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は
しおりを挟むマリがクビにならなくて本当に良かった…!
今度からは心配かけないようにじい様にお願いしなくちゃ。
「殿下!今日は両陛下と一緒に寝られるそうですね!お風呂に入っておきましょうか!」
あ、そうだった。
今日はお母様とお父様とねるんだ。
「うん。はいる。」
「では入りましょう!」
お風呂は別の侍女さんが入れてくれる。
マリはこの間に近くの使用人用のお風呂に入る。
ちなみにご飯の時もそう。
だから私たちはできるだけゆっくり入って、侍女侍従のみなさんが急がなくてもいいようにするの。
のーんびりのーんびり、お風呂に入ったあと保湿とマッサージまでしてもらってだいたい1時間。
用意が出来たらベルを鳴らすとマリが来てくれる。
「殿下!では王妃陛下の寝室に向かいましょう!」
マリとポテポテ歩いていくとお母様がこちらに向かって歩いてきてくれた。
「アリス、いらっしゃい。今日はたくさん抱っこさせてほしいの。いいかしら?」
「はい。」
お母様はわたしをそっと抱き上げた。
「さあ、マリ、今日は疲れたでしょう?
もうおやすみなさいな。
アリスは私が連れていくわ。」
「陛下…ありがとうございます。
では殿下、おやすみなさいませ!」
マリは使用人用の棟にむかっていった。
「さあ、アリス。今日は私が寝かしつけてあげますね。」
ふんふん言いながらお母様はお部屋にむかう。
ガチャリ、と扉を開けてお母様はソファに座った。
私はお母様のお膝の上だ。
「今日は人生で1番ヒヤッとしたわ。
私も小さい頃はよくやんちゃをしたけれど、親ってこんな気持ちになるものなのね。」
「おかあさま…。ごめんなさい。」
「いえいえ、今回はアシム陛下から呼び出されたのよね?仕方がないわ。」
「はい。
…おかあさまも、やんちゃした?」
「ふふふ。お母様はものすっごいお転婆だったわぁ~。」
な、なんですって!
「あら、気になるかしら?
じゃあ私のお転婆だった頃のお話をしましょうか。
そうねぇ、私が8歳の頃だったかしら。
その時に開かれた王宮のパーティーであなたのお父様に出会ったのよ。」
「お父様に!」
「ええ、我が国は大人しい子なら何歳でもパーティーに参加できるでしょ?
でも幼い頃はほんとうにお転婆で、なかなかパーティーに参加できなかったのよ。
でもそのまま8歳まで来てしまって…大抵の子は4,5歳である程度大人しくしていられるじゃない?
これ以上パーティーに参加しないのは変な噂が広まる!と思ったお父様に、大人しくしているようキツく言われて王宮に連れてこられたの。
あなたはここしか知らないから分からないかもしれないけれど、初めて見た王宮は、物語のお城みたいでほんとうに大きくてキラキラして見えたわ。
その日のパーティーは夕方に開かれて、最後は22時頃終わりだったかしら。
大人達は1回はダンスをすべきだとされていたから、お父様とお母様は私を壁際に残してダンスに行ったわ。
絶対にその場から動かないように、
話しかけられたら自己紹介だけして、お父様とお母様は踊っていると伝えなさい、そうしたらダンスの話をしてくださるから!
と色々なことを早口に告げて、最後にもう一度、
ほんとうに動かないで!
と言って踊りに行ったのよね。
何度も何度も2人してこちらを振り返って。
もう、そんなに言わなくてももう8歳なのに。わかるわよ。
とか思っていたわ~。
でもあなたも知っての通り、ダンスが中央でされているということは、サイドにはお菓子や軽食が並んでいるのよ。
私はその時、パーティードレスを着ないといけないから、お昼ご飯を早めに済ませてしまってとてもお腹がすいていたの。
どうしても何か食べたくなった私は、動かないでっていうのは他の場所に行かないでという意味よね!と都合よく解釈して食事のあるテーブルを物色し始めたわ。
給仕を捕まえて軽食を軽食と思えないほどお皿に乗せてサーブしてもらったの。
やっと食べられるわ!と喜んだところにやってきたのがあなたのお父様よ。
『お腹がすいてるの?』
なんて後ろから声をかけてきて。
空いてるから食べようとしてるに決まってるじゃない
って思った頃には遅かったわ。
まん丸に目を開いた彼が目に入ったの。
どうやら口に出してしまっていたみたいね。
もう手遅れだと悟った私は取ってつけたようにごめんなさい、とだけ言って食事にフォークを刺したわ。
『いや、当たり前のことを言ってしまった僕が悪かったね。
お詫びに美味しい料理を紹介するよ。』
と苦笑しながら彼は言って給仕を呼んで料理を渡してくれたわ。
まあ、なんて気が利くのかしら、と思ったことを覚えているわ…。
でも自分ばかり食べるのも申し訳なく感じて来た私は一緒に食べましょうと彼を誘ったのよ。」
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