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Epilogue

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 ――101号室の応接間には、オトコの子/たちが揃っていた。
 テーブルにはジュースのペットボトルや紙コップが置かれ、クッキーやスナック菓子が皿に盛られていた。
 無事撮影を終えての、ささやかな打ち上げだ。
「ふぅ……」
 そんな中、ちょっと居心地の悪さを覚えながら、それでも進一郎は安堵のため息を吐いていた。
 ――今までのパターンだと、いつの間にかぼくが出演者に回って……なんて展開が待ってたけど、今回はそういうのは免れたみたいだ……。
 ともあれ、終わってよかった。
 真心にジュースを勧められて、ずっと尿意を感じていたものの、カメラマンという大役を仰せつかっていたせいで、トイレに行きづらかった。
 しかしさすがに、そろそろガマンも限界に近づきつつある。
 ちょっと失礼して、トイレへ――。
 と、応接間を出ようとした時。
「進一郎お兄ちゃん!」
 真心が邪気なく声をかけてきた。
「ま……真心クン……っ!?」
 思わず声を裏返らせ、進一郎は少し後ずさる。
 それも無理はない。
 彼には僅かばかり、真心への警戒心が残っていた。
 ――このは最初の時も、この101号室でぼくに聞いてきた。

「オシッコ……です……♥」

 そう、ぼくにおしっこが出せるかどうかを――。
 それに、102号室に転がっていた試作パッケージには光児クンが映し出されていた。

 ――しょうがく5ねんせい 香山かやま光児きゅんがしょうべんきチャレンジ!
 すきなあの子のオシッコは、のめるかな?

 この企画、最初は光児クンが光児クンの姿のままで出演するはずだったのが、予定が変わったんだ。
 それに103号室で見たプレスリリースでは、真心クンが自ら進んでこの企画を受けたと書かれていた。

 ――本企画は梶谷真心本人のたっての希望から始まった。
 ――好きなオトコの子/娘のおしっこを飲むのが大好きな真心は、自ら本動画への出演を望み、笑顔で人間小便器の役にチャレンジ――。

 そして104号室に置かれていた脚本の準備稿には、

「進一郎お兄ちゃんのおちんちんをお口の中に入れて、オシッコ飲みたいんです!」

 ――というセリフが書かれていた。そう、真心クンじゃなく光児クンのセリフとして。
 最後に105号室に訪れた時には、PCに収められたインタビュー動画を見た。
 そこでは光児クンが光児クンとしてインタビューに出て、答えていた。

「ホントは――○○〇〇○○〇〇のオシッコが……飲みたい……んですぅぅ……」

 ピー音で肝心なところは聞こえなかったけれど、つまり、これらの手がかりをまとめると――。
 思い悩む進一郎に、しかし真心は屈託なくペットボトルを勧めてくる。
「進一郎お兄ちゃん、何も飲まないんですか……?」
「い……いいよ……」
 遠慮する進一郎。
 何しろ飲み物はさっき、この娘にさんざん飲まされた。
 そのせいで尿意を催して、それでもいまだトイレに行けていない。
「ともあれ、無事に終わってよかったよ」
 そんな風に話題を変えると、真心はうんうんと頷いた。
「ですねぇ……ぼくもほっとしました、何ごともなくて……」
 ため息を吐く真心には、妙に実感がこもっている。
「何ごとも?」
「はい、ぼく、最初はこの企画、お断りしようと思ったんです。でも、是非にって言われて、それで条件をつけて出ることにしたんです……」
「条件?」
「はい……」
 と、真心は熱を帯びた目でこちらを見上げてきて――。
「……バレなくてよかった」
 また、安堵のため息を吐く。
「え? 何が?」
「な……何でもないですぅ……!」
 頬を染め、真心はぶんぶんとかぶりを振った。
 ――ひょっとして……真心クン、ぼくに正体がバレなかったことを……?
 いや、正確には正体はとっくにバレてて、真心クン――というか、光児クンだけがバレてないって思ってるんだけど――。
 ともあれ、適当に調子をあわせつつ真心と話していると。
「――えぇと、というわけでみなさん、先に始めてもらっているかと思いますが、ささやかながらお菓子をご用意させていただきましたので……」
 洩斗が挨拶を始めた。
「……まず最初に、簡単に出席だけ取らせていただきたいと思います」
 打ち上げって出席なんか取るモンなんだろうか……。
 疑問に思う進一郎だが、洩斗は点呼を始めた。
「蒼生クン!」
「……はい」
「五十嵐柚一クン!」
「はい!」
 次々に声が上がっていき――。
「香山光児クン!」
「はい!」
 元気よく、真心が手を上げる。
「え゛……?」
 思わず大きな目を開けて、進一郎は真心の顔を見つめてしまい――。
「あ゛……」
 自分のしでかしたことに気づき、真心は硬直した。
「あ……違った、今のはナシです」
 洩斗も慌てて打ち消したが、後の祭りだ。
「あ゛……あ゛ぁ゛……」
 真心はしばし呻き声を漏らしていたが、それはやがて。
「いやあああああぁぁぁぁぁ~~~~~