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第十一話②
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お姉ちゃんの足は閉じようとして、閉じられなくて、震えていた。
私はお姉ちゃんの足の間にうずくまって、赤く潤んだ肉の割れ目に口づけをする。綺麗な紅色の花に、口を沈めて、蜜を吸うような気分だった。
「あっ──」
お姉ちゃんから甘く掠れた声が漏れた。それに私はどきりとした。
悪いことをしている、取り返しのつかないことをしている。けれど私がしなければ、エリザちゃんがお姉ちゃんに、どんなひどいことをするか分からない。
私がお姉ちゃんを守る──私はお姉ちゃんの、割れ目の内側に舌を這わせる。
「あんっ……やっ……ハナちゃん……」
私の舌がお姉ちゃんの花弁に沿って舐めるたび、お姉ちゃんの体が切なく震えた。
「ハナちゃん、やだ……もう、やめて……こんなこと──」
お姉ちゃんの声は涙でうわずっていた。ただどこか甘い響きがあって、それに私は、後ろ暗い気持ちだけでなく、胸の中になんだか温かいものが込み上げてくるのを感じた。
今まで一度も、この行為を好きだと、気持ちいいと思ったことはないけれど、お姉ちゃんのためだったらどんなことでもできる気がした。
これは本当は好きな人とする行為だと、何度もエリザちゃんに言い聞かされてきたから知っている。
私はお姉ちゃんが好き。お姉ちゃんが大好きだから、胸の中が温かくなり、なぜか切ない気持ちになるのだろう。
お姉ちゃん。私が生まれた時から、いつもそばにいてくれた。お母さんがいなくて寂しくて泣いた時、抱きしめてくれた。お姉ちゃんが好き。
私のせいでこんなことになって、お姉ちゃん、本当にごめんなさい。だけどこれからは、私が絶対にお姉ちゃんを守るから。私がお姉ちゃんの苦しみも痛みも全部背負うから。
「ハナちゃん、本当に、ダメ……! こんなこと、おかしいよ……! エリザちゃん、もう、やめさせて……!」
「ハナちゃん、嫌だったらやめていいよ。代わりに私がするから」
「ダメ」
私は振り返りもしなかった。今はお姉ちゃんに集中したい。
「ダメだって。お姉ちゃん」
エリザちゃんが呆れたように言った。
私は無視してお姉ちゃんの割れ目を何度も舐める。舌の付け根が疲れて痛い。いつまでそうしていればいいのか分からない。けれど、何時間でもずっと舐め続けると決めていた。
私の舌が、ぴちゃぴちゃと水の音を立てる。
私の唾液だけじゃなく、お姉ちゃんの体液も溢れてきて、私の顔は、お姉ちゃんの割れ目は、びちゃびちゃに濡れていた。
私の舌で、エリザちゃんは気持ちいいと言ったり、喜んだりはしていたけど、本心というよりも、私を従わせることを楽しんで、従うのに満足しているような感じだった。
けれどお姉ちゃんは感じてくれているのだろうか。私がお姉ちゃんの割れ目の花弁や傘を被った突起を舐めると体を震わせ、甘い声を漏らす。
「ダメ……ハナちゃん……あっ……ダメ、もう……ああっ──」
声を震わせて切なげな声でお姉ちゃんは泣いていた。
不意にお姉ちゃんが腰を浮かせて、突き出してきた。もっと深く、そう言っている気がして、私は頑張って顔を押しつけた。私の顔の半分がお姉ちゃんの中に沈む。お姉ちゃんの温度が、匂いが、愛おしかった。
「ああああっ──」
一際高い声をあげると、お姉ちゃんは大きく背中をそらして、ベッドに足を深く沈めると、私の顔に腰を強く押しつけてきた。
そしてお姉ちゃんはおしっこを漏らした。
「んんっ……」
