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4.脱出ゲーム編-3
4.脱出ゲーム編-3
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…………。
………………。
一本道を進み、三人は奇妙な部屋に辿り着いた。
壁に壁画が描かれ、エジプト風の装飾の凝らされた部屋だ。
「あ……あれは何ナノダ!?」
「「ひいいぃぃッッ!!??」」
ぱうおが指さす先を見て、萌衣も光児も悲鳴を上げた。
そこには“ミイラ”がいた。
おそらく保健室のベッドにシートを被せたのであろう台座の上に、身体中をぐるぐると白い布に巻かれたヒトガタが、横たわっていた。
「こ……これは……ッ!?」
気の弱い光児が、思わず萌衣に抱きつく。
「これは……ミイラみたいダネ……」
萌衣もさすがに、薄気味悪げな声を上げた。
ぱうおはひとり、臆することなく近づいて――。
「ふ~ん、オモチャかと思ったら、そうじゃないノダ。生きてるノダ」
「「え……ッッ!!??」」
ふたりはまた、声を震わせる。
しかし確かに、その薄い胸は微かに上下している。
マネキンなどではなく、人間が演じているわけだ。
背丈は三人と変わらず、どうもまだ子供のようだ。
「あ……あれは何ナノダ!?」
またぱうおが声を上げる。
「ぱう君、いろいろ見つけるね……」
呆れ声を上げつつ、光児がぱうおの指の差す方に目を向けると、台座に何やら書かれていることが分かった。
――墓は夜掘れ 満月の夜に 満月の夜には祟りがない。
謎の碑文。
「えと……どういう意味?」
萌衣が頭にクエスチョンマークを浮かべる。
――余談だが、この碑文は筆者が小学生時代に使っていた国語の教科書に書かれていたミイラ発掘の案内人の歌った歌から引用しています。
「あ……あれは何ナノダ!?」
またぱうおが声を上げる。
「ぱう、いろいろ見つけるネ……」
今度は萌衣が感嘆の声を上げつつ、ぱうおの指の差す方に目を向ける。
この部屋の壁には一面にエジプト風の絵が描かれているが、そこに一枚、不自然に紙が貼られていた。
そしてそこには――。
【ひみつしれい書③】
・聖杯を探せ!
ヒント:匈 宛 复殳 却
匈 宛 殳桼 却
「何、これ……?」
光児がまた呆れ声になる。
そもそも縦に読むんだろうか? なら、何故字が左右にぶれているのか……?
「エジプトなんだからヒエログリフならともかく、何で漢字?」
と、萌衣は冷静に返す。
「Nej……そこはツッコミどころじゃないヨ、ヒエログリフを書かれても誰も読めないし」
「まあ、それは正論だけど、でもじゃあこれは?」
「“脱出ゲーム”だから暗号文じゃないカナ?」
萌衣も光児も、ヒントと思しい碑文、そして紙に書かれた漢字を交互に眺め、考えあぐねる。
しかしぱうおは面白そうに、しげしげとミイラを眺めていた。
「光、ちょっと聞きたいんだケド」
ふと、萌衣が声を上げた。
「そもそもこの字、光には読める? ボクには読めないケド……」
「うん、確かにあんまり見ない字が多いね……」
光児がかぶりを振る。
「思うんだけど光、大体クイズでこういう字が出る時、欠けてるモノがある、ってパターンじゃないカナ?」
「確かにそれは……」
光児が碑文を見る。
「何かこれがヒントっぽいけどさ……でも意味分かる?」
「満月の夜……」
ふと、光児の脳裏に「にくづき」という言葉が浮かび上がる。
「萌衣君、にくづきって知らない?」
「Vad?」
「つまり、“月”のつく漢字には身体に関するものが多いとか……」
考え深げに、光児がつぶやいたその時。
「あ、ここ、切れてるノダ!」
ミイラの包帯を引っ張りつつ、何やらぱうおが声を上げるが、ふたりともそれどころではなかった。
「……あ、萌衣君、見て。ほらこの文字、全部“月”がつくんじゃないかな?」
「月……?」
光児の言葉に、萌衣はスマホを取り出して、文字を打ち込んでいく。
そうすると、紙に書かれた不思議な文字は――。
胸 腕 腹股 脚
胸 腕 股膝 脚
「――あ、全部身体に関する文字になったね!」
興奮して、光児は声を上擦らせる。
しかし一方ぱうおは、ミイラの身体を覆う白いものを指でいじっていた。
「う~む……包帯と思ってたけど、そうじゃなくてこれは……紙ナノダ……」
考え深げにあちこちを触れる度、ミイラは細かく身体を震わせた。
――く……くぅぅぅぅ……ッ! わ……笑っちゃ……ダメだ……ッッ!!
