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こ
しおりを挟むよし、無事に始まったわ。
秋祭りは多少日時が変わるものの全国でされるお祭りだから地方にいる貴族はわざわざ王都まで出てこない。
さらに王都にいる高位貴族のうち、子供がいる家はあまり多くなかったから、その子たちには私からプレゼントを手渡すことになったのよね。
「おとうさま、おかあさま、わたしはひとりでだいじょうぶです。まりときしのみなさんとぷれぜんと、くばってきます。」
「あら、ひとりで大丈夫?」
「そうかい?じゃあ何人に配れたか、あとで教えてね。マリ、よろしく頼んだよ。」
「かしこまりました!」
お父様たちと手を振って別れた私はふんす、と気合いをいれた。
プレゼントもたくさん用意したもの。
中身はみんなぬいぐるみだけど、可愛いくまちゃんからかっこいい騎士までたくさんの種類があるわ。
それに最近流行りだと聞いた、手のひら本という手のひらサイズの本をつけたわ。
ぬいぐるみと本よ!きっと気に入ってくれる…。
だ、大丈夫よね?
ぬいぐるみだけじゃ好きじゃない子もいるかと思って本も付けたけど…。
ううーんやっぱりボールの方が良かったかしら…。
うーんうーん唸っていると目の前に小さな女の子がパタパタ走ってきた。
明るい茶色の髪に緑の瞳がキラキラと光るとても可愛い子。
ただ…。彼女のお父様は大慌てしているけどね…。
「カーラ!止まりなさい!!」
慌ててこちらに女の子を捕まえに来た彼女のお父様には残念だけど、女の子はもう私の目の前にいるわ。
「でんか!おうこくのいちばんぼしにおめにかかります。はじめまして!かーら・すめりあです!」
元気いっぱいな女の子はニコニコ笑ってご挨拶をしてくれた。
とても可愛らしいわ!
えーと、カーラ・スメリア嬢。
スメリア侯爵家はたしか当主が外務省で働いていたわね。
今日くる貴族家の爵位と仕事はばっちり頭に入れてあるわ!
「ごあいさつありがとう。スメリアじょう。ありす・みら・るいすえーるです。」
「でんか!かーらとよんでください!」
「まあ、いいのですか?」
「はい!」
「こら!カーラ!走ってはいけないといつも言っているだろう!!
失礼いたしました。王国の一番星にお目にかかります。スメリア侯爵家現当主チャーリー・スメリアと申します。うちのカーラが申し訳ありません。」
ようやく追いついたスメリア侯爵が慌てて私に挨拶をしてくれる。
「すめりあこうしゃく。だいじょうぶよ。
かーらはとてもげんきなのね。
わたしもげんきになったわ。」
「少しお転婆が過ぎるのです…。ありがとうございます殿下。」
「わたしはいつもげんきなのです!」
カーラはふふんと胸を張ってこちらを見た。
ずっと笑顔のカーラは見ているだけでこちらの心もとても明るくなるわ。
カーラなら私と友達になってくれるかしら…。
「かーらとおまつりまわれたら…。」
きっと仲良くなれるはず。
「はい!いっしょにおまつりいきましょう!」
「え!」
あれ?!返事してくれた?!
どうして!?
何故か返事が帰ってきてあわあわしていると、となりからマリがササッと来て耳打ちしてくれる。
「殿下、声に出ておりました!!」
嘘でしょ…。恥ずかしすぎる…。
顔に熱が集まるのがわかる。
「こ、声に出ていましたか…?」
おそるおそるカーラの方を見る。
ど、どうしてそんなキラキラした目でこちらを見てくるの?
「でんか!わたしでんかとまわりたいです!いっしょにまわってくれませんか?」
「えっ、いいのですか?」
「はい!まわりましょう!おとうさま、あとであいましょう!わたしはでんかとまわります!」
「それは良いけれど、迷惑をかけるんじゃないぞ!絶対に!1人で!走っていかないように!!」
「こうしゃく、だいじょうぶです。おててをつなぎます。」
「殿下…。どうかうちの娘をよろしくお願いいたします。もしいなくなったらそのまま放っておいて大丈夫ですので。」
侯爵はとても不安そうな顔をして離れて行った。
私たち2人と言っても後ろにマリもいるし騎士も2人着いている。
スメリア家の使用人も後ろに控えてるわ。
きっと子供が彼らの目をかいくぐって走って逃げることはできないと思う。
大丈夫よ。そんなに心配しなくても。
それよりも、まずはプレゼントをあげないと!
「かーら、あのね、ぷれぜんとがあるの。」
「わぁ!ぷれぜんとですか?うれしいです!」
マリに箱をもらって手渡す。
「開けてもいいですか?」
あっ!まって!中身の確認をし忘れていたわ!
「あっ、ちょっとまっ…!」
「わぁー!すてきです!きしさま!」
ああーー騎士の人形に冒険の本…!
男の子向けに用意したのに!
どうしようどうしよう!!
くまちゃんのぬいぐるみとお姫様のお話の方が良かったよね?
だめだ…初めてのプレゼントで失敗してしまった…。
うるうるしてマリを振り返った。
マリならどうしたらいいかわかるかな。
マリは手を口に当てて何かを噛み締めながら親指をたててグッ!とこちらにむけた。
ちがう!どうしたらいいのか聞きたいのに!
「まり、しっぱいしちゃった…。」
「殿下!大丈夫です!ほら!スメリア嬢をご覧下さい!めちゃくちゃ喜んでます!!」
えっ?
振り返ってカーラを見るととても嬉しそうに騎士のぬいぐるみを抱きしめていた。
「かーら、うれしい?」
「はい!もちろんです!!この騎士様とてもかっこいいです!」
「ほんと?よかった!」
そっか、カーラはかっこいいものが好きなのね。
それなら騎士様でよかった。
「かーら、ほかのひとにもわたしにいくの。ついてきてくれる?」
「でんか、ほかのひとにもぷれぜんとあげるのですか…?」
カーラがしゅんとして聞いてきた。
ああ!そうよね!友達にプレゼントを渡したあとに他の子にプレゼントあげるなんて言ったら嬉しさ半減よね!
「ご、ごめんかーら。ほかのこにはあげない、こともできない…どうしよう」
「ふふっ!でんか!だいじょうぶです!
みんなにあげるぷれぜんとのほかに、わたしとおそろいのものをかいましょう!」
「そ、それがとくべつなぷれぜんとになる?」
「とくべつなぷれぜんと…はい!おそろいかいましょう!」
良かった…カーラが優しくて良かった!
仲直りした私たちは手を繋いで子供たちのいる所を回っていった。
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