悪役令嬢、まさかの聖女にジョブチェンジ!?

空月 若葉

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48話

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 ゆっくり目を開けると、目の前に大きな目があった。
「わっ」
 思わず大きな声を出して後ろにはね退くと、口からボコッと何か泡のようなものが出てくる。
 先程目があったのは魚のようだ。それも、かなり大きな魚。なんと言う名前なのだろうか。あまり見たことのない種類だ。
 一瞬のうちに光景が変わっているこの現象には、いつも驚かされる。魚がいる、と言うことはここはもう海の中ということなのだろうから。
 人魚達は海水でも淡水でも生きていけるそうだが、広さの問題で川ではなく海の中に国を作ったらしい。移動の面でも、いろいろな場所や国につながっている海の方が都合が良かったのだろう。それに、川は流されやすい。泳ぎの得意な人魚でも、子供や病気の人魚は流れの早いところであれば流されてしまうかもしれない。
「どうかしたの、スノー」
 ランが心配そうに私の顔を覗き込む。私が急に声を出したから、驚かせてしまったのだろう。
「ごめんね。目の前に魚がいて、びっくりしちゃって」
 よく見ると、ランの羽はいつもよりゆっくり動いている。きっと水中だから、たくさん羽を動かさなくても浮いていられるのだろう。
 どうやら今回も私達は路地裏に出たようだ。少し広めだけれど、この人数でいると少し狭い。早く出てしまおう。
「こっちよ」
 フィーの誘導に従いついていくと、開けた道に出た。そこは明るく、たくさんの人魚や種族が楽しそうに道を通過している。泳ぐ人魚に、足のある歩く種族。この世界でなければ見られなかった光景だろう。
「じゃあ、あの子を探しにいきましょうか」
 冬菜はスタスタと迷いなく歩き出す。もう他の精霊の気配を見つけたのだろうか。私達も冬菜について進む。冬菜はどんどん進んでいって、私達は黙ってついていくのが精一杯だった。
 そんなに友達に会えるのが楽しみなのだろうかと、冬菜の顔を覗き込んでみる。すると、冬菜はどこか焦ったような顔をしていたのだ。まさか、水の五大精霊に何かあったのだろうか。
 冬菜は何も言わない。けれど、その表情が緊急事態であることを告げていた。エラや精霊達も何かを察したようで、必死になって早足で歩く冬菜に食らいつくようについていく。
 どのくらい進んだか、しばらくした頃に冬菜はぴたりととまった。ついたのだろうか。
「あそこよ、あの子がいるのは」
 そう言って冬菜が指さしたのは、人魚達の集まる場所であり、国の中心的存在。城、だった。
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