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プロローグ 死後の世界

死後の世界のポイ活事情

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「とりあえず、役場に届ける前に入れ物カラダを選ばないとな。ほら、まずは性別なここは空いてる方だから並ぶぞ」


まるで観覧車のような個室の乗り物に乗っての移動らしい。
そして1時間待ちは空いている方らしい。

不思議なのは席が区切られていて、ご本人席お付き添い席がある所だろうか。

「あー、俺らみたいな守護霊は付き添い係もよくやるんでね、その係やると案内センターの混雑が緩和されるから、まぁバイトみたいなもん?」

「そうなんだ。儂らもよくやるからな、ポイ活というやつだ。この席が認識番号を感知してポイントをあとで振込んでくれるんじゃと」

「あんたがそれを考えなしに使っちゃうから!」

ドヤ顔する祖父の耳を祖母が引っ張る。懐かしいなぁ。祖父はギャンブルなんかはやらないのだけど、たまに重要なことを祖母に相談無しに決めてしまうことがあった。

生前のやらかしナンバーワンは父の出生届だろう。役場に画数が悪いと言われたからとその場で名前を変更。
父の名前は全く違うものとなったそうだ。


「今回は初回なんで全部基本無料だからな。ほら、アバターとかゲームで作らなかったか?」


ゲームのチュートリアルみたいだとは思っていたが、死後の世界、そんななの??
いや、ゲームが死後の世界の再現?


「このシステムに生前慣れてもらえば手続きがスムーズだろうって考えたやつが転生したらしくってさ。割とここ近年は慣れた死者も多いから進みが早まったんだよ」

「あたしらの頃はげーむなんて無かったからねぇ。先にコウがいてくれたから、ほかの人らよりはスムーズだったんだ。」

ばあちゃん、じいちゃんの耳、離してあげなよ。孫にはいつも優しかったばあちゃんの笑顔が眩しいけども。

そして後者か。認識番号ってマイナンバー制度も関係してるのかな。

「ポイ活とかバイトって、死後の世界はポイント制度なの?」

「簡単に言うとなぁ。前世から詰んだ徳とか、こっちの世界でバイトしたり、学校なんかもあるから成績に応じてポイント貰ったり、事業立ち上げてみたり。何かしら貢献したらたまるポイントがあるんだわ」

「それと交換で旅行したり、買い物や入れ物カラダのカスタマイズも出来るんじゃ。あとは職業持ちは能力として、守護霊だったら現世の守護対象に使ったりなぁ」



ホントゲームみたいなんだけど。

「あれ、2人ともわざとじいちゃんとばあちゃんのままなの?若返ったりしなかったの?」

「色々すっ飛ばして職業守護霊にしたからなぁ。そうすると姿は死ぬ直前で1番元気だった頃しか選べないがポイントが余るんで色々し放題なんだ。」

「儂も婆さんも守護霊一択だったからなぁ。」

「アキサのお父さんもうちの父さんも死にかけた割に結局後遺症もなく元気だろ?あれ守護霊ポイントのおかげな」


確かに、二人共大病した割にケロッとしており、周囲が呆れ返るくらい元気に生きていた。


「まだ孫たちだって見届けてないからポイントは堅実に使おうと思ったのにこの人は――!!」

「だって、お前、1度でいいから海外旅行してみたかったって、儂と旅行するの夢だって生前から言ってたから」


「あ、ばあちゃん、じいちゃん死んだ後よくその話してたもんね。そっか、ばあちゃん愛されてるねぇ」

揶揄うような孫2人にばあちゃんはふるふると震えて真っ赤になって黙ってしまった。
いつも強気だがそれは照れの裏返しなのだ。


「でも、だからアキサには間に合わなかったじゃないか」

「ばあちゃん―私死ぬ時後悔しないように生きてきたから、本気で今後悔してないよ?30半ばまで生きたし。今2人と話せてるし。コウ兄ちゃんの事もハッキリ分かったし。兄ちゃんのことが心残りだったけど、ここに来たからようやくハッキリしたんだし」

ばあちゃんごめん。無理やり黙らせたみたいになっちゃった。

でもさ、大好きだったいとこのコウ兄ちゃん。
私がまだ高校生だった頃。
旅行に行ったっきり行方不明になってしまったコウ兄ちゃん。

生死は半々の気持ちだったのだけれど。

「その話はあとでな、おいおいするけど、まずはお前な。時間が無いんだ。」


しんみりしかけた空気にはお構い無しに響くピンポン、という間の抜けたアナウンス音と共にようこそと案内の音声が聞こえた。


「性別をお選びください。なお、お客様はポイントが不足しておりますので職業選択の機会は一周忌の体験、三回忌の最終決定の2回となります」

「え、」


さっき色々飛ばしたら守護霊って、誰でも選べないってこと??

「長生きしとればそこそこ溜まるんでな、アキサくらい若いと大概はむりなんじゃと」

「それにあたしらがいるから、現世はな。任せて、アキサは好きなことしなさい」

「ってことだ。アキサ。まぁ嫌でもあとの2回で進路選ぶことになるから。とりあえずお前は今は自分のことを選べ」

ポンと頭に手を置く仕草が懐かしい。子供扱いが嫌じゃないのはらこの人には適わないのだと、それも嫌じゃないと魂に刻まれているからだろうか。


「わかった。じゃあ――」
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