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2話 逃がさないわよ
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それがあったからだろうか。私にとって王子の婚約者、未来の王妃の座は私とって馬鹿みたいに大切な椅子になっていた。それがないと私に価値はない。きっとそう言われて育ったせいだろう。
だから私は自分の婚約者に近づいた彼女に攻撃した。暴言を吐くくらいしかしなかったのは偉かったけれど何度も泣かせてしまった。そのせいで私は明日、婚約破棄される。
彼女というのは、このゲームのヒロインの男爵令嬢、ミア様。彼女はいいな。ゲームのヒロインというだけでなんでも手に入るのだから。
「……ミア様、あなたは私から最後の椅子さえも奪うのね」
私と仲良くしてくれた友人でさえも、明日には私を責め立てることを私は知っている。それなのに、あなたは友人だけでなく、婚約者だけでなく私の居場所を奪うのね。
今からでは婚約破棄はどう頑張っても避けられないだろう。明日のアーロン様の17歳の誕生日に私との婚約が破棄され、お2人が婚約なされることは決まった未来なのだから。今からでは、どうにもならない。わかってはいるのに。心だけは、抵抗をやめない。
これは華織の記憶ではなく、オリビアの心が怒っているのだろう。許せない、攻撃しないとって。
「やめなさいよ、オリビア。どうにもならないわ」
婚約を破棄されてしまったら私に期待していた両親は私に興味を持たなくなるだろう。それどころか、以前以上に酷い扱いをするかもしれない。いっそのこと逃げようか。世界の裏にでも逃げてしまおうか。……それも、いいかもな。よし、逃げよう。明日婚約破棄をされたら、すぐに逃げよう。両親にとって価値のない存在になればきっと誰も私のことを探さない。そうなってから、逃げてしまおう。平民として生きていくのもいい。華織はお姫様でもお嬢様でもなんでもなかったのだから、きっとやっていける。
私は笑顔を作ってみた。明日は婚約破棄をされるためのパーティーに行こう。アーロン様の誕生日を祝いにパーティーに行くのではなく、婚約破棄されに行こう。私は平民になるのだから。逃げられないなら、いっそのことこっちから言ってやろう。
「逃がさないわよ、婚約破棄さん」
私はニヤッと笑った。令嬢には相応しくない、悪役令嬢にこそふさわしい笑顔だ。けれどもうそんなことどうでもいい。大丈夫。明日もきっと泣かないわ。泣くのは全て終わってからでも遅くないじゃない。私は静かに目を閉じた。
だから私は自分の婚約者に近づいた彼女に攻撃した。暴言を吐くくらいしかしなかったのは偉かったけれど何度も泣かせてしまった。そのせいで私は明日、婚約破棄される。
彼女というのは、このゲームのヒロインの男爵令嬢、ミア様。彼女はいいな。ゲームのヒロインというだけでなんでも手に入るのだから。
「……ミア様、あなたは私から最後の椅子さえも奪うのね」
私と仲良くしてくれた友人でさえも、明日には私を責め立てることを私は知っている。それなのに、あなたは友人だけでなく、婚約者だけでなく私の居場所を奪うのね。
今からでは婚約破棄はどう頑張っても避けられないだろう。明日のアーロン様の17歳の誕生日に私との婚約が破棄され、お2人が婚約なされることは決まった未来なのだから。今からでは、どうにもならない。わかってはいるのに。心だけは、抵抗をやめない。
これは華織の記憶ではなく、オリビアの心が怒っているのだろう。許せない、攻撃しないとって。
「やめなさいよ、オリビア。どうにもならないわ」
婚約を破棄されてしまったら私に期待していた両親は私に興味を持たなくなるだろう。それどころか、以前以上に酷い扱いをするかもしれない。いっそのこと逃げようか。世界の裏にでも逃げてしまおうか。……それも、いいかもな。よし、逃げよう。明日婚約破棄をされたら、すぐに逃げよう。両親にとって価値のない存在になればきっと誰も私のことを探さない。そうなってから、逃げてしまおう。平民として生きていくのもいい。華織はお姫様でもお嬢様でもなんでもなかったのだから、きっとやっていける。
私は笑顔を作ってみた。明日は婚約破棄をされるためのパーティーに行こう。アーロン様の誕生日を祝いにパーティーに行くのではなく、婚約破棄されに行こう。私は平民になるのだから。逃げられないなら、いっそのことこっちから言ってやろう。
「逃がさないわよ、婚約破棄さん」
私はニヤッと笑った。令嬢には相応しくない、悪役令嬢にこそふさわしい笑顔だ。けれどもうそんなことどうでもいい。大丈夫。明日もきっと泣かないわ。泣くのは全て終わってからでも遅くないじゃない。私は静かに目を閉じた。
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