婚約者は魔王様?だから何?

空月 若葉

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2話 新たな婚約者

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 ギリトー様は、自慢げに笑っている。その後ろでエリー様はおろおろと焦った表情でギリトー様と私を交互に見ていた。ああ、変わらないわね、その表情。ゲームで見た貴方達とそっくり。
「オリビア、どういうことなんだ」
お父様が訳がわからないとでも言いたげに私のそばに駆け寄る。確かに、ここで反論しなければ、私が彼女をいじめたという王子様の頭のおかしい証言を事実だと認めることになる。けれど、私はもうそんなことはどうでもよかった。どうせ私はもうこの国からいなくなるのだから。シナリオ通りに、ね。
「オリビア、いいことを教えてやろう」
嬉しそうに醜……少し崩れた顔で笑う王子様は心底嬉しそうだ。どれほど私のことが邪魔だったのだろうか。安心してくださいな、王子様。私は初めから邪魔などしていませんが、これからは関わりさえなくなりますもの。それは貴方が一番よく分かっておいでなのではなくて。
「お前と魔王の婚約が決まった」
思わず笑ってしまいそうになる口元を俯くことで隠す。まるで悔しがっているように見えるが仕方がない。待っていたわ、待っていたの。その言葉を、貴方から聞ける瞬間を。
「この国となるべく身分の高い未婚の女を差し出せと魔王から要求があったらしくてな、そこでお前に白羽の矢が当たったという訳だ」
ええ、知っていますとも。貴方が魔王様に無礼を働いた代わりに、でしょう。こっ酷く叱られたそうなのにどうしてそうも自慢げに話せるのかしら。その自信、私にも分けて欲しいくらいだわ。
「何か言えよ」
あら、私に返事を要求するのね。私の返事、そんなもの決まっているでしょう。
「はい、承知しました」
ありがとう、王子様、エマ様。私を、私達を幸せへと導いてくれて……。

 お父様は泣き崩れ、お母様は体調を崩して寝込み、弟は王宮へ抗議に行くといいお父様に止められる。私は愛されていたのだな、と、心のどこかで温かな何かをぼんやりと感じ取りながら日々は過ぎていった。
 私は魔国に嫁ぐ日が待ち遠しくて、慌ただしく荷物の用意をしたり、自分を磨いたりして過ごしていると家族も何かを察してくれたらしい。お母様はお元気になられたし、お父様と弟は私に笑顔を見せてくれるようになった。
 そして、やってきた。王宮に呼ばれ、馬車に乗り込む。ついにやってきたのだ。私達の、始まりの日が。
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