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68話

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 フィーが王様のそばで王様のことを探っている間、私達は部屋からフィーの念話を聞いていた。
 スィーは先ほどからボーッとしていて、話しかけても返事がない。今はそっとしておいたほうがいいだろう。
 イーサン様に話してしまおうか、迷っているのだろうか。……話してしまっても、いいと思う。イーサン様は、いい人だ。誰かに友人の秘密を簡単に話してしまう人には思えない。信用してくれているなら、信用しているなら、話してしまっても。
スノー。私、やったわ。いいもの見つけちゃった。
 突然思考に入り込んできたフィー驚くも、すぐに平静を取り戻して、私は笑顔を作った。何を見つけたのだろうか。
日記、王様の日記よ。そっちに持って行ってもいいかしら。
え、流石にそれは良くな
いいわよ、持ってきて。
 私の考えを遮るように冬菜が念話を発した。私にもあえて聴こえるようにしたのだろうか。
「雪菜、気持ちはわかるけれど、気にすることないわよ。この国のためなんだから」
 冬菜も全く罪悪感を案じていないわけではないのだろう。少し悲しそうな顔で、私を元気付けるように冬菜は笑った。
 けれど、私は思う。国のためなら、正義のためなら、何でもしていいわけではないと。正義のために、踏み躙られる人がいていいわけないと。王様は、何も悪いことをしていないのに、日記を見られるなんて可哀想な。
 仕方ないとも思う。国の、いつかは世界に関わる問題なのだから。いつまでも引っ張るわけには、いかないのだから。
「おかえり、フィー」
 冬菜の声を顔を上げると、ふよふよと浮いている本が見えた。どうやらフィーが魔法で浮かせているらしいそれは、王様の日記帳には素朴なものだった。
「早速読みましょうか」
 本が急に現れたこの現象にも、護衛の兵達は顔色一つ変えない。けれど、内心驚いているはずだ。もう、退出させてあげればいいのに。薄々気が付いているんじゃないかしら、精霊がいるんじゃないかって。案外、幽霊だと思っているかもしれないけれど。
 フィーはその日記帳を私の膝の上に下ろした。どうやら、私が読まなくてはならないらしい。それにしても、大丈夫なのかしら。従者達の前で主人である王様の日記を読むなんて。……怒られない、わよね。
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