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5話 はぐれた少年

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 威圧的にならないように少し屈んでもう一度問いかけた。
「何かお困りですか」
さっき町の人から地図を買ったから道案内ならなんとかなるかもしれない。あとは私のこの世界で勉強して得た知識をフル活用して……それでもどうにもならなかったらどうしようか。そんなことを考えても仕方がないのはわかっているのだが。いつもそうだ。声をかけてから心配になる。声をかけてしまってからでは遅いのに。
「じ、実は友達とはぐれちゃって……」
その少年は太陽のように笑って首を傾げた。確かにここは王城に近い発達している町だから人が多い。はぐれたとしてもおかしくない。
「はぐれたって……市場のあたりかしら」
相手が敬語を使ってこなかったのでそれに合わせて少し軽い口調で話す。市場のあたりは確か人が多かったからはぐれたとするならばあそこだろう。
「そう、だと思う。人に流されて、迷って……そのうちに気がついたらここにいたんだ」
迷った、ということは私と同じくこの町に来るのは初めてか、あまりこないのだろう。知らない町ではぐれるなんて私なら怖いだろうし、焦るだろうな。そう考えると、私はスイッチが入ったように強気になって今までの不安なんてどこかに飛んでいってしまったように笑った。
「お連れさん、どんなを格好してるの」
ニコッと笑顔で問いかけると少年は金色の髪をした男性で、青色のシャツを着ていると答えた。それならかなり目立つだろうから、すぐに見つかるだろう。
「わかったわ。じゃあ、探しにいきましょう」
私はベンチに座ったままの彼に手を差し出した。2人で探せばそんな目立ちそうな人なんてすぐに見つかるだろう。
 彼は少し驚いたような顔をしたけれどすぐに笑って私の手を両手で包み込んだ。
「俺、ライアン。君は」
……。
「……どうかしたの」
……はっ。なんだろう。あたたかいものにに触れたからだろうか。なんだか顔が熱くなった、というか、どこかに飛んでいきそうだったというか……。
「ごめんなさい。なんでもないわ」
私はもう片方の手を彼に添えると少し赤くなったほおを少し気にしながらもまた笑った。
「初めまして。オリビアよ」
私が笑うと彼も楽しそうに嬉しそうに笑った。彼をぐいっと引き上げると私たちは市場に向かって歩き出した。
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