口の中に、生温かい液体が勢いよく放水されて、さすがに私は驚いて口を離した。その代わり顔いっぱいにそれを受けた。目に入りそうで思わず目をつぶってしまった。
それをエリザちゃんが笑っていた。
「よかったね、お姉ちゃん。ハナちゃんにイかせてもらえて」
イった、ということは、お姉ちゃんは気持ちいいと思ってくれた、感じてくれたということだろうか。私の舌でお姉ちゃんが喜んでくれた、そう思うと嬉しかった。
目を開くと、お姉ちゃんの顔は涙で濡れていて、鼻が詰まって、むせたように泣いていた。息が苦しそうで、大きく胸を上下させて、引きつったように体が震えていた。
「お姉ちゃん、平気……?」
苦しそうにも見えるけれど、お姉ちゃんの肌はしっとりと汗ばんで、かすかに赤みが差して火照っているようだった。
もう一度、私はお姉ちゃんの股の間に顔を沈める──
「ハナちゃん、ストップ」
私はお姉ちゃんの股の間に顔を沈めようとすると、エリザちゃんが止める。私は慌ててエリザちゃんを振り返る。次はエリザちゃんがするつもりなのだろうか。
エリザちゃんは楽しそうに微笑んでいた。
「イったばかりだよ。ハナちゃんって、意外と鬼だよね」
それはエリザちゃんにだけは言われたくなかった。
「ね、お姉ちゃん。次はお姉ちゃんがハナちゃんにしてあげて」
「え──」
今度はお姉ちゃんに、私がされる。そう思うと、変な気持ちになった。
お姉ちゃんは涙に濡れた顔をくしゃくしゃにした。
「何を、させるつもりなの……?」
「お姉ちゃんはそのままじっとしてて。ハナちゃん、裸になって」
私はエリザちゃんに素直に従う。エリザちゃんには逆らうだけ無駄で、逆らえば、もっとひどいことになるのが分かっているから。
下着を脱ぐと、シミができていた。
「しっかり濡れてるね」
エリザちゃんが楽しそうに言った。それに私は恥ずかしくなった。お姉ちゃんのを舐めている時、私の下半身も、股の間がむず痒くなる感じがした。いつの間にか、私も少し漏らしてしまったようだった。
「それじゃお姉ちゃんの顔にまたがって」
「え……?」
どうまたがったらいいのだろうか。お姉ちゃんの両腕は拘束され、横に広げられている。
私はお姉ちゃんの頭の方から回り込んで、お姉ちゃんの体を見下ろす形で、顔の横に膝をついて、ゆっくりと腰を下ろした。
「ハナちゃん……」
お姉ちゃんが弱々しく私の名前を呼んだ。ほかにも何か言おうとしたのかもしれないけれど、私のあそこがお姉ちゃんの唇に触れて塞いだから分からなかった。
「んっ……」
お姉ちゃんの弾力のある唇。お姉ちゃんの唇が、今私のあそこに触れていると思うと、少し触れただけなのに、私はおしっこが漏れそうになった。それにお姉ちゃんの息が私のお尻の穴に触れてくすぐったかった。私は今、お姉ちゃんにお尻の穴まで見られている。
あそこがむずむずと痒く、切なく、熱くなってくる。
「お姉ちゃん……」
思わず私の口から漏れてしまった。
エリザちゃんが怖いから、逆らえないからとはいえ、私はお姉ちゃんにこんなことをしてしまっている。
私がエリザちゃんに素直に従っているのは、お姉ちゃんに対して、少し怒っているからかもしれない。
お姉ちゃんがお金のために、エリザちゃんとこんなことをしていたこと。何も相談してくれなかったこと。私に黙っていたこと。
そのことが悲しくて悔しくて、その気持ちをどうしたらいいのか分からなくて、それで私はこんなことをしてしまっているのかもしれない。そんな気がした。
「ほら、お姉ちゃん。ハナちゃんのを舐めてあげて。早くしないと、私がハナちゃんとしちゃうよ」
お姉ちゃんの舌が、私の割れ目に触れた。温かくて、濡れた感触が私の内側をなぞる。
「あっ、ん……お姉ちゃん……」
体がお姉ちゃんの舌に反応した。熱いものが私の下半身に滲んでくる。
