復讐姫の王国記

朝木 彩葉

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 和やかに食事を済ませてほっと一息ティータイム。

「さて、アリス。今日の話を聞いてもいいかい?」

「はい。」

 ついにきた。

 お父様は給仕をみんな下がらせた。

 でも私は全部正直に答える。
 じい様との話の内容以外…。

「わたしはるーと、なかにわで、ぼーるをなげてあそんでいました。

 とちゅうで うでが つらくなってきたので 、まりになげてもらいました。

 まりがなげたぼーるは、とてもとおくにとんでいったので、るーはおへやにかえってもらって、まりとふたりでさがすことにしました。」

「なるほど。初めはボールを探していたんだね?」

 そうして紫のモヤを見つけたことを話した。

「紫のモヤ…?それは一体なんだい?」

「なかにわの、ひくいきが たくさんうわっているところの かべにくっついてました。」

「あなた、聞いたことはありますか?」

「いや、初めて聞いたね。それで、アリスはどうしたんだい?」

「よくわからないので、まりをよぼうとしました。」

「うんうん。いい子だね。」

「なかにひきずりこまれました。」

「え!?なんだって!?」

「なんてこと!」

 お父様もお母様もとても驚いたお顔をしている。

「それで、しらないあいだにねむっていたみたいです。

 めがさめたらおひざのうえでした。」

「誰のだい!?」

「じいさま…えと、しょだい こくおうへいか です。」

「な、はっ!?」

「あ、あのね、アリス。初代国王のアシム陛下はもうずっと昔に亡くなっているのよ。」

 そうよね…。

「わたしも、ふしぎにおもって きいてみました。

 そしたら へいかは かみのこ だって、いっていました。」

 あたふたしているお母様と固まっているお父様はそのままに、じい様がこの国を作り、亡くなったことにして天に帰った所まで話した。

 あら?お母様まで固まってしまったわ。

「それで、ええと、このくに が だいすき な じいさま は、たまたま わたしをみつけたので、おはなし したくて ひっぱってしまったそうです。」

「…はっ! ええと、その人は、本当にアシム陛下なのかい?偽物ではなく?」

「はい。わたしの ひみつも、しっていました。

 それに つーりと るーじゅ も、あしむへいか を しっていました。」

「ひみつ?それにツーリとルージュとは誰だい?」

「あっ、そうだ。おとうさま と おかあさまには、まだ  つたえていませんでした。

 ようせいに おなまえを つけました。

 おとこのこ が、つーり。

 おんなのこ が、るーじゅ です。」

「あら、いいお名前ね。」

「そうだね…。

 ところでアリス、ひみつ、というのは教えてもらえないのかい?」

「だめです。とうさま。

 ひみつは、ひとにいわないから、ひみつなのです。」

 私は口の前に人差し指でばってんを作った。

「かわっ…!おほん!

 ええと、どうしても、かい?」

「どうしても、です。」

「そうか…。

 父様もアシム陛下にお会いしたいのだけど、可能なのかな?

 それとも今回だけ、特別に呼んで下さっただけで、もう呼んで下さることは無いのかな?」

「ええと、もうあえないとは、いっていませんでした。

 またあえるとおもいます。

 でも、どうやってあえるか わからないので、またむらさきの もや をみつけないとだめかもしれません。」

「そうなんだね。

じゃあ、ひとつだけお願いしてもいいかな。」

「はい。」

「今度、もしアシム陛下にお会いしたら、父様も会いたいと言っていたとお伝えしてくれるかい?」

「アリス、お母様もよ。」

「はい。おふたりとも、もちろんです!」

うんうん、とお父様とお母様は満足気に頷いている。

「そうだ、マリのことを話そうか。」

そうだ!あまりにも和やかだったから聞きそびれたわ。

「まり、どうなりますか…?」

「結論から言うと、2ヶ月お給料が減るだけだよ。」

「わ!よかったです!」

「理由は、
アリスが居なくなったと分かった後の対応が完璧だったから。
また、初代国王陛下が起こしたことで、不可抗力だったから。

それでも何もなしにならなかったのは、アリスを一人で視界の良くない場所に行かせたからだよ。

今回はアシム陛下だったから良かったものの、不審者がいたかもしれないし、危ない虫がいたかもしれない。

たとえ知っている場所でも安全だと信じてはいけないんだよ。」

「なるほど…。

じゃあ、わたしがいきたいっていったから…。」

「そうだね、もちろん いくらアリスのお願いだからって許してしまったマリがいけないけれど、無理やり押し通したアリスもいけないね。」

「はい…。

ごめんなさい。もうだめだと いわれたことは、しません。」

「うん。そうしてくれると父様は安心できるよ。」

父様と母様は私の席に来て2人でぎゅっとてくれた。

そしてティータイムは終わり、私は自分の部屋に帰った。
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