復讐姫の王国記

朝木 彩葉

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秋祭りではれ突然行きたいとねだった私のためにお父様がお城の中庭で小さなパーティを開いてくれたのよね。
突然のパーティだったから貴族はいなくて、近衛のみんなと、侍女のみんなと、お料理を食べて花火を見たのよ。

これが私の1番昔の記憶。

でも確か、ほとんどの貴族は来ていなかったはずだけど唯一あの宰相と、宰相の息子も一緒に参加していたのよ。

宰相の息子は宰相に似た黒髪と、私の見たことない奥様に似たのか、まあるい大きなおめめに、まだ幼いぷっくりしたほっぺが印象に残るとても可愛らしい子だったわ。きっと同じ歳くらいだと思う。

そういえばあの子はどうなったのかしら。

結局あの後会うことは無かったから分からないけれど…
あんなに可愛い子がまさか悪事に加担なんてしないわよね…?

でもそうね、宰相の息子…

仲良くなっておいて損はないかもしれないわね。

もし悪事に加担するようになるのなら今から仲良くなってこっちの味方に付ければスパイみたいになるかもしれないし。
しないならそれはもっと強力な味方になるわ。
私と関わりのなかった前世ですら父親のやることに逆らったってことだから。

ということは、この秋祭りのときのお城のお祭りは絶対開催しないといけないわね。
前世の通りなら、この時以来あの子とは会えなくなってしまうのだから。
なんとしてでもここで仲良くなって、また会う口実をつくるのよ!
お友達作戦よ!

そうと決まればどう実行するのかを考えないと。

まず秋祭りの駄々をこねるのは確定として…。
問題は宰相がちゃんとあの子を連れてきてくれるかよね。
前世では連れてきてくれたけれど、今回も同じとは限らないから。

どうしましょう。
宰相の息子に会いたいなんて言ったらお父様もお母様も驚くわよね…。
他にも王都にいる子供のいる上位貴族を呼んでもらおうかしら。
ついでに友達は沢山作ってしまいましょう。

…。できるかしら…。

私前世で友達なんていなかったし。

よし、頑張るしかないわ。

作戦をたてましょう。
相手はまだ子供よ、子供の好きな物をあげればいいはずだわ。

①お菓子  でしょ?
②おもちゃ  でしょ?
③…

…わからないわ。お菓子とおもちゃなんて普通の考えしか出てこないわ。

仕方がないわね、私子供じゃないもの。

よし!とりあえずお菓子とおもちゃは間違いないわ!
たっくさん用意しなきゃ!

そう考えた私はノートにお菓子、おもちゃ、と書いて丁寧に宝箱にしまい、ベッドによじ登って朝が来るのをまったのでした。

さて、秋祭りまであと1ヶ月。
街にも祭りに向けて活気がでてきたわ。

前世の私はお子ちゃまだったから当日に無理やりパーティを開かせるという暴挙に出たけれど今回は違うわ。
1ヶ月前という余裕のありよう!

あまりにも前過ぎると3歳の子が提案するには不自然すぎるのよね。
街の活気を不思議に思って秋祭りの存在を知る、っていう設定なんだから。

よし、今日のお昼ご飯のときにお父様にお願いしよう。

ふんす、と気合いを入れた私の元にマリがやってきた。

「殿下!本日国王陛下からお伝えすることがあるためお昼の11時に執務室に来るように、と仰せつかっております。」

「つたえたいこと?あっ!わかった。
11じにうかがいます、とお伝えして。」

多分音楽の授業についてだ。
前世ではピアノとバイオリンは5歳から始めたから今度こそちゃんと教わろうと思って早めにお願いしていたのだ。

私は音楽のレッスンが好きだった。

まあすぐに取り上げられたんだけど。

先生もいつもにこやかに教えてくれていたわ。

「殿下はとても穏やかな優しい音を出されますね。妖精も喜んでおります。」

なんてニッコリ微笑んで言ってくれたかしら。

妖精だなんて、子供だからって可愛らしいことをいってくれたわね。

この世界には妖精なんていないもの。

おとぎ話に出てくる存在よ。

好きなものだったけど、何が武器になるのか分からないから、何でも知識をつけなきゃ…。

これをお願いした時もお父様とお母様は眉をへにょりと下げて困ったような顔をしていたなぁ。

「あなたはいつも偉すぎるわ…」

お母様もお父様もいつも心配してくれているけれど…。
ごめんなさい。
今は急がないといけないの。
ゆっくり子供をする時間はないのよ。

「おべんきょうがすきなのよ。」

と言って誤魔化した。







よし。だいぶ私の時間の使い方は決まってきたわね。

他にも学びたいことがあるけれど、全部同時に始めるのは良くないわ。

これから学べる歴史と音楽をある程度習慣として慣れてから他のものにも手を出さないと。

それにしてもマリが歴史好きだったとはね。
なんとお父様にお願いして歴史の先生を買って出てくれたの。
もちろんテストをしたわ。
なんと満点だったみたい…。

お父様はまだ高等部だから正式な教師としては雇えないけれど、お世話のついでに教えるってことでなら是非、ってお願いしたみたい。

でも私知ってるの。
教師として雇えないと言いながらも何かと言い訳を付けてお給料を少し上げているのよ。
前にマリが「最近お給料が多いから殿下にお土産を買ってきますね!」ってルンルンだったもの。

それにしても、マリって実はかなり優秀なのよ。

学園には普通5~8歳まで通う幼年部、9~12歳まで通う初等部、13~15歳まで通う中等部がある。
貴族の子息や裕福な平民は高等部にも通ってより専門的な勉強もするのよね。
更にその上には学術院というものがあるけれど、研究家になりたい人や王族、高位貴族しか行かないわね。
その中で彼女は13歳で中等部を卒業して、王家の推薦の元今は高等部の2年生なはず。
今は夏休みを使って私のお世話をしてくれているのよ。
遊んだらいいのにね…。

でも前にマリに言ったことがあるの。

マリ遊ばないの?
今度の土曜日とか日曜日とかいつでもいいから私のそばばかりじゃなくて、どこか行ったら?
って。
そしたらマリったら真っ青な顔をして。
「で、殿下はマリのことがお嫌いですか?!そ、そんなっ…」
って絶句しちゃったんだよね。
その後は必死になだめたんだけど、それ以降もう提案はしなくなっちゃった。

あまりにも真っ青だったもの…。
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