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5話 かわいそうな私

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 次の瞬間には、私たちは見慣れたお城にいた。ここはその一室で、おそらく彼の私室だろう。前世で、彼が私が過ごしやすいようにと建ててくれた城だ。懐かしい。
「やっと帰ってきたのね」
 私はにこにこ笑っていた。嬉しくて、暖かくて。彼は立ち上がると私の手を引き、大きな椅子に腰掛ける。そして私を抱き抱えると、自分の膝の上に座らせた。
「ちょ、ちょっと」
 ななななな、なにっ。私は驚いて彼の膝から降りようとするのだが、私を抱きしめる彼の腕がそれを許してくれない。
「好きだ、つぼみ」
 思わずピタッと動きが止まる。何と発言すればいいのかわからない。固まってしまう。え、ちょっと待って。そんなの知らないんですけどっ。
「好きだ。もうどこにも行かないでくれ」
 どうし、て。どうしてそんなできないことを言うの。貴方は魔族、私は人間。あまりにも寿命が違いすぎる。貴方はこれからも生き続けるのでしょうけれど、私はあと数十年もすれば死んでしまうのに。私だって一緒にいたいわよ。でも、できないのだから仕方がない。
「と、言うわけだ。俺の寿命を半分こしようか」
「……え」
ちょっと待って、それって……。いやいや、そんなまさか。魔族は結婚した相手と寿命を分け合うって聞いたことがあるけれど、まさかそんな……。
「ダメか」
「えっ、だ、ダメなことないよ」
あ、しまった。私、この流れだと……。
「本当か」
彼の表情がぱああっと明るくなる。
「一生一緒にいような」
やっぱり、プロポーズだったか……。
 別に、彼のことが嫌いなわけではないの。でも、なんて言うかね……。困るもの。彼と国外追放になった私では、身分が違いすぎるし……。いや、でも、魔国での結婚は身分関係はないんだよな。で、でもっ、彼は王様で忙しいし……。あ、でも、前世でも彼が王様みたいなものだったな。
 ……あれ、もしかして、困ること何にもない、とか。
「好きだよ、つぼみ」
 彼は私の頬に優しくキスを落とす。それは、手の甲に演技でしたそれとは全然違って。
 だだだだだめよっ。そんなのいいわけっ……。あれ、でも、急に人間の私が魔王になるとまたややこしいことになるかもしれないし、私が魔国で彼のそばにいるにはこれが一番……。って、彼のそばにいることを一番に考えてる私って、なんなのよっ。
「愛してる」
わ、私どうすればいいのっ。誰か教え、ちょ、ちょっと待って、ほっぺにキスしないでっ。た、助けてえっ。
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