ミイラの中身である進一郎は、身体中をくすぐられ、今にも吹き出してしまいそうなのを必死に耐えていた。
しかしぱうおは容赦なくその紙をいじり回し――。
「これは……巻いてるんじゃなく――」
びりりッ。
無造作に、ぱうおの指がミイラの身体を覆うものを引っ張った。
「ひいいいぃぃぃ……ッッッ!!!」
がくんと、台座の上で進一郎は肢体をがくがくわななかせる。
「何……ッッ!?」
「Vad?」
何ごとかと、振り返る萌衣と光児。
見れば台座のミイラの上半身からは布――というか紙テープ――が剥がされていた。
さっきから上下させていた薄い胸には、淡いピンク色の乳首があしらわれ、それは痛みのせいでぴんと勃っている。
そして、その左右の乳首の上には――「め」と「じ」の文字が(油性マジックで)書かれていた。
「げ……元気なミイラなのダ……」
ぱうおの声に我に返り、進一郎はまた、台座の上に寝転がる。
「「ふぅぅ~~む……」」
萌衣も光児もまじまじと、その上半身裸のミイラを見つめる。
見れば左腕には「え」の文字が、腹の愛らしい臍の上には「ど」文字が書かれていた。
「めじえど……?」
光児の頭から、またクエスチョンマークが生える。
しかし彼が考えるよりも早く。
「ほら、こっちも取れるノダ!!」
またぱうおの指が、雑にミイラの下半身の紙テープを剥がしていく。
「痛ッ! あ痛ッ! 痛い! あ痛たたたた……ッッ!!」
ミイラが台座の上でのたうち回る。
「こら、おとなしくするノダ!!」
「あの……ぱう君、相手が嫌がることは止めた方が……」
おずおずと、光児がたしなめるが、そうする間にもミイラは顔を覗いて裸にひん剥かれ、両手で股間を覆うばかりとなった。
「ほら、見えないノダ、脚を開くノダ!!」
必死で抵抗するミイラの脚と脚を押し開くぱうお。
と、大切なところは手のひらで隠したまま、その脚は開かれ、股の部分には左右に「を」と「あ」の文字。
左の膝には「ら」、右には「た」、左の脚には「め」、右には「よ」の文字が、それぞれマジックで書かれていた。
「つまり……“めじえどをあらためよ”――?」
萌衣が考え深げにつぶやく。
「えと……多分、アトラクションとしては、胸とか膝のテープをピンポイントに剥がして、謎を解いて欲しかったんじゃ……?」
光児が疑問を呈する。
確かに、紙テープには切れ込みが入っていた。
なるほど、紙に書かれた文字が左右にぶれていたのは、右胸や左股を探せという意味だったようだ。
「むぅ、謎が解ければもう用はないノダ!」
ようやっとぱうおがミイラを解放する。
「でも、この“めじえどをあらためよ”ってどういう意味かなぁ……?」
光児がまた、疑問を呈する。
「Ja、“めじえど”というのはきっと“メジェド”のことダヨ!」
難なく、萌衣は返した。
「めじぇど?」
ぱうおに問われ、萌衣はすたすたと壁へと近づく。
そこにはおなじみ、「横スクロール」風にホルス神だのバステト神だのが描かれていたが――。
何だか白い布を被ったような妙な生き物の姿も、そこにはあった。
「……オ○Q?」
率直な感想を、光児がもらす。
「ド○え○んに続いてオバQもいるのカ!」
ぱうおがはしゃぐ。
「Nej、メジェド神ダヨ。エジプトの神様なんだケド、これを改めろってことは……」
ずぶり、と萌衣の手がそのメジェド神を貫いた。
そう、この壁画、当然パーテーションに貼られているのだが、そこだけ障子紙のような薄い紙が貼られ、その向こうには小さな隠し部屋があって――。
「Oj! 聖杯ダヨ!」
手を引き抜き、萌衣は誇らしげに、握りしめたモノを掲げる。
それは例のペットボトル製の「聖杯」だ。
「つまり……今度はボクの“勝ち”ってことダネ!」