エリザちゃんに何度もされたことがあるけれど、全然違う感じがした。
私は腰が抜けそうになって、お姉ちゃんの頭を潰してしまわないよう、必死に堪える。
その私を支えてくれたのはエリザちゃんだった。エリザちゃんは私と向かい合うように、お姉ちゃんの体をまたいで膝をつき、私の両肩を支える。
エリザちゃんは嬉しそうに、楽しそうに微笑んでいた。
「ハナちゃん、気持ちいいの? お姉ちゃんにしてもらえて」
「うん……」
素直に答えたのは、エリザちゃんが今までしてきたこと、今もしていることに対する抗議の気持ちがあった。
お姉ちゃんと違って、エリザちゃんにされたことは気持ちよくない。
そのつもりだったけれど、エリザちゃんは少しも気づいている様子はなかった。
エリザちゃんは私の肩に置いた手を首の後ろに回して、顔を近づけて、キスをしてきた。
「ハナちゃん……」
エリザちゃんがその琥珀色の瞳を細めて、生温い息を漏らしながら、私の名前を呼んだ。
私は最悪な気持ちになった。お姉ちゃんを感じたいのに、お姉ちゃんで感じているのに、エリザちゃんの唇が、舌が、私の中に入り込んでくる。
「んっ……ん……」
私はエリザちゃんを押しのけようと、彼女の薄い胸に、その肋に手をかけたけれど、本当に押しのけるのは怖くてできなかった。
エリザちゃんの舌なんて感じたくないけれど、お姉ちゃんに割れ目の中や輪郭をなぞられて、むず痒いような痺れが背中を駆け上がって、大嫌いなエリザちゃんの舌が私の口の中を這いずり回って、頭の中がぐちゃぐちゃにかき回されている気分だった。
私は目をつぶり、キスしている相手はお姉ちゃんだと思うようにした。
お姉ちゃん、好き。お姉ちゃん──
お姉ちゃんに上も下も舌で責められている、そんな矛盾した妄想を、必死に自分に言い聞かせた。
そのせいか分からないけれど。お姉ちゃんの舌が突くように、私の突起を舐めると、針に刺されて、そこに電気でも流されたような、痛みとも違う何かが私の中を駆け上がって、頭の中に星が散った。
「あ、お姉ちゃん……! お姉ちゃん……!」
私は膝で立っていることができず、エリザちゃんに体重を預ける。その私の体を、エリザちゃんの細い体は力強く支えてくれた。
「ああああっ──」
私の体がびくびくと震える。お腹の下に溜まっていた熱いものが、一気に溢れ出した。
私はお姉ちゃんの顔におしっこをしてしまった。
苦しそうにお姉ちゃんがうめいている声が聞こえるけれど、私にはどうすることもできなかった。
お姉ちゃん、ごめんなさい……ごめんなさい──
頭の中で何度も謝った。それ同じ数だけ、お姉ちゃんが好きだと想った。
私は体の震えが治まらず、息も乱れていて、自分で立ち上がることも、体を支えることもできなくて、エリザちゃんの体にすがりついていた。その私の背中にエリザちゃんが手を回して、私を抱きしめて耳元で囁く。
「これで私たち、本当に姉妹だね」
もうよく分からなかった。
姉妹なら、本当はこんなことをするのだろうか。私たちが知らなかっただけで。
そんなわけがないのに、そう思えば、少しは気持ちが楽になれたかもしれない。
* * *
もう夕方だったけれど。
夏至を過ぎて、まだこの時間でも空は明るかった。
私たちは手をつないで帰った。
お姉ちゃんの手は、私より少しだけ大きくて、指が長い。綺麗な手で、その手で頭をなでられたり、抱きしめられたり、触れてもらえることが嬉しかった。
けれど今は、その冷たい乾いた手を、もしも離してしまったら、このままどこかにお姉ちゃんが消えてしまうような、もしも離されたら、もう姉妹ではいられないような気がして怖かった。
「お姉ちゃん……ごめんなさい……」
「なんで、ハナちゃんが謝るの……?」
