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1話 我儘な私
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お腹が空きましたわね、今日のお昼ご飯はなにかしら。そんなことを考えながら私は家庭教師から逃げ回っていた。勉強が嫌で逃げる私と、どこまでも追ってくる家庭教師。今度はどんな理由をつけて首にしてやろうかしら。考えていることがひどいことなのはわかっていたが、どうしてもやめられないのが我儘というものだ。
私のお父様とお母様は私をとても愛してくれていた。愛しているが故に、2人は私のためになんでもしてくれる。私もそれがわかっているので私はいつも我儘を言って周りにいる人達を困らせていた。今日はどんな我儘を言ってやろうかと悩んでいると誰かが私の腕を掴んだ。驚いて振り返ると、眼鏡をかけた女の人。私の先生だった。
「捕まえましたよ。さあ、お勉強をしましょうね」
息を切らしながら彼女は私の腕をしっかりと掴んでいた。もう笑顔を作る体力も残っていないようで、参ったとでも言いたげな表情をしている。
「全く、どこかの王子様は勉強好きで大変素晴らしい方だというのに、うちのお嬢様ときたら……」
いまだに息が整わない先生はそう言いながら眼鏡をグイッと持ち上げた。
そこで私はピーンときてしまったのだ。王子様、確かその王子様は。
「先生。その王子様はまだ婚約されていらっしゃらないのですか」
私がそう尋ねると、先生は驚いたような表情をしながらこくりとうなずいた。よーし、次の我儘は決まったわね。
夜、お父様がお仕事から帰ってこられて夕食の準備が始められた頃。
「お父様、お父様。お願いがありますの」
私の姿を見た途端、お父様の硬い表情が一気に柔らかくなる。
「どうしたんだい。なんでも言ってごらん」
デレデレと今にも溶けそうになりながら私の体を持ち上げる。そして頬擦りをしてきた。ジョリジョリと当たるヒゲの感触が、私は少しだけ好きだ。
「私、王子様と結婚したいんですの」
私はまだ婚約もしていないのにそう自慢げに語った。
「それはどうして」
お父様は少しショックを受けていた。自分の大切な娘を誰かの嫁にやるなんて、考えたくもないのだろう。
「私の将来のためですわ。私、将来は王妃様になりたいんですの」
王妃様になれば贅沢な暮らしが送れる。私はそんな生活を夢見ていたのだ。
「ああ、わかったよ。王様にお願いしてみようね」
そう言って私を下ろしたお父様の声は、本当に寂しそうだった。
私のお父様とお母様は私をとても愛してくれていた。愛しているが故に、2人は私のためになんでもしてくれる。私もそれがわかっているので私はいつも我儘を言って周りにいる人達を困らせていた。今日はどんな我儘を言ってやろうかと悩んでいると誰かが私の腕を掴んだ。驚いて振り返ると、眼鏡をかけた女の人。私の先生だった。
「捕まえましたよ。さあ、お勉強をしましょうね」
息を切らしながら彼女は私の腕をしっかりと掴んでいた。もう笑顔を作る体力も残っていないようで、参ったとでも言いたげな表情をしている。
「全く、どこかの王子様は勉強好きで大変素晴らしい方だというのに、うちのお嬢様ときたら……」
いまだに息が整わない先生はそう言いながら眼鏡をグイッと持ち上げた。
そこで私はピーンときてしまったのだ。王子様、確かその王子様は。
「先生。その王子様はまだ婚約されていらっしゃらないのですか」
私がそう尋ねると、先生は驚いたような表情をしながらこくりとうなずいた。よーし、次の我儘は決まったわね。
夜、お父様がお仕事から帰ってこられて夕食の準備が始められた頃。
「お父様、お父様。お願いがありますの」
私の姿を見た途端、お父様の硬い表情が一気に柔らかくなる。
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デレデレと今にも溶けそうになりながら私の体を持ち上げる。そして頬擦りをしてきた。ジョリジョリと当たるヒゲの感触が、私は少しだけ好きだ。
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「それはどうして」
お父様は少しショックを受けていた。自分の大切な娘を誰かの嫁にやるなんて、考えたくもないのだろう。
「私の将来のためですわ。私、将来は王妃様になりたいんですの」
王妃様になれば贅沢な暮らしが送れる。私はそんな生活を夢見ていたのだ。
「ああ、わかったよ。王様にお願いしてみようね」
そう言って私を下ろしたお父様の声は、本当に寂しそうだった。
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