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5話 え?急展開なんですけど!?

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 カキーン。金属同士がぶつかったようなその音に、私は目を開けた。すくなくとも、私に刺さった音ではない。恐る恐る顔を上げると、そこには見覚えのある服に、美しい髪が見えた。
 私は思わず、ここにいるなんてありえないはずのあの子の名前を呟く。
「ノ……ア……」
 私は安心してしまったのか、ヘナヘナとその場に座り込んだ。まだ安心できる状況ではないと言うのに、味方をしてくれる人が来たと言うだけで、私は力が抜けてしまったらしい。
「そこにいて、イザベラ」
 いつもとは全然違う、男らしい声に、私は涙が出てきそうだった。剣を携え、悪に立ち向かうその姿は、理想の王子様そのものだ。
「カミラ、まさかここまでするとは思わなかったよ」
 カミラ様の握っていたナイフは、孤独な誰かを表すように、静かに下に落ちている。ノアの持つ剣の剣先は、ゆっくりカミラ様の方へ向けられた。カミラ様は何を思っているのか、笑っている。
「……バカな王子様。そう予想していたから、ここにいるのでしょう」
 まるで納得したような、何かを悟ったような、そんな顔でカミラ様は笑っていた。バタバタと駆け込んできた兵に連れられてカミラ様が部屋を出た時、カミラ様は無邪気に笑う少女のような顔で楽しそうに笑って、私に言った。幸せになりなさい。そう、一言だけ。

 カミラ様が部屋を出て、扉が閉められたのを、私は呆然と見守っていた。何が起こっているのか、全くわからなかったのだ。
「……ごめん、イザベラ」
 ノアに声をかけられて、やっと現実に戻ってきたように、はっとする。ノアの方を見上げると、ノアは申し訳なさそうな顔で私に手を差し出していた。
 その手を取り、立ち上がると、ふわっとほおを何かが撫でた。……ノアの髪の毛だ。私は、剣を地面に捨て去ったノアに、抱きしめられていた。
 そこで私はようやく理解した。今回のことは、仕組まれたことだったのだ。カミラ様のやってきたことは、婚約破棄をするには十分だが、王女の座を降りてもらうには不十分だ。だから、私を利用して、殺人未遂の罪を作り出した。だからカミラ様はあんな顔でわらって、ノアも謝って……。
 確かに怖かったけど、天使に抱きしめてもらえるとか、役得だよねえ……。呑気なことを考えている私は、気がつかなかった。ノアの顔が、すぐそこまで迫ってきていることに。
 音もせずに、唇と唇が触れ合う。えっ、えっ、何が起こってるの。
「安心してよ、イザベラ。僕、ちゃあんと責任取るから、僕から離れたら嫌だよ」
 えっ、何その怖い顔……こんな可愛すぎる悪魔、見たことないんですけど。あれ、もしかして、流されてるの、私。責任取るってどう言う。
 いや、あの、無視してキスを続けないでもらえますか。ねえっ、あのっほらっ、ちょっと待ってえー。
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