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107話

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 冬菜は何故かニコニコしながらこちらを見ている。嫉妬してしまったのがバレたのだろうか。だとしたら、少し恥ずかしい。
「雪菜って可愛いよねー」
 何を言っているのか意味がわからない。急にそんなことを言われる理由もわからないし、私のどこが可愛いのかも全く理解できない。どちらかと言うと、私はしっかりした性格の持ち主だと思っているのだが。……ほんとうに、からかわないでほしい。
「で、それでさー」
 あっ、流された。不満の意味も込めて視線を送ると、冬菜はニヤニヤ笑って私に視線を送り返す。ちょっとイラっとはするけど、許せてしまうんだよなあ、これが。
「どうして私たちを呼んだのか、聞いてもいい」
 冬菜はやっと本題に話を進めた。冬菜が余計なことを言うから、吹き出してしまいそうで怖くなり、お茶に手が出せなかったのだが、もう大丈夫だろう。
 私はお茶を一口飲むと、フレンの方に視線を向けた。集まった視線にフレンは少し戸惑いながらも、ゆっくりと何が起こっているのかを説明してくれた。
「察していると思うけれど、ここは魔国よ。ここで今、大変なことが起こっているの」
 とても深刻な顔で、何かを心配するような顔でフレンは言う。フレンはゴクリ吐息を飲み、重たい空気が漂う。かなり深刻な状況であることが、フレンの表情から伝わってくる。
「……流行病よ」
 流行病。その言葉に、私達は耳を疑った。そんなに大きな事件なのに、どうして私達は今までそのことを知らなかったのだろうか。情報が遮断されるようなところにいたわけでは、決してないのに。
 疫病とも言われるそれは、魔国で流行っているものがどんなものかはよくわからないが、危険な物であることには変わりはない。私は冬菜と顔を見合わせた。お互いに頷く。やらなくてはいけないことは、決まっている。どんな流行病にしろ、とにかくエラをここから逃さなくてはいけない。それに、私もだ。私だって、聖女とは言え人間なのだ。精霊である、病気にならない彼女達とは違うのだ。
「ああ、ごめんね、安心して。移るものではないのよ」
 私達の表情の変化に気が付いたのか、フレンが慌てて付け加える。流行病なのにうつらないとは、どう言う意味なのだろうか。
「正確には、流行病とされている、魔力失調なのよ」
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