「私のせいで……お姉ちゃんまで……」
お姉ちゃんは立ち止まって、少し身をかがめて、私のことを抱きしめてくれた。
「ハナちゃんのせいじゃないよ……私が……私が悪いの……」
私は涙があふれてきて、うまく息ができなかった。お姉ちゃんも泣いていた。
「ごめんね……ハナちゃんごめんね……」
違う。私がエリザちゃんと出会ってしまったから。私なんかが生まれてきてしまったから。お姉ちゃんは何も悪くないのに。
私たちはずっと、一日中、三人で互いのあそこを舐めたり、指を入れたり、いろんなことをした。目の前でエリザちゃんがお姉ちゃんにキスをした時は、胸が締めつけられるように痛かった。
そしてエリザちゃんは、私たちが姉妹でしているところを撮影していた。
「姉妹でこんなことしてるの、ママが知ったら悲しむだろうな。もしもネットに出回ったら、たとえ引っ越しても逃げられないね」
もうこの世界のどこにも逃げ場なんてなかった。
どうすればよかったのだろう。
どうすればお姉ちゃんを助けることができたのだろう。
私が拘束を解いて一緒に逃げれば──そんなことはできないとすぐ諦めてしまった。
エリザちゃんの言いなりにならないで、私が拒めば──そうしたらエリザちゃんがお姉ちゃんに何をするのか分からない。
エリザちゃんは二重にも三重にも私を追い詰めてくる。
どうして私なんだろう。どうしてエリザちゃんは、私に、お姉ちゃんにこんなことをするのだろう。
エリザちゃんは恋人とか、姉妹とか、口にするけれど、私の知っている意味とは違うような、まったく別の言葉のように思えた。
エリザちゃんがこれで満足したとは思えない。また三人で、それかお姉ちゃんと二人で、あんなことをするつもりなのは分かる。
けれどお姉ちゃんのことは、私が守る。
エリザちゃんに、加藤さんを殺せと言われたら、加藤さんを殺す。自殺しろと言われたら、自殺する。
絶対に私がお姉ちゃんを守る。
私はお姉ちゃんの手を強く握り返した。
私はお姉ちゃんの足の間にうずくまって、赤く潤んだ肉の割れ目に口づけをする。綺麗な紅色の花に、口を沈めて、蜜を吸うような気分だった。
「あっ──」
お姉ちゃんから甘く掠れた声が漏れた。それに私はどきりとした。
悪いことをしている、取り返しのつかないことをしている。けれど私がしなければ、エリザちゃんがお姉ちゃんに、どんなひどいことをするか分からない。
私がお姉ちゃんを守る──私はお姉ちゃんの、割れ目の内側に舌を這わせる。
「あんっ……やっ……ハナちゃん……」
私の舌がお姉ちゃんの花弁に沿って舐めるたび、お姉ちゃんの体が切なく震えた。
「ハナちゃん、やだ……もう、やめて……こんなこと──」
お姉ちゃんの声は涙でうわずっていた。ただどこか甘い響きがあって、それに私は、後ろ暗い気持ちだけでなく、胸の中になんだか温かいものが込み上げてくるのを感じた。
今まで一度も、この行為を好きだと、気持ちいいと思ったことはないけれど、お姉ちゃんのためだったらどんなことでもできる気がした。
これは本当は好きな人とする行為だと、何度もエリザちゃんに言い聞かされてきたから知っている。
私はお姉ちゃんが好き。お姉ちゃんが大好きだから、胸の中が温かくなり、なぜか切ない気持ちになるのだろう。
お姉ちゃん。私が生まれた時から、いつもそばにいてくれた。お母さんがいなくて寂しくて泣いた時、抱きしめてくれた。お姉ちゃんが好き。
私のせいでこんなことになって、お姉ちゃん、本当にごめんなさい。だけどこれからは、私が絶対にお姉ちゃんを守るから。私がお姉ちゃんの苦しみも痛みも全部背負うから。
「ハナちゃん、本当に、ダメ……! こんなこと、おかしいよ……! エリザちゃん、もう、やめさせて……!」
