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第1章 とりあえず入れ物=アバターゲットだぜ?

いいのか、それで?

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「いいのか、それで?」

コウ兄ちゃんの問いに頷く、入れ物チュートリアルから解放された私の姿は、言ってみれば生前とそこまで差のない姿だった。

前世と性別を同じにした所ゼロからカスタムコースと、初期アバターみたいな前世と同じコースがあったので、前世と同じコースをベースにした。

「小さい頃はヒーローになる!とか言ってたから男の子にでもなるのかと思ったけど」


いや、それホント子供の頃だし。親戚で集まると男子率も高かったから戦隊モノごっこのが多かったから、その影響モロだし。


「別に前回の自分それほど嫌いじゃなかったからさ。でも肩こりと腰痛はやだから20歳頃の無敵な頃にしたけど」


あの頃私はバイトして大学に行き、空いた時間は弾丸で地方へと飛び回っていた。明け方夜行バスで帰宅後そのまま大学なんてことをやってのけたあの頃マジ最強である。
あと、ちょっと30後半になり太り出した所は細くしといた。そこは許して欲しい。


「ポイント貯めたら色々カスタムも出来るしな。まぁ自由にしたらいいさ。
じゃあ山場行くぞ。並ぶからなああそこ。」

ほぼメインだろう。今度は観覧車の個室を縦にひたすら並べたような果てしないゴンドラの列、その最後尾。

うわぁ、42日待ちだ。
ってことは、あ、初七日終わったのか。

その前に。


「ほんとにいいのか?」

「同じ世界にいたらまた会えるんでしょ?」


送り出さねば。申請したポイント期限が今日切れてしまうと知ったのはさっきだ。
ピコン!本日が申請期限です!出国はお早めに!

間の抜けた音声がなかったら祖父母は黙っているつもりだったのかもしれない。

「お彼岸とお盆しか出発出来ないんだから早く行かなきゃ」

お土産話期待してるしさ。と、祖父母を送り出す。
念願の海外旅行だ。戦後のゴタゴタで結婚した2人にはこれが新婚旅行並の大イベント。
孫2人、快く送り出さねばならないだろう。

「兄ちゃんと話したいこともあるし。ね、いってらっしゃい」

「大丈夫。俺のが長いんだから安心してよ」

大丈夫という言葉の説得力がなんか違和感。

「その間私も決めとく!何したいのか、何になりたいのか。だから行ってきて?」

「――緊急帰国ボタン、あれはポイントかからないからね、いつでも押しな?」

そんな110番とか非常ベルみたいな制度もあるのか。

迷っていた祖父母だけれど、孫が本気で決めた、その気持ちで向かえば、その意を汲んで祖父母も思い切り楽しむと切り替えてくれた。


生前からそうだった。
普段はいくつになってもお菓子やジュースと子供扱いはするけれど、進路など、岐路で本気で決めた瞬間、一人の人として意見を尊重してくれたのもまた祖父母だった。

ちゃんといつも向き合ってくれた。個として扱ってくれた。
そんな祖父母が大好きだった。


「じゃあお互い健闘を祈るでな」


その言葉で別れた私たちは、今度こそゴンドラに乗り込む。

ここでもまた席は分かれていた。

「アキサ乗り物酔いし易いだろ?席交換しよう」

「え、でもそしたら兄ちゃんにポイントは?」

席がに番号を認識していると言っていたでは無いか、と言いかけたところで、兄ちゃんが事もなさげに腕を天井にカザすと席が入れ替わった?? 


「――グリーン車みたいだね」

某国鉄の有料車両のようだと思いながら、とりあえず私は有難く進行方向を向く席に座らせてもらった。

死んでも酔うのか、座席の向き90℃ズラしたら付き添いも本人も酔いやすい時に困らないのではなかろうか。

などと思いながら四十九日のこり42日はようやくスタートしたのだった。



転生した人ってこっちで働き方改革した人達多いのかな?
便利システム、現世から持ち込んだのかな、どっちなんだろ。
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