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か
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歴史はマリに習うとして。
音楽は前の先生が来てくれるかしら。
前の先生、とっても優しくて好きだったのよね。
これは期待しておくわ。
私に変な先生を付けるようなことをお父様もお母様もしないと思うから、きっと違う方ならそれもいい出会いね。
コンコン。
扉を叩く音がする。
あらもう11時前。
「殿下、そろそろ向かいますか?」
「うん。いこう。」
そう言って両手をマリに伸ばす。
最近はよく抱っこで移動しているから、癖になってしまった。
「くぅぅぅーー!!」
と両手を握りしめてブンブン振り回してからぎゅっと抱っこしてくれる。
私もぎゅっとしてから歩くのだ。
「よし。れっつごーよ。まり。」
「はい!レッツゴーです殿下!」
ふふ。
マリといると、心が落ち着く。
今度こそきっと大丈夫という思いと、絶対守るのだという思いが入り交じった不思議な気持ち。
この気持ちを大事にしよう。
そう思ってマリをもう一度ぎゅっとするのだった。
…ぐふふっていう声は聞こえなかったことにした。
お父様の執務室にきた。
マリから降りてノックする。
こんこん。
「おとうさま、ありすです。」
ガチャリと扉が開く。
本棚に囲まれた黒が基調の部屋にお父様の机が1つ置いてあった。
「おや、いらっしゃいアリス。よく来たね。こっちへおいで。」
「はい。」
私はとてとて歩いてお父様の机の前に移動した。
お父様はサッと立ち上がりこちらへ来ると私を抱えて席へ戻った。
「さて、話をしようか。今日アリスを呼んだのはこの前君がお願いしていた音楽の先生が見つかったからだよ。」
「わあ!ありがとうございます。」
予想していたけれどやっぱり嬉しい。
ふふふん。とニコニコしてお父様を見る。
ぎゅっとされた。
「くそっ、ぎゅっとしていると顔が見えない…!」
なんて当たり前のことを言っている。
そしてマリ、そんなに首をブンブン振ってるととれちゃうよ。
しばらくぎゅっとしてからお父様は私の顔を見た。
「先生、来月から来てくれるって言っていたよ。前ベナレス伯爵夫人のシャネラ・ベナレス先生だ。覚えておくようにね。」
「はい。」
やった!前の先生と同じだわ!
また先生に会えるなんて。
先生はとても優しい方だったから、きっと前世では元教え子の私が死んだ後悲しまれたのではないかしら。
「そういえば、ふしぎなんだよ。」
「ふしぎ?」
「ああ、この前アリスが先生をつけて欲しいって言った時、もう既に夫人から手紙が来ていてね、アリスの先生をさせてほしいって書いてあったんだ。」
「え!?」
ど、どうして?
前はそんなことなかったはず…
「もちろん適切かどうか審査する必要があったからすぐには返事出来なかったけれど。彼女の楽器演奏は社交界でも有名だったからね。人柄も温厚だしすぐに許可が出たよ。良い先生だといいね。」
ニコニコこちらに微笑むお父様には申し訳ないけれど、それどころじゃない。
良い先生?良い先生でした。
ぐるぐるぐるぐる頭が回るけれど一向に結論に達しないまま。
「こーら、アリス。また何か考えているのかい?そんな小さな頭で色々考えるとお熱が出てしまうよ?」
よしよしされて、ふと思考の渦から抜け出した。
「おねつはだめです。」
よし、もう考えるのは辞めておこう。
先生に会ったら分かるかもしれないし。
「そうだね、お熱はダメだよ。」
「あっ、そうだおとうさま。」
そうだそうだ、秋祭り!今言っちゃおう!
「どうしたんだい?」
「さいきんおそとがげんきなの。あかいのがたくさんあるの。」
「ああ、外の灯篭の事かな?」
「とうろう?」
「そう。夜に光ってるんじゃないかな?」
「はい。くらくなるとひかります。」
「それが灯篭だよ。じゃあきっと秋祭りだね。」
「あきまつり。わたしもいけますか?」
「ううーん、行きたいの?」
「はい、いきたいです。」
「秋祭りは人で溢れてるからなぁー。危ないんだよなぁ。」
よし、ここで引く!
「じゃあ…おしろでやりたい。あきまつり。」
「お城で?」
「うん。みんなでおまつりするの。まり、くる?」
「マリもですか!?はい!参加いたします!!」
「なるほど、それならすぐ準備できるよ。」
「やった!ほんとですか?うれしいです。」
良かった良かった!