「ハナちゃん、嫌だったらやめていいよ。代わりに私がするから」
「ダメ」
私は振り返りもしなかった。今はお姉ちゃんに集中したい。
「ダメだって。お姉ちゃん」
エリザちゃんが呆れたように言った。
私は無視してお姉ちゃんの割れ目を何度も舐める。舌の付け根が疲れて痛い。いつまでそうしていればいいのか分からない。けれど、何時間でもずっと舐め続けると決めていた。
私の舌が、ぴちゃぴちゃと水の音を立てる。
私の唾液だけじゃなく、お姉ちゃんの体液も溢れてきて、私の顔は、お姉ちゃんの割れ目は、びちゃびちゃに濡れていた。
私の舌で、エリザちゃんは気持ちいいと言ったり、喜んだりはしていたけど、本心というよりも、私を従わせることを楽しんで、従うのに満足しているような感じだった。
けれどお姉ちゃんは感じてくれているのだろうか。私がお姉ちゃんの割れ目の花弁や傘を被った突起を舐めると体を震わせ、甘い声を漏らす。
「ダメ……ハナちゃん……あっ……ダメ、もう……ああっ──」
声を震わせて切なげな声でお姉ちゃんは泣いていた。
不意にお姉ちゃんが腰を浮かせて、突き出してきた。もっと深く、そう言っている気がして、私は頑張って顔を押しつけた。私の顔の半分がお姉ちゃんの中に沈む。お姉ちゃんの温度が、匂いが、愛おしかった。
「ああああっ──」
一際高い声をあげると、お姉ちゃんは大きく背中をそらして、ベッドに足を深く沈めると、私の顔に腰を強く押しつけてきた。
そしてお姉ちゃんはおしっこを漏らした。
「んんっ……」
口の中に、生温かい液体が勢いよく放水されて、さすがに私は驚いて口を離した。その代わり顔いっぱいにそれを受けた。目に入りそうで思わず目をつぶってしまった。
それをエリザちゃんが笑っていた。
「よかったね、お姉ちゃん。ハナちゃんにイかせてもらえて」
イった、ということは、お姉ちゃんは気持ちいいと思ってくれた、感じてくれたということだろうか。私の舌でお姉ちゃんが喜んでくれた、そう思うと嬉しかった。
目を開くと、お姉ちゃんの顔は涙で濡れていて、鼻が詰まって、むせたように泣いていた。息が苦しそうで、大きく胸を上下させて、引きつったように体が震えていた。
「お姉ちゃん、平気……?」
苦しそうにも見えるけれど、お姉ちゃんの肌はしっとりと汗ばんで、かすかに赤みが差して火照っているようだった。
もう一度、私はお姉ちゃんの股の間に顔を沈める──
「ハナちゃん、ストップ」
私はお姉ちゃんの股の間に顔を沈めようとすると、エリザちゃんが止める。私は慌ててエリザちゃんを振り返る。次はエリザちゃんがするつもりなのだろうか。
エリザちゃんは楽しそうに微笑んでいた。
「イったばかりだよ。ハナちゃんって、意外と鬼だよね」
それはエリザちゃんにだけは言われたくなかった。
「ね、お姉ちゃん。次はお姉ちゃんがハナちゃんにしてあげて」
「え──」
今度はお姉ちゃんに、私がされる。そう思うと、変な気持ちになった。
お姉ちゃんは涙に濡れた顔をくしゃくしゃにした。
「何を、させるつもりなの……?」
「お姉ちゃんはそのままじっとしてて。ハナちゃん、裸になって」
私はエリザちゃんに素直に従う。エリザちゃんには逆らうだけ無駄で、逆らえば、もっとひどいことになるのが分かっているから。
下着を脱ぐと、シミができていた。
「しっかり濡れてるね」
エリザちゃんが楽しそうに言った。それに私は恥ずかしくなった。お姉ちゃんのを舐めている時、私の下半身も、股の間がむず痒くなる感じがした。いつの間にか、私も少し漏らしてしまったようだった。
「それじゃお姉ちゃんの顔にまたがって」
「え……?」
どうまたがったらいいのだろうか。お姉ちゃんの両腕は拘束され、横に広げられている。
