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40話
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冬菜がにこにこしながら頷くと、エラは嬉しそうに私達の前に座った。少し緊張している様子で、けれど楽しそうにエラはいう。
「私、旅をしてみたい。みんなで」
旅。そんな選択肢もあるのか。私は笑顔でエラの提案に応えた。
私達の事情を見ても、悪くはないと思う。一つの場所に留まらなければ、私の正体はバレにくいだろうし、エラにとっても旅は大きな勉強になるだろう。世界の状況、たくさんの文化、働き方。いろんなところに行けば行くほど、たくさん学べることが増えるはずだ。心配なのはお金のことくらいだろうか。
「いいわね。どう思う、雪菜とその友人さん」
エラのいうみんなとは、どうやら冬菜だけでなく私や小さな火の精霊さんも含まれているようだ。なんだか少し嬉しい。仲間だと認めてもらえるのは、やっぱり喜ばしいことだ。
「いいと思うわ」
「私もいいよー」
私の肩にとまる精霊さんが、はーい、とでも言うように手を上げて笑う。
「でも、それなら森にいる2人も連れて行きたいなあ」
少し懐かしそうに火の精霊は笑う。つい最近のことなのに、私もなんだか懐かしく感じるな。
「ねえ、そのことなんだけど」
冬菜が小さく手を挙げる。何か提案があるのだろうと、冬菜に向き直ると、冬菜は当然のことを言うように笑った。
「3人に名前をつけてあげたらどうかしら」
私は少し驚いて冬菜を見つめた。確かあの子達が言うには、精霊は高位の精霊か、聖女、つまり私と契約した精霊しか名前を名乗ってはいけないはずだ。それなのに、名前をつけてあげるとは……どう言うことだろうか。
「えっと、私と契約するってこと」
訳がわからずに聞いてみるも、冬菜と精霊さんはぶんぶんと首を横に振る。
「違うわよ。聖女が契約できる精霊は1人だけだもの」
確かに、たくさんの精霊と契約していたら、その分魔力量も増えるのかもしれないし、そうなれば聖女1人で世界を滅ぼせるほどの力を持ててしまう。それを防ぐためなのかもしれない。
要するに、私の契約できた精霊は、あの小さな白い精霊だけと言う訳だ。けれど、今回、あの子のおかげで魔力も増え、呪いを解くのに役に立ったのだから感謝しないと。
「それなら、どうやって」
私が小さく首を傾げて尋ねると、冬菜はニヤリと笑ってお母さん指を立てた。
「愛称よ」
「私、旅をしてみたい。みんなで」
旅。そんな選択肢もあるのか。私は笑顔でエラの提案に応えた。
私達の事情を見ても、悪くはないと思う。一つの場所に留まらなければ、私の正体はバレにくいだろうし、エラにとっても旅は大きな勉強になるだろう。世界の状況、たくさんの文化、働き方。いろんなところに行けば行くほど、たくさん学べることが増えるはずだ。心配なのはお金のことくらいだろうか。
「いいわね。どう思う、雪菜とその友人さん」
エラのいうみんなとは、どうやら冬菜だけでなく私や小さな火の精霊さんも含まれているようだ。なんだか少し嬉しい。仲間だと認めてもらえるのは、やっぱり喜ばしいことだ。
「いいと思うわ」
「私もいいよー」
私の肩にとまる精霊さんが、はーい、とでも言うように手を上げて笑う。
「でも、それなら森にいる2人も連れて行きたいなあ」
少し懐かしそうに火の精霊は笑う。つい最近のことなのに、私もなんだか懐かしく感じるな。
「ねえ、そのことなんだけど」
冬菜が小さく手を挙げる。何か提案があるのだろうと、冬菜に向き直ると、冬菜は当然のことを言うように笑った。
「3人に名前をつけてあげたらどうかしら」
私は少し驚いて冬菜を見つめた。確かあの子達が言うには、精霊は高位の精霊か、聖女、つまり私と契約した精霊しか名前を名乗ってはいけないはずだ。それなのに、名前をつけてあげるとは……どう言うことだろうか。
「えっと、私と契約するってこと」
訳がわからずに聞いてみるも、冬菜と精霊さんはぶんぶんと首を横に振る。
「違うわよ。聖女が契約できる精霊は1人だけだもの」
確かに、たくさんの精霊と契約していたら、その分魔力量も増えるのかもしれないし、そうなれば聖女1人で世界を滅ぼせるほどの力を持ててしまう。それを防ぐためなのかもしれない。
要するに、私の契約できた精霊は、あの小さな白い精霊だけと言う訳だ。けれど、今回、あの子のおかげで魔力も増え、呪いを解くのに役に立ったのだから感謝しないと。
「それなら、どうやって」
私が小さく首を傾げて尋ねると、冬菜はニヤリと笑ってお母さん指を立てた。
「愛称よ」
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