悪役令嬢、まさかの聖女にジョブチェンジ!?

空月 若葉

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50話

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 少しゆっくりめに歩くと、エラの息もだんだん落ち着いてきて、エラはもう大丈夫と言うように私に笑いかけた。感謝の意もこもっているのかもしれない。
 城が近づいてくる。それにつれて、仲間の緊張感も増していった。冬菜達が言うには、魔力の量が一定以上から増えないらしい。精霊にしては少なすぎると言うその魔力は、人間のものにしては多く、私たちを混乱させた。けれど、冬菜にはわかったようだ。この魔力は、水の五大精霊のもので間違いないと。
 魔力は、それぞれ個性がある。得意な属性があったり、不得意な属性があったり、量だったり、質だったり。全く同じものなど何一つない。それが魔力だ。
 冬菜は前に、水の五大精霊にあっている。そのときに感じた魔力の質と同じだと判断したのだろう。
 いよいよ城の前までやってきた私達は、閉じている門の前で止まった。どうやって進もうか。精霊達は羽があるが、私たちにはない。やっぱり、魔法の出番だろうか。
 お城の中に入ったことのある人は、私たちの中では誰もいない。転移魔法は使えないだろう。
どうやって入るの。
 心の中で、念を飛ばすように話しかけると、冬菜が私の方を振り返った。
私たちが先に入って、魔法で転移させるわ。
 私たちの体重を軽くして、4人に運んでもらうのもありなのだろうが、途中で何かにぶつかって音でもしては大変だ。後から行く方がいいだろう。
 高い高い城壁に、冬菜達の姿が消えていく。小さなゼラ達が見えなくなって、次に冬菜が壁に隠れて見えなくなる。
 4人のことが心配なのか、エラが不安げな様子で小さくなっていく4人を見上げていた。
お姉ちゃん。私、足手まといなのかな。
頭の中に、エラの声が響く。悲しげな目で、エラは私に訴えかけていた。
 歩くことさえままならない体。病み上がりでほぼないに等しい必要な知識。それだけを考えれば、エラは確かに足手まといかもしれない。けれど。
エラちゃん、大丈夫だよ。エラちゃんは賢いんだから、みんな頼りにしてるよ。
 エラは小さくニコッと笑う。安心させてあげることができたのかはわからないが、笑ってくれただけでもよしとしよう。
 エラは賢い子だ。10歳でテレパシーが使えることが、その証拠だ。私もそれなりに魔法は使えるが、精霊に囲まれて育つエラはもっと多くのことを吸収するだろう。私ももっといろんなことを知っていて、役に立てていると思えたらいいのに。今からでも、頑張るしかないが。
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