私はお姉ちゃんの頭の方から回り込んで、お姉ちゃんの体を見下ろす形で、顔の横に膝をついて、ゆっくりと腰を下ろした。
「ハナちゃん……」
お姉ちゃんが弱々しく私の名前を呼んだ。ほかにも何か言おうとしたのかもしれないけれど、私のあそこがお姉ちゃんの唇に触れて塞いだから分からなかった。
「んっ……」
お姉ちゃんの弾力のある唇。お姉ちゃんの唇が、今私のあそこに触れていると思うと、少し触れただけなのに、私はおしっこが漏れそうになった。それにお姉ちゃんの息が私のお尻の穴に触れてくすぐったかった。私は今、お姉ちゃんにお尻の穴まで見られている。
あそこがむずむずと痒く、切なく、熱くなってくる。
「お姉ちゃん……」
思わず私の口から漏れてしまった。
エリザちゃんが怖いから、逆らえないからとはいえ、私はお姉ちゃんにこんなことをしてしまっている。
私がエリザちゃんに素直に従っているのは、お姉ちゃんに対して、少し怒っているからかもしれない。
お姉ちゃんがお金のために、エリザちゃんとこんなことをしていたこと。何も相談してくれなかったこと。私に黙っていたこと。
そのことが悲しくて悔しくて、その気持ちをどうしたらいいのか分からなくて、それで私はこんなことをしてしまっているのかもしれない。そんな気がした。
「ほら、お姉ちゃん。ハナちゃんのを舐めてあげて。早くしないと、私がハナちゃんとしちゃうよ」
お姉ちゃんの舌が、私の割れ目に触れた。温かくて、濡れた感触が私の内側をなぞる。
「あっ、ん……お姉ちゃん……」
体がお姉ちゃんの舌に反応した。熱いものが私の下半身に滲んでくる。
エリザちゃんに何度もされたことがあるけれど、全然違う感じがした。
私は腰が抜けそうになって、お姉ちゃんの頭を潰してしまわないよう、必死に堪える。
その私を支えてくれたのはエリザちゃんだった。エリザちゃんは私と向かい合うように、お姉ちゃんの体をまたいで膝をつき、私の両肩を支える。
エリザちゃんは嬉しそうに、楽しそうに微笑んでいた。
「ハナちゃん、気持ちいいの? お姉ちゃんにしてもらえて」
「うん……」
素直に答えたのは、エリザちゃんが今までしてきたこと、今もしていることに対する抗議の気持ちがあった。
お姉ちゃんと違って、エリザちゃんにされたことは気持ちよくない。
そのつもりだったけれど、エリザちゃんは少しも気づいている様子はなかった。
エリザちゃんは私の肩に置いた手を首の後ろに回して、顔を近づけて、キスをしてきた。
「ハナちゃん……」
エリザちゃんがその琥珀色の瞳を細めて、生温い息を漏らしながら、私の名前を呼んだ。
私は最悪な気持ちになった。お姉ちゃんを感じたいのに、お姉ちゃんで感じているのに、エリザちゃんの唇が、舌が、私の中に入り込んでくる。
「んっ……ん……」
私はエリザちゃんを押しのけようと、彼女の薄い胸に、その肋に手をかけたけれど、本当に押しのけるのは怖くてできなかった。
エリザちゃんの舌なんて感じたくないけれど、お姉ちゃんに割れ目の中や輪郭をなぞられて、むず痒いような痺れが背中を駆け上がって、大嫌いなエリザちゃんの舌が私の口の中を這いずり回って、頭の中がぐちゃぐちゃにかき回されている気分だった。
私は目をつぶり、キスしている相手はお姉ちゃんだと思うようにした。
お姉ちゃん、好き。お姉ちゃん──
お姉ちゃんに上も下も舌で責められている、そんな矛盾した妄想を、必死に自分に言い聞かせた。
そのせいか分からないけれど。お姉ちゃんの舌が突くように、私の突起を舐めると、針に刺されて、そこに電気でも流されたような、痛みとも違う何かが私の中を駆け上がって、頭の中に星が散った。
「あ、お姉ちゃん……! お姉ちゃん……!」