ドヤ顔の萌衣に、光児が尋ねる。
「えと……“勝ち”って言うと?」
「だって……」
まだ進一郎――否、ミイラが横たわる台座の隅に、萌衣はペットを置いた。
「だって……このペットにはまだ、何も入ってナイヨ?」
「そりゃそうだけど、それがどうかしたの?」
光児の問いに、なおも萌衣は得意げに返す。
「聖杯はふたつ、助かるのはふたりまでってハナシだったヨ?」
ふぁさ。
萌衣がミニスカートの前を大きく持ち上げる。
その下からは少女用のシンプルな下着が覗けたが、姪の手はそれを、膝の上にまで降ろしてしまった。
「え? え……ッッ!?」
光児が驚き、赤面する前で、下着に押し込まれていた幼い少年の茎がぽろんと飛び出してくる。
「ふふ……そんな風に見つめられたら恥ずかしいヨ……♥」
萌衣もまた、その白い頬を染め、しかしどこか嬉しげな声を上げて、愛らしい肉茎を「聖杯」へと向けた。
そのそのたっぷりとした生白い包皮に覆われた先端部分が、ちょうどペットボトルの上に乗っかった「漏斗」状の数cm上の辺りに来る。
「じゃあボクはお先に……」
「え? えぇぇ……ッッ!?」
戸惑う光児の目の前で、少年の包茎ペニスの先端から、水流が迸った。
ぷしゃああああああああッ。
それは漏斗に注がれ、そして無色透明のペットボトルの中を満たしていく。
「おぉ、ここだと萌衣のオシッコがピンクだって分からないノダ!」
ぱうおが妙なことで感心する。
そう、萌衣は特異体質で、その尿は紅い。
しかしほのかな赤い照明の下では、ペットの中に溜まっていく液体は、無色透明に見えていた。
愛らしい茎から尿が放たれ、ペットの中へと注がれる様子を、光児は双眸に微熱を湛えながら、見つめていた。
「あ……♥ ふぅぅ……♥」
気持ちよさげなため息と共に、萌衣が放尿を終える。
ちょろろッ。
聖杯の中に微かな波紋が立ち、その500mlという容量の八割が少年の小水で満たされた。
「ん……?」
ふと、光児が眼鏡を凝らす。
「あん……そんな、ボクのおしっこ、そんな熱い目で見つめちゃイヤだヨ……♥」
また、甘い声を上げる萌衣だが、光児の唇を突いて出た言葉は――。
「封印の扉の前に聖杯を捧げよ……?」
確かに新鮮な尿の詰まったペットの表面には、そんな文字が浮かび上がっていた。
さっきまでは無色透明で何も書かれていなかったはずだが――。
「Oj、どうしてこんな文字ガ?」
萌衣も驚きの声を上げる。
「きっと……これはメタモカラーだよ。温度によって変色するインクで文字が書かれていたんだ」
光児はそのペットボトルに、そっと頬ずりする。
「ほら……だから、萌衣君のオシッコの熱で……♥」
「あの……そのアクションとハートマーク、要るカナ……?」
さすがの萌衣も少々退くが、そんなふたりの手を、ぱうおの手が引っ張った。
「さあ、そうと分かったらもうこの部屋には用はないノダ!」
ぱうおはこの部屋に背を向け、先へ進んでいく。
光児も萌衣もそれに続いた。
「うぅ……ッ」
ひとり残されたミイラ――身体中のテープを剥がされ、頭だけを包帯で覆った全裸少年にされた進一郎は、テープを剥がされた痛みに真っ赤になった肢体を自分の腕で抱きしめつつ、しかし痛みを堪えて立ち上がる。
もう、ここまで来れば脱出ゲームは終わったも同然。
三人はこの先にある扉の前にペットを配置し、そしてスタッフによって扉は開かれる。
それで彼らはこの体育館、否、“漆禁城”からの脱出に成功、ゲームは終了だ。
――しかし、このアトラクションはそれで終わっても、彼の役目はまだ、終わってはいなかった……。
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