない。しなければおわらない。おわらなければ、アヤちゃんやハナちゃんがエリザちゃんを探して部屋に来てしまうかもしれない。
 エリザちゃんは右手を後ろに回して、服と下着をずらして、私のあそこに触れてくる。
「くっ……んっ……」
 私のあそこをこするエリザちゃんの冷たい指の感触に、不安と恐怖で体が震えて、それを抑えようとして体が強ばり、変な息が漏れた。
「ほら、ママも」
 エリザちゃんは自分で腰を私の指に押しつけてくる。
 私はエリザちゃんの股の間は、ほんのり湿っている気がした。
 エリザちゃんに逆らうことができないのは、痛いほど分かっていた。私は素直に従うしかなかった。
 服越しに、エリザちゃんのあそこをこする。
「ん……ママぁ……」
 それにエリザちゃんはアゴを上にそらして、嬉しそうに、甘い声を漏らした。彼女の股の間がじんわりと濡れてくるのが分かった。
「ママ、濡れてきたね」
 エリザちゃんが笑う。
「それは……」
 無理矢理犯されて、傷つけられないように濡れたに過ぎない。そう抗議したかったけれど、怖くて言えなかった。
「次は口でしよう」
 エリザちゃんが私のあそこから手を引き抜くと、私の体液で濡れた指を舐めながら言った。それから立ち上がり、下も脱いで裸になる。
「びしょびしょになっちゃった。ママも裸になって。それとも私に脱がせてほしい?」
「いい……自分で脱ぐ……」
 娘と同い年の中学生に、これ以上辱められたくなくて、私は自分から脱いだ。ただそれは地獄へと続く階段を、自分から降りるか、引きずり降ろされるかの違いしかなかった。
 私たちは全裸になり、布団の上に寝そべった私の上に、エリザちゃんが私の頭にお尻を向けて乗る。彼女のまだ熟れていない果実のようなあそこと、小さなお尻の穴が目の前にあった。
 エリザちゃんが何をしようとしているのか、何をさせようとしているのか、なんとなく分かった。どうしてこんなことまで知っているのだろう。思いつくのだろう。こんな体勢で、こんなことをするのは、異様で異常だった。やはり彼女は普通じゃない。
 エリザちゃんが私の体の上に寝そべる。吸いつくような、彼女の冷たい肌の感触が伝わってきた。それから彼女は私の足の付け根に両手を添えて、あそこを開くように広げて、顔を埋めて、皮を被った突起に舌を這わせてくる。
「ん……」
 お皿に満たした牛乳を舐めとる猫のように、エリザちゃんの舌が私のそこを舐める。
「ママもして」
 お尻越しに、エリザちゃんが振り返り、その琥珀色の瞳で私を見つめる。その目を細めて笑ったようだった。口元は隠れて見えなかった。
 再びエリザちゃんは私のあそこを舐める。
 私は早くこんなことおわらせたくて、目の前の、張りのある果実につけられた切れ目のような彼女のそこに、舌先で触れた。私はその切れ目に沿って彼女のあそこを舐める。
「ん、ママ……ママぁ……」
 エリザちゃんが甘い声を漏らすと、吐息が私のあそこに触れてむず痒かった
 ただ今はそんなことに構っている暇はない。エリザちゃんをイカせて、こんなことはおわらせる。
 私は首を持ち上げて、両手でエリザちゃんのお尻を押さえて、かぶりつくように口を埋めた。私の唾液か、エリザちゃんの体液か、私の口元からアゴ、喉がびしょ濡れになって気持ち悪かった。
 目の前でエリザちゃんのお尻の穴が、呼吸するようにひくひくと動いていた。
「ママ、ママ……」
 エリザちゃんも私のあそこを必死に舐めてくる。突起が充血して、皮がむけて、顔を出したそこを舐められて、私は痛いようなむず痒いような嫌な気持ちになった。
 その時、ドアノブが回った。それまで水気のある音と、私たちの呼吸の音しかなかった部屋に、金属の硬い音が鳴った。
 私は心臓が止まるかと思った。全身から血の気が引いて、漏らしそうになってしまった。エリザちゃんが私のあそこを舐めるのをやめていなかったら、本当に漏らしていたかもしれない。
 エリザちゃんが私の上に寝そべったまま、顔をあげた。
「あ、お姉ちゃん」
 開いたドアの向こうに、エリザちゃんのお尻越しに、困惑するアヤちゃんの顔が見えた。
「おかあ、さん……?」
 アヤちゃんは青ざめた顔で、大きく見開いた瞳から、ぽろぽろと涙をこぼした。
 私は娘に、アヤちゃんにバレて、世界がおわったような気持ちになった。
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