復讐姫の王国記

朝木 彩葉

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マリたち侍女は入口の扉の前に並んでいた。

サササッと侍女たちの列の両端にそれぞれ移動した私たちは、にやり、と少し黒い笑顔をした顔を見合わせた。

「せぇのっ!」

ガバッと侍女たちの両端から同時に背中側を覗き込むと、そこにシエルがニコニコ立っていた。

「わぁ、みつかっちゃったね。」

「「しえる!みーつけた!」」

そっか!かくれんぼだからってどこか物陰に隠れる必要は無いのね!

「しえる、じょーずね!ひとのうしろにかくれたひと、いままでいなかったわ!」

「ほんと!びっくりしちゃった。」

「ふふふ、ありがとう。
どこに かくれたらいいか、まよってたら、じかんが なくなっちゃったんです。
ぐうぜん、かくれたのが じじょのみんなの うしろだったんだよ。」

わかるわ、そうよね。

思ってたより30秒って短かったもの。

人のお部屋だし、少し気を使うわよね。

「じゃあ、つぎはわたしが、おに するね。
どうする?おそとでやってみる?」

外でなら気を遣わないですむかも。

「さんせい!おそとでしましょう!」

「いいね」

私たちは外にでてかくれんぼをすることにした。








お外で遊ぶとなるといつも中庭だったんだけど、今日はかくれんぼだから隠れるところが多そうな南の庭園に来た。

木々が沢山あって、花壇もあって、隠れる場所がいっぱいだ。

みんなで隠れて見つけて走って笑って、とても楽しい遊びの時間…のはずだったのに。

さて、私はどうしてここにいるのでしょう。

「いやぁー!悪かったな!最近近くに入口出せなくてすまなかった!」

入口とはあの紫のモヤのことだろうか。

ガバガバ笑いながら私を向かい合わせに膝に乗せるのはじい様ことアシム・ルイスエール初代国王陛下…。

「じいさま、どうしてきゅうに わたしをつかまえたのですか。」

そう、なんとかくれんぼの2度目の鬼になってすぐ、走り出した私の足元にあの紫のモヤが現れたのだ。

避けることも止まることも出来なかった私は、スッと穴に落ちていった。

そこにいたのがこのじい様だ。

「 どうしてって、そろそろ寂しがる頃かと思ってな!そうだ、お友達も呼ぶか?」

「え?」

ごめんなさいじい様、寂しくは思ってなかったし、お友達も呼べません。

「お友達!呼ぶのね!」

「それなら俺たちが呼んでくるんだぜ!」

「えっ!?ち、ちょっと!」

いつの間にか現れた妖精コンビがあっという間に消えていった。

「うそぉ…。」

あまりにも唐突すぎて、私の顔はいま無になっているだろう。

「ま、まぁ。あいつらもお前さんが喜ぶと思ってやっちまったんだ。
許せ、とは言わないがその事は分かってやってくれ。」

私の頭を撫でながらじい様はしょうがないなぁという顔をした。

「それに、あの二人は大丈夫だ。
お前さんの一部を教えてやれ。」

「だいじょうぶ…?」

「ああ、大丈夫だ。」

じい様は私の顔を見て優しく微笑んだ。

「「うわぁ?!」」

そこにカーラとシエルがやってきた。

「連れてきたんだぜ!」

「連れてきたわ!」

自信満々の妖精コンビに対して2人はポカンとした顔をして床に座りながらこちらを見ていた。

先に我に返ったのはシエル。

ハッとした顔をして立ち上がるとこちらに歩いてくる。

それを見てカーラも我に返ったのか慌ててこちらに来た。

「ありす、だいじょうぶですか?」

「あ、ありす!そのひとだれ!」

真剣な顔をするシエルと、慌ててじい様に威嚇するカーラ。

「かーら、しえる。だいじょうぶ。」

よしよし、と近寄ってきた2人を撫でる。

シエルはまだ心配そうにこちらを見ている、ほわーんとした顔になったカーラは威嚇なんか忘れてしまったみたい。

「ほら、こいつらなら大丈夫だろ。
味方は増やしとけ、な?」

ワイルドな笑顔をしているけど、私の事を本気で心配していることが分かるその瞳に、固くなっていた体から少し力が抜けた。

真面目な顔をした2人の目を見て言う。

「あのね、このひとは しょだいこくおうへいか なの。」

「えっ!!」

大きな声を上げたカーラと真ん丸な目をしたシエル。

「ほんとにしょだいのへいかなの?!」

「そんなことがあるのですか?」

むむむ?信じていない?

「ほんとだよ。」

「ありすのことはしんじたいとおもっています。
だいじなともだちです。
でも、だからこそ、だまされていたらたすけてあげたいんです。」

心配そうな顔でこちらを見る2人に私もうるうるしてきた。

まずい、いまうるうるすると勘違いされてしまう。

「ちがうの、ほんとうにあしむへいかなの。
そうだ、じいさま。
じいさましか しらないはなしをしてください。」

「おお?いいぞー。
そうだな、いつの話がいい?
建国の時の話か?」

わあ、建国の話が聞けるなんて。

さすが生きた歴史。

うんうん、と頷く私とジト目の2人ににじい様は建国の時の話をしてくれたのだった。
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