私は膝で立っていることができず、エリザちゃんに体重を預ける。その私の体を、エリザちゃんの細い体は力強く支えてくれた。
「ああああっ──」
私の体がびくびくと震える。お腹の下に溜まっていた熱いものが、一気に溢れ出した。
私はお姉ちゃんの顔におしっこをしてしまった。
苦しそうにお姉ちゃんがうめいている声が聞こえるけれど、私にはどうすることもできなかった。
お姉ちゃん、ごめんなさい……ごめんなさい──
頭の中で何度も謝った。それ同じ数だけ、お姉ちゃんが好きだと想った。
私は体の震えが治まらず、息も乱れていて、自分で立ち上がることも、体を支えることもできなくて、エリザちゃんの体にすがりついていた。その私の背中にエリザちゃんが手を回して、私を抱きしめて耳元で囁く。
「これで私たち、本当に姉妹だね」
もうよく分からなかった。
姉妹なら、本当はこんなことをするのだろうか。私たちが知らなかっただけで。
そんなわけがないのに、そう思えば、少しは気持ちが楽になれたかもしれない。
* * *
もう夕方だったけれど。
夏至を過ぎて、まだこの時間でも空は明るかった。
私たちは手をつないで帰った。
お姉ちゃんの手は、私より少しだけ大きくて、指が長い。綺麗な手で、その手で頭をなでられたり、抱きしめられたり、触れてもらえることが嬉しかった。
けれど今は、その冷たい乾いた手を、もしも離してしまったら、このままどこかにお姉ちゃんが消えてしまうような、もしも離されたら、もう姉妹ではいられないような気がして怖かった。
「お姉ちゃん……ごめんなさい……」
「なんで、ハナちゃんが謝るの……?」
「私のせいで……お姉ちゃんまで……」
お姉ちゃんは立ち止まって、少し身をかがめて、私のことを抱きしめてくれた。
「ハナちゃんのせいじゃないよ……私が……私が悪いの……」
私は涙があふれてきて、うまく息ができなかった。お姉ちゃんも泣いていた。
「ごめんね……ハナちゃんごめんね……」
違う。私がエリザちゃんと出会ってしまったから。私なんかが生まれてきてしまったから。お姉ちゃんは何も悪くないのに。
私たちはずっと、一日中、三人で互いのあそこを舐めたり、指を入れたり、いろんなことをした。目の前でエリザちゃんがお姉ちゃんにキスをした時は、胸が締めつけられるように痛かった。
そしてエリザちゃんは、私たちが姉妹でしているところを撮影していた。
「姉妹でこんなことしてるの、ママが知ったら悲しむだろうな。もしもネットに出回ったら、たとえ引っ越しても逃げられないね」
もうこの世界のどこにも逃げ場なんてなかった。
どうすればよかったのだろう。
どうすればお姉ちゃんを助けることができたのだろう。
私が拘束を解いて一緒に逃げれば──そんなことはできないとすぐ諦めてしまった。
エリザちゃんの言いなりにならないで、私が拒めば──そうしたらエリザちゃんがお姉ちゃんに何をするのか分からない。
エリザちゃんは二重にも三重にも私を追い詰めてくる。
どうして私なんだろう。どうしてエリザちゃんは、私に、お姉ちゃんにこんなことをするのだろう。
エリザちゃんは恋人とか、姉妹とか、口にするけれど、私の知っている意味とは違うような、まったく別の言葉のように思えた。
エリザちゃんがこれで満足したとは思えない。また三人で、それかお姉ちゃんと二人で、あんなことをするつもりなのは分かる。
けれどお姉ちゃんのことは、私が守る。
エリザちゃんに、加藤さんを殺せと言われたら、加藤さんを殺す。自殺しろと言われたら、自殺する。
絶対に私がお姉ちゃんを守る。
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