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路傍の人
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イサムは駅前のロータリーを歩いているが、誰も彼に興味を示さない。有名人というわけでもないし、ルックスに何の特徴もない初老の男性なのだから当然だろう。三十年間ずっと家に引きこもっていたのだが、「自立しなさい、当面の食料やお金は置いていくから」と書かれた置手紙を残してイサムの両親は消滅した。何から何まで親に頼りっぱなしだったイサムにとって、他人への過度な依存心は牢として抜きがたいものだったので、今後の生活に恐怖を感じたことを覚えている。しばらくは家にある食料で腹を満たしていたが、とうとう在庫が尽きてしまった。
人生で一度も買い物をしたことがなくコンビニやスーパーに入ることに恐怖を覚えるため、家で調達した食料が尽きた今、イサムが抱えている当面の課題は食料の獲得だった。そのためコンビニに入ろうと何度も試したが、心から湧き出る恐怖には抗えずに素通りせざるを得ない。コンビニに入るより他人とコミュニケーションを取る方が少しはマシなので、誰か自分のために食料調達の労を執ってくれないかとイサムは思うのだが、こちらから頼みもせず実行に移してくれるエスパーとは未だに出会えていない。そして、どうしてか自分から頼もうという気力が湧いてこないのだ。
「このままでは餓死してしまう、誰か助けて」
このセリフを誰かに言えたらとイサムは思う。お金はあるのだから、何割か謝礼を渡せば代わりに食料を購入してくれる人はいるはずだ。しかし、何度も試しては希望を打ち砕かれているので、本当に餓死するまで言えないのでないかという絶望がイサムの心を支配していた。
路傍の人は、そんなイサムの絶望などお構いなしに今日も生きている。
人生で一度も買い物をしたことがなくコンビニやスーパーに入ることに恐怖を覚えるため、家で調達した食料が尽きた今、イサムが抱えている当面の課題は食料の獲得だった。そのためコンビニに入ろうと何度も試したが、心から湧き出る恐怖には抗えずに素通りせざるを得ない。コンビニに入るより他人とコミュニケーションを取る方が少しはマシなので、誰か自分のために食料調達の労を執ってくれないかとイサムは思うのだが、こちらから頼みもせず実行に移してくれるエスパーとは未だに出会えていない。そして、どうしてか自分から頼もうという気力が湧いてこないのだ。
「このままでは餓死してしまう、誰か助けて」
このセリフを誰かに言えたらとイサムは思う。お金はあるのだから、何割か謝礼を渡せば代わりに食料を購入してくれる人はいるはずだ。しかし、何度も試しては希望を打ち砕かれているので、本当に餓死するまで言えないのでないかという絶望がイサムの心を支配していた。
路傍の人は、そんなイサムの絶望などお構いなしに今日も生きている。
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