復讐姫の王国記

朝木 彩葉

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ふふんふふん。
私の気分はもう絶好調だ。

滅多にしないら鼻歌なんか歌っちゃって。
るんるんが止まらない。

シエルは飾ると言っていたけれど私はもうずっと手で持っている。

寝る時も布団に持って入るし、ご飯も机に置いて食べる。

友達との思い出のキーホルダーがこんなにも嬉しいなんて。

ちなみに私は黄色、カーラは赤、シエルは青を選んだ。

みんなとおそろい!とても幸せ!

でもそろそろ現実に戻らなければ…。
私はこれからお父様とお母様に話しに行かなければならない。

はあ~。

「ん?なんか急に静かになったんだぜ?」

「ほんとね、どうしてなの?」

「あなたたちのことをおとうさまにつたえにいかないといけないからよ。」

「「うっ」」

「ついにバレるんだぜ…!?」

「ああっ!私の自由がぁー。」

はぁ、とため息をつきながらむんずと2人を掴む。逃げるからね。

「な、なんてことをするんだぜ!?」

「どうして掴むの?!」

「にげないでね。」

でも痛くないでしょ?ものすごく優しく持ってるもの。

「まり、おとうさまとおかあさまにはなしにいく。」

「はい!そろそろお願いした時間ですね!」

てくてく歩く。

遅い…。ちょっと休憩。

抱っこ…を頼もうと思ったけれど、そうだわ。

いつも抱っこしてもらっているから体力がないのよ。

「殿下!抱っこですか!」

だから期待に満ちた顔でこちらを見るマリには悪いけれど抱っこはしないわ。

「ううん、がんばるの。」

キリッとした顔で宣言する。

「ああぁ…残念です…!でもがんばる殿下素敵ですよ!」

そう言って応援してくれるマリのためにもがんばるのよ。

もう、王宮ってどうしてこう広いのかしら。

私は普段、王族の生活スペースにいるけれど、これから行くお父様とお母様の休憩室は私が入れない大臣や王宮勤めの方々のお仕事場に近い。

つまり結構な距離があるということ。

お二人はこちらに来てくれるとおっしゃったけど、お仕事の邪魔はしたくないから私から伺うことにしたのよ。

ずんずん歩いて道行く人に挨拶して、またずんずん歩いて…。

ようやく着いたのは出発してから10分近くたった頃だった。

もう、疲れたわ。

「殿下…!ご立派でした!」

そう言ってマリがサッと汗を拭う。

王宮の中は暑くないけれど、ずっと歩いていたら軽く汗をかくからね。

ではお開けしますね。

コンコンコン
「失礼いたします。アリス殿下をお連れ致しました。」

カチャとドアが開いた。

「アリスぅー。」

という声と共に抱き上げられる。

うりうりと私の頬にほっぺたを擦り付けるのはお父様だ。

「あなた、早くこちらに連れていらして?」

お母様に言われてお母様の隣に腰掛けたお父様、の上に私は乗せられた。

「アリス、何か話したいことがあるって聞きましたよ。」

「うん?何か持っているのかい?」

うわぁ、いきなりバレたのかな。

「おとうさま、おかあさま。このこたち、みえますか?」

私はそう言って二人を見せる。

私の手には乗りにくいのか膝の上に降りた。

「うーん、何かいるのは分かるんだけど…こう景色がぼやけている所があるというか…。」

「ほんとね、これはなんでしょう。」

全部は見えないのね。

「ちょっと見えるようにするんだぜ?」

「そんなことできるの?」

「これくらい分かってるのなら使う力も少しだから大丈夫よ!」

「うーん、アリス?」

「おとうさま、おかあさま、わたし、ようせいがみえるのです。」

「「妖精?」」

お母様もお父様も急にでれっとした顔になった。

「そうかー。アリスは妖精が見えるのか!」

「ふふ、心が綺麗だからかしらね。」

よしよしと頭を撫でてくれるお母様と、ぎゅうぎゅう抱きしめるお父様。

「はい!みえるのです。おとうさまとおかあさまも、みえるようにしてさしあげてよろしいですか?」

「わあ、私たちにも見えるようにしてくれるんだね。」

「すてきね。ありがとうアリス。」

「はい!」

私の膝から逃れてテーブルにいる妖精二人からはじどーっとした目で見つめられている。

「…本気にされてないんだぜ?」

「完全な子供扱いね。」

何か言ったみたいだけれどまあいいわ。

「ふたりとも。おねがい。」

「任せるんだぜ!」

「やってみるわ!」

ふたりはそれぞれお父様とお母様の頭の上に飛びぺたっと張り付いた。

「…ほんきでやってください。」

「ほ、本気なんだぜ!?」

「これが一番やりやすいのよ!!」

頭に妖精を付けたお父様とお母様はよくわからない、という顔をしながらニコニコしている。

「…アリス?」

「えっと、本気とはなんの事かな?」

「もうすぐのはずなのです。」

ううーん?とお二人で顔を見合わせて不思議な顔をしている。

すると妖精たちがぽわぁっとほんのり光った。

お互いの頭にいた妖精に気づいたのか、二人ともお互いの頭を見上げて口をぽかんと開けている。

「見えたんだぜ!」

「ふふん、だわ!」

「ありがとう。おとうさま、おかあさま、みえますか?」

二人はギギギとこちらを見たのだった。
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