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18話
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バタバタと誰かが扉に駆け寄ってくる音がしたかと思えば、扉が勢いよく開く。
「こんにちは。それと、はじめまして、聖女さん」
赤と金のグラデーションの長い髪の毛を持つ彼女は、とても精霊とは思えないくらい人間に近い見た目をしている。明るさと優しさを兼ね備えたその笑顔は、囂々と燃える太陽のように光り輝いていた。
「初めまして、クロエ・ホワイトゼラニウムです」
私も負けじと笑顔で対抗するも、彼女の光のような笑顔の前では無力だ。
「さ、2人とも入って」
私と同じぐらいの背たけを持つ彼女の家は、私にちょうどいい。けれど、私の友達の火の精霊にとっては大きすぎるだろう。
この家の持ち主に招かれて家の中に入ると、中にはテーブルや椅子などがあり、まるで人間達の暮らす普通の家だ。違うところがあるとすれば、木製のものが何もないというところだろうか。机や椅子でさえ、プラスチックのような何かでできているのだから、もう気になって仕方がない。
「座って待っててね」
進められるがままに椅子に座ると、小さな火の精霊は、テーブルの上に置かれた四角の置物のうえに腰を下ろす。体が小さくても共に快適に暮らせるように、この家にはいろいろな仕掛けがあるようだ。私たちが入ってきたドアがそのいい例だろう。あの扉はどんな大きさでも入れるように3つほどドアが取り付けられていた。私は一番大きなドアを使ったわけだが、小さな精や生き物でも入れるように、かなり小さな扉もあった。
キッチンと思われる方を覗くと、先程そこに入っていった大きな火の精霊がお茶を入れていた。指先から火を出して直接ポットを熱している。精霊の力にも色々な使い道があるということだろう。
「はい、お茶が入ったわ」
普通のカップが2つと、指先に乗るのではないかと思うくらいの小さな大きさのカップが1つ。精霊一人一人の大きさに合わせていたら、この家はカップだらけになってしまうことだろう。
お茶に口をつける。甘い匂いを感じ、目を瞑って味と匂いに集中すると、味わったことのない幸福感に包まれた。貴族でも滅多に飲めないほどの高級品なのではないだろうかと思われるほど、それは作品のように美味だった。
「気に入っていただけたようで嬉しいわ」
私の横に座った火の精霊が嬉しそうに笑う。彼女のお気に入りのお茶をいれてくれたのだろう。これも精霊達が生み出した物なのだろうか。
すごいなあと感心させられる。人間の国なんかよりよっぽど進んでいるのではないだろうか。様々な体の大きさや力を持った精霊がいるのに、差別することなく仲間を受け入れている。まさに道徳に忠実な理想の国なのではないだろうか。
「こんにちは。それと、はじめまして、聖女さん」
赤と金のグラデーションの長い髪の毛を持つ彼女は、とても精霊とは思えないくらい人間に近い見た目をしている。明るさと優しさを兼ね備えたその笑顔は、囂々と燃える太陽のように光り輝いていた。
「初めまして、クロエ・ホワイトゼラニウムです」
私も負けじと笑顔で対抗するも、彼女の光のような笑顔の前では無力だ。
「さ、2人とも入って」
私と同じぐらいの背たけを持つ彼女の家は、私にちょうどいい。けれど、私の友達の火の精霊にとっては大きすぎるだろう。
この家の持ち主に招かれて家の中に入ると、中にはテーブルや椅子などがあり、まるで人間達の暮らす普通の家だ。違うところがあるとすれば、木製のものが何もないというところだろうか。机や椅子でさえ、プラスチックのような何かでできているのだから、もう気になって仕方がない。
「座って待っててね」
進められるがままに椅子に座ると、小さな火の精霊は、テーブルの上に置かれた四角の置物のうえに腰を下ろす。体が小さくても共に快適に暮らせるように、この家にはいろいろな仕掛けがあるようだ。私たちが入ってきたドアがそのいい例だろう。あの扉はどんな大きさでも入れるように3つほどドアが取り付けられていた。私は一番大きなドアを使ったわけだが、小さな精や生き物でも入れるように、かなり小さな扉もあった。
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「はい、お茶が入ったわ」
普通のカップが2つと、指先に乗るのではないかと思うくらいの小さな大きさのカップが1つ。精霊一人一人の大きさに合わせていたら、この家はカップだらけになってしまうことだろう。
お茶に口をつける。甘い匂いを感じ、目を瞑って味と匂いに集中すると、味わったことのない幸福感に包まれた。貴族でも滅多に飲めないほどの高級品なのではないだろうかと思われるほど、それは作品のように美味だった。
「気に入っていただけたようで嬉しいわ」
私の横に座った火の精霊が嬉しそうに笑う。彼女のお気に入りのお茶をいれてくれたのだろう。これも精霊達が生み出した物なのだろうか。
すごいなあと感心させられる。人間の国なんかよりよっぽど進んでいるのではないだろうか。様々な体の大きさや力を持った精霊がいるのに、差別することなく仲間を受け入れている。まさに道徳に忠実な理想の国なのではないだろうか。
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