「じゃあ秋祭りの日はお城でみんなでお祭りにしようか。」
「はい。おともだちもきますか?」
「お友達?」
「ごほんでよみました。おともだちといっしょにぼうけんしていました。」
「あぁ、そうだね。確かにお友達もそろそろ居た方が楽しいかもね。よし、じゃあ高位貴族も招待しようか?」
「はい!たのしみです。」
「うんうん。楽しみにしていなさい。」
そう言ってお父様は私のほっぺにちゅっとキスをしてくれた。
音楽は前の先生が来てくれるかしら。
前の先生、とっても優しくて好きだったのよね。
これは期待しておくわ。
私に変な先生を付けるようなことをお父様もお母様もしないと思うから、きっと違う方ならそれもいい出会いね。
コンコン。
扉を叩く音がする。
あらもう11時前。
「殿下、そろそろ向かいますか?」
「うん。いこう。」
そう言って両手をマリに伸ばす。
最近はよく抱っこで移動しているから、癖になってしまった。
「くぅぅぅーー!!」
と両手を握りしめてブンブン振り回してからぎゅっと抱っこしてくれる。
私もぎゅっとしてから歩くのだ。
「よし。れっつごーよ。まり。」
「はい!レッツゴーです殿下!」
ふふ。
マリといると、心が落ち着く。
今度こそきっと大丈夫という思いと、絶対守るのだという思いが入り交じった不思議な気持ち。
この気持ちを大事にしよう。
そう思ってマリをもう一度ぎゅっとするのだった。
…ぐふふっていう声は聞こえなかったことにした。
お父様の執務室にきた。
マリから降りてノックする。
こんこん。
「おとうさま、ありすです。」
ガチャリと扉が開く。
本棚に囲まれた黒が基調の部屋にお父様の机が1つ置いてあった。
「おや、いらっしゃいアリス。よく来たね。こっちへおいで。」
「はい。」
私はとてとて歩いてお父様の机の前に移動した。
お父様はサッと立ち上がりこちらへ来ると私を抱えて席へ戻った。
「さて、話をしようか。今日アリスを呼んだのはこの前君がお願いしていた音楽の先生が見つかったからだよ。」
「わあ!ありがとうございます。」
予想していたけれどやっぱり嬉しい。
ふふふん。とニコニコしてお父様を見る。
ぎゅっとされた。
「くそっ、ぎゅっとしていると顔が見えない…!」
なんて当たり前のことを言っている。
そしてマリ、そんなに首をブンブン振ってるととれちゃうよ。
しばらくぎゅっとしてからお父様は私の顔を見た。
「先生、来月から来てくれるって言っていたよ。前ベナレス伯爵夫人のシャネラ・ベナレス先生だ。覚えておくようにね。」
「はい。」
やった!前の先生と同じだわ!
また先生に会えるなんて。
先生はとても優しい方だったから、きっと前世では元教え子の私が死んだ後悲しまれたのではないかしら。
「そういえば、ふしぎなんだよ。」
「ふしぎ?」
「ああ、この前アリスが先生をつけて欲しいって言った時、もう既に夫人から手紙が来ていてね、アリスの先生をさせてほしいって書いてあったんだ。」
「え!?」
ど、どうして?
前はそんなことなかったはず…
「もちろん適切かどうか審査する必要があったからすぐには返事出来なかったけれど。彼女の楽器演奏は社交界でも有名だったからね。人柄も温厚だしすぐに許可が出たよ。良い先生だといいね。」
ニコニコこちらに微笑むお父様には申し訳ないけれど、それどころじゃない。
良い先生?良い先生でした。
ぐるぐるぐるぐる頭が回るけれど一向に結論に達しないまま。
「こーら、アリス。また何か考えているのかい?そんな小さな頭で色々考えるとお熱が出てしまうよ?」
よしよしされて、ふと思考の渦から抜け出した。
「おねつはだめです。」
よし、もう考えるのは辞めておこう。
先生に会ったら分かるかもしれないし。
「そうだね、お熱はダメだよ。」
「あっ、そうだおとうさま。」
そうだそうだ、秋祭り!今言っちゃおう!
「どうしたんだい?」
「さいきんおそとがげんきなの。あかいのがたくさんあるの。」
「ああ、外の灯篭の事かな?」
「とうろう?」
「そう。夜に光ってるんじゃないかな?」
「はい。くらくなるとひかります。」
「それが灯篭だよ。じゃあきっと秋祭りだね。」
「あきまつり。わたしもいけますか?」
「ううーん、行きたいの?」
「はい、いきたいです。」
「秋祭りは人で溢れてるからなぁー。危ないんだよなぁ。」
よし、ここで引く!
「じゃあ…おしろでやりたい。あきまつり。」
「お城で?」
「うん。みんなでおまつりするの。まり、くる?」
「マリもですか!?はい!参加いたします!!」
「なるほど、それならすぐ準備できるよ。」
「やった!ほんとですか?うれしいです。」
良かった良かった!
「じゃあ秋祭りの日はお城でみんなでお祭りにしようか。」
「はい。おともだちもきますか?」
「お友達?」
「ごほんでよみました。おともだちといっしょにぼうけんしていました。」
「あぁ、そうだね。確かにお友達もそろそろ居た方が楽しいかもね。よし、じゃあ高位貴族も招待しようか?」
「はい!たのしみです。」
「うんうん。楽しみにしていなさい。」
そう言ってお父様は私のほっぺにちゅっとキスをしてくれた。
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