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16話
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しばらく3人について歩いていると、急に森がなくなって山のようなものが現れた。その山には草が生えていて、それなりに大きい。
「あら、説明してなかったわね」
驚いて足を止めた私を見て、3人がくすくす笑う。精霊達の住む森は精霊の森というくらいだから、全体が森なのかと思っていたが、どうやら違うようだ。
「私たちの住処は、この山を中心に森が広がっていてね」
火の精霊が黄緑色の山を指さす。山には木は一本も生えていない。
「山の下の方に5つ入口があって、それぞれの属性の精霊の住処につながっているの。ほら、あれよ」
水の精霊が指さした先には、洞穴のような空洞があって、奥へ繋がっている。あれが入り口の一つらしい。
「5つの住処は、全て奥の精霊王の部屋へと繋がっているの。そこには入らないように気をつけてね」
木の精霊が注告するような真剣な目で私を見る。よっぽど重要なことなのだろう。
「まあ、精霊王様と契約するか、五大精霊様全員に認めてもらわないと、精霊王様の部屋の扉を開けられないから、無理だとは思うけれど」
火の精霊がそう言って元気に笑うと、水と木の精霊も安心したように優しく笑った。
精霊王の部屋は王の部屋なだけあって、ある程度は守られているらしい。人間のように城中に護衛の人間を置くよりはプライバシーも守られて、いい方法だ。強いていうならば、部屋の外に出ている時に、王を守るものが何も無くなってしまうことは問題かもしれない。
「精霊王様のお部屋もそうだけれど、私たちの住処はかなり頑丈な作りになっているの」
それはいい。私は風の精霊さんに相槌を打つ。
防衛の面で考えても、部屋が頑丈であることに越したことはない。頑丈で特定のものしか開けられない扉でできた精霊王の部屋は、もし敵が来てもいい砦になることだろう。
「あ、ここよ。火の精霊の住処は」
火の精霊が嬉しそうに私達の目の前まできた大きな穴を指さす。穴の中は真っ暗で何も見えない。
「じゃあ、私達は自分の住処に帰るわね」
水の精霊と風の精霊は私たちからゆっくり遠ざかっていく。何度も何度も振り返っては、私達に向かって手を振り、別れを惜しむその姿はなんだか可愛らしい。
「この中は火の精霊に適した環境になっているから、他の精霊には向かないのよ」
火の精霊が羽を日の光でキラキラと輝かせながらそう言って、穴の中に入っていく。私は置いていかれないようにと、少し怖い気持ちを握りつぶして慌てるように中に入った。
「あら、説明してなかったわね」
驚いて足を止めた私を見て、3人がくすくす笑う。精霊達の住む森は精霊の森というくらいだから、全体が森なのかと思っていたが、どうやら違うようだ。
「私たちの住処は、この山を中心に森が広がっていてね」
火の精霊が黄緑色の山を指さす。山には木は一本も生えていない。
「山の下の方に5つ入口があって、それぞれの属性の精霊の住処につながっているの。ほら、あれよ」
水の精霊が指さした先には、洞穴のような空洞があって、奥へ繋がっている。あれが入り口の一つらしい。
「5つの住処は、全て奥の精霊王の部屋へと繋がっているの。そこには入らないように気をつけてね」
木の精霊が注告するような真剣な目で私を見る。よっぽど重要なことなのだろう。
「まあ、精霊王様と契約するか、五大精霊様全員に認めてもらわないと、精霊王様の部屋の扉を開けられないから、無理だとは思うけれど」
火の精霊がそう言って元気に笑うと、水と木の精霊も安心したように優しく笑った。
精霊王の部屋は王の部屋なだけあって、ある程度は守られているらしい。人間のように城中に護衛の人間を置くよりはプライバシーも守られて、いい方法だ。強いていうならば、部屋の外に出ている時に、王を守るものが何も無くなってしまうことは問題かもしれない。
「精霊王様のお部屋もそうだけれど、私たちの住処はかなり頑丈な作りになっているの」
それはいい。私は風の精霊さんに相槌を打つ。
防衛の面で考えても、部屋が頑丈であることに越したことはない。頑丈で特定のものしか開けられない扉でできた精霊王の部屋は、もし敵が来てもいい砦になることだろう。
「あ、ここよ。火の精霊の住処は」
火の精霊が嬉しそうに私達の目の前まできた大きな穴を指さす。穴の中は真っ暗で何も見えない。
「じゃあ、私達は自分の住処に帰るわね」
水の精霊と風の精霊は私たちからゆっくり遠ざかっていく。何度も何度も振り返っては、私達に向かって手を振り、別れを惜しむその姿はなんだか可愛らしい。
「この中は火の精霊に適した環境になっているから、他の精霊には向かないのよ」
火の精霊が羽を日の光でキラキラと輝かせながらそう言って、穴の中に入っていく。私は置いていかれないようにと、少し怖い気持ちを握りつぶして慌てるように中に入った。
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