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3話 目を覚まして
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あなたはどうしたいの。選択肢は一つじゃないはずよ。あの人と結婚したい、それとも……。
ハッと目を覚ます。どうやら私は夢を見ていたようだ。あのまま泣き疲れて眠ってしまったのだろう。なるで子供のようなその行動に、思わず私は自分で笑ってしまいそうになる。
それにしても、自問自答の夢なんて、私はよっぽど追い詰められているのかしら。どうしようもないと感じた時に、私はよくこの夢を見た。鏡合わせのように映った私が私の目を見て問いかけるのだ。あなたはどうしたいの、と。
「おはようございます、姫様。……答えは出そうでしょうか」
その目は夢に出てきた私によく似ていた。真剣な、そしてしっかりしたその目は私の心を揺さぶる。
国民の為を思うなら、国のためを思うなら私は何も言わずに嫁ぐべきなのだろう。多少なめられても、平和のためならきっと私の家族も納得してくれる。
けれど、私はどうしたいのか。アメリアも、夢の中の私も私にそう聞いていた。どうするべきかではなく、どうしたいか、と。そんなの決まっている。婚約破棄だ。私はたとえ政略結婚でも尊敬できる人と結婚したい。愛せる人と結婚したい。それが絶対に無理だとわかっている彼と、結婚したいわけがない。
どの道が正しいのか。私には全くわからなかった。私の家族も、国民も、私1人犠牲になればなどと思う人は1人もいないだろう。けれどもし戦争になったら。戦争は理不尽な理由で起こるものだ。だった1人でも、国民が傷つくのが怖い。守れるものなら守りたい。
「姫様ー」
何人もの声が聞こえる。いつか聞いた民達の声だ。ついに幻聴まで聞こえるようになってしまったのだろうか。
「姫様ー」
あれ。まだ聞こえる。まさか、と思いアメリアの方を振り返る。アメリアは一つの小さな手鏡を私の方に向けて立っていた。その鏡には私ではなく、大切な大切な故郷の仲間達が映っている。
「姫様、おはようございますー」
「おはようございますー」
沢山の映りきらないほどの国民達が鏡の向こう側から私に話しかける。どうやらこの鏡はアメリアの実家の家宝の、転移魔法がかけられた鏡のようだ。転移魔法で映像を転移させることで遠いところにいる人同士が話をできる。そういうマジックアイテムだったはずだ。
「姫様が我々を大切に思ってくださるのは嬉しいです」
代表なのか、一番前に立っている男が大きな声で叫ぶ。実際にこっちに届く声は本当に小さなものなのが少し可愛らしく見える。
「ですが、我々も姫様のことが大切なんです」
涙がこぼれ出るかと思った。絶対に忘れてはいけないことを忘れていた。私は大切にするだけではなく、大切にされているということ。
ありがとう。どうしてもお礼が言いたくて口を開いた時、鏡は彼らではなく私を映した。
「効果が切れたようです」
残念そうな声でそう言ったアメリアだけれど、その顔は満足そうだった。
ハッと目を覚ます。どうやら私は夢を見ていたようだ。あのまま泣き疲れて眠ってしまったのだろう。なるで子供のようなその行動に、思わず私は自分で笑ってしまいそうになる。
それにしても、自問自答の夢なんて、私はよっぽど追い詰められているのかしら。どうしようもないと感じた時に、私はよくこの夢を見た。鏡合わせのように映った私が私の目を見て問いかけるのだ。あなたはどうしたいの、と。
「おはようございます、姫様。……答えは出そうでしょうか」
その目は夢に出てきた私によく似ていた。真剣な、そしてしっかりしたその目は私の心を揺さぶる。
国民の為を思うなら、国のためを思うなら私は何も言わずに嫁ぐべきなのだろう。多少なめられても、平和のためならきっと私の家族も納得してくれる。
けれど、私はどうしたいのか。アメリアも、夢の中の私も私にそう聞いていた。どうするべきかではなく、どうしたいか、と。そんなの決まっている。婚約破棄だ。私はたとえ政略結婚でも尊敬できる人と結婚したい。愛せる人と結婚したい。それが絶対に無理だとわかっている彼と、結婚したいわけがない。
どの道が正しいのか。私には全くわからなかった。私の家族も、国民も、私1人犠牲になればなどと思う人は1人もいないだろう。けれどもし戦争になったら。戦争は理不尽な理由で起こるものだ。だった1人でも、国民が傷つくのが怖い。守れるものなら守りたい。
「姫様ー」
何人もの声が聞こえる。いつか聞いた民達の声だ。ついに幻聴まで聞こえるようになってしまったのだろうか。
「姫様ー」
あれ。まだ聞こえる。まさか、と思いアメリアの方を振り返る。アメリアは一つの小さな手鏡を私の方に向けて立っていた。その鏡には私ではなく、大切な大切な故郷の仲間達が映っている。
「姫様、おはようございますー」
「おはようございますー」
沢山の映りきらないほどの国民達が鏡の向こう側から私に話しかける。どうやらこの鏡はアメリアの実家の家宝の、転移魔法がかけられた鏡のようだ。転移魔法で映像を転移させることで遠いところにいる人同士が話をできる。そういうマジックアイテムだったはずだ。
「姫様が我々を大切に思ってくださるのは嬉しいです」
代表なのか、一番前に立っている男が大きな声で叫ぶ。実際にこっちに届く声は本当に小さなものなのが少し可愛らしく見える。
「ですが、我々も姫様のことが大切なんです」
涙がこぼれ出るかと思った。絶対に忘れてはいけないことを忘れていた。私は大切にするだけではなく、大切にされているということ。
ありがとう。どうしてもお礼が言いたくて口を開いた時、鏡は彼らではなく私を映した。
「効果が切れたようです」
残念そうな声でそう言ったアメリアだけれど、その顔は満足そうだった。
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