【実体験アリ】怖い話まとめ

出産日の夢

　大学時代の友人Bちゃんが叔母さんから聞いた話になります。

　叔母が若い時に妊娠中の妹と自宅で過ごしていましたが、叔母の妹が出産予定の一週間前に陣痛が起きたため病院に駆け込みました。叔母は待合室で待っていましたが、仕事が終わった母親と急いでやってきた妹の旦那が来たため、一度家に帰ることにしました。帰宅後も叔母は落ち着きませんでしたが、付き添いを交代出来るように睡眠を取ることにしました。

　夢の中で叔母は広くて真っ白い空間にいました。建物も空もなく、ただ何もない白い空間でした。叔母は「これは夢だ」とすぐ気が付きました。なぜこのような夢を見ているのか分かりませんでしたが、現実世界に早く戻りたいと思い、走り出しました。しかし、どんなに走っても永遠と同じ空間が広がっているだけで出口はありません。しばらく走ると叔母は疲れて座り込んでしまいました。「このまま夢の中から出られなかったらどうしよう」と困っていた叔母に何かの音が聞こえてきました。

　声の方へ歩き出すと声はどんどん大きくなり、その声が赤ちゃんの泣き声であることが分かりました。泣いている赤ちゃんが心配になって、叔母は再び走り出しましたが、近付くに連れて今度は赤ちゃんの泣き声がどんどん小さく弱弱しくなっていきました。叔母は全速力で走りようやく布に包まれた赤ちゃんを見つけました。赤ちゃんは二人いました。どちらも衰弱しているのか泣き声は小さくなっていきます。

　焦った叔母は赤ちゃんを拾いあげます。しかし、不思議なことに赤ちゃんは一人しか拾いあげることが出来ません。もう一人を拾いあげようとすると赤ちゃんの体が透けて掴めません。何度ももう一人の赤ちゃんを拾いあげようとしますが、掴むことは出来ませんでした。そのうち二人の赤ちゃんから泣き声が聞こえなくなりました。叔母はこのままでは二人を死なせてしまうと思い、

「ごめんなさい。戻って来るからここで待っていてね！」

　と言うと赤ちゃんを一人だけ抱きかかえて走り出しました。とにかく赤ちゃんを助けたい思いで走り続けていると叔母は目を覚ましました。叔母は汗だくになっており手のひらを固く握っていたためか充血していました。妹と赤ちゃんの事が気になり、急いで病院へ向かうと妹はすでに出産を終えており、元気な女の子が産まれていました。

　叔母は安堵したそうですが、隣の病室から泣き声が聞こえてきました。何があったのか看護師さんに聞くと赤ちゃんが亡くなった妊娠さんがいたことを話してくれました。叔母はBちゃんに

「夢の中で出会ったもう一人の赤ちゃんを何とか抱きかかえることができたら、Bちゃんみたいに元気で産まれてきてくれたのかな」

　と語ってくれました。