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10話 オリビアの意思
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私、私は。魅了魔法をかけられていたとしても、正直アーロン様のことを許せるとは思えない。私がミア様に暴言を吐いたのは事実だし、アーロン様のことも愛してはいなかった。こちらにも非があり、あのままアーロン様と結婚していても得することは特になかったかもしれない。王妃の座はきついものだとよく知っているつもりだから。
何が言いたいのかというと、要するに……。国のためを思うならなんとかしてあげたい。でも誰がどうやって。ライアンにさせるの。それにそうしたらきっと私はあの場所に引き戻されて、許せないあの人と結婚することになって……。嫌だ。今まで結婚が嫌だなんて思ったことはなかった。それも貴族の務めだと思っていたから。でも、嫌だ。なんで、どうして嫌なの。許せないから。ううん、違う。そうじゃない。それじゃあ、どうして。
「ねえ、オリビア」
ライアンは優しく笑っていた。2人で話している間も、私が考え込んでいん間も、ライアンは私の手をずっと握ったままで。その手はどこか安心する力強さで。ライアンの目はしっかり私を見ていた。私は心の底から安堵して。
「どうやってそうするか、とか、その後のこととかは考えなくていいよ。今、オリビアがどうしたいのかだけ教えて」
勇気なんてこれっぽっちも必要なかった。口から言葉がすらすらと溢れ出る。
「魅了魔法を解いてアーロン様を助けたい」
ライアンは黙ったまま静かに頷いた。
明日の朝、王子様にかけられた魅了魔法を時に行こう。その時間なら向こうは夕方だ。そのために今日は早くお休み。そう言ってくれたライアンと私は別れ、メイドさんに部屋へ案内してもらった。そこはとても豪華な部屋で、それなのに全体的にどこか落ち着きのある部屋だった。
ベッドに音を立てないように静かに座りひとりため息をつく。どこか寂しいような気がしてしまって。眠れないまま時間が過ぎていく。窓から外を覗くと大きな月が出ていた。たとえ国が違っても月はいつも変わらない。涙がぽろりとこぼれ出る。気が付けば私は泣いていた。不安なのだろう。怖いのだろう。……怖かったのだろう。
コンコンコン。扉からノックの音がして振り返る。先程のメイドさんだろうか。
「オリビア。俺、ライアン。開けていい」
え、ら、ライアン。もう寝てしまったものだと思っていた私は驚いて立ち上がった。涙を拭い、扉の方に急足で歩み寄り扉を開ける。
「どうぞ、入って」
よーく考えれば女性の部屋の中に男性を招き入れるなどどうかと思うのだが入れてしまったものは仕方がない。私は涙に濡れた袖を密かに背中の後ろに隠した。
何が言いたいのかというと、要するに……。国のためを思うならなんとかしてあげたい。でも誰がどうやって。ライアンにさせるの。それにそうしたらきっと私はあの場所に引き戻されて、許せないあの人と結婚することになって……。嫌だ。今まで結婚が嫌だなんて思ったことはなかった。それも貴族の務めだと思っていたから。でも、嫌だ。なんで、どうして嫌なの。許せないから。ううん、違う。そうじゃない。それじゃあ、どうして。
「ねえ、オリビア」
ライアンは優しく笑っていた。2人で話している間も、私が考え込んでいん間も、ライアンは私の手をずっと握ったままで。その手はどこか安心する力強さで。ライアンの目はしっかり私を見ていた。私は心の底から安堵して。
「どうやってそうするか、とか、その後のこととかは考えなくていいよ。今、オリビアがどうしたいのかだけ教えて」
勇気なんてこれっぽっちも必要なかった。口から言葉がすらすらと溢れ出る。
「魅了魔法を解いてアーロン様を助けたい」
ライアンは黙ったまま静かに頷いた。
明日の朝、王子様にかけられた魅了魔法を時に行こう。その時間なら向こうは夕方だ。そのために今日は早くお休み。そう言ってくれたライアンと私は別れ、メイドさんに部屋へ案内してもらった。そこはとても豪華な部屋で、それなのに全体的にどこか落ち着きのある部屋だった。
ベッドに音を立てないように静かに座りひとりため息をつく。どこか寂しいような気がしてしまって。眠れないまま時間が過ぎていく。窓から外を覗くと大きな月が出ていた。たとえ国が違っても月はいつも変わらない。涙がぽろりとこぼれ出る。気が付けば私は泣いていた。不安なのだろう。怖いのだろう。……怖かったのだろう。
コンコンコン。扉からノックの音がして振り返る。先程のメイドさんだろうか。
「オリビア。俺、ライアン。開けていい」
え、ら、ライアン。もう寝てしまったものだと思っていた私は驚いて立ち上がった。涙を拭い、扉の方に急足で歩み寄り扉を開ける。
「どうぞ、入って」
よーく考えれば女性の部屋の中に男性を招き入れるなどどうかと思うのだが入れてしまったものは仕方がない。私は涙に濡れた袖を密かに背中の後ろに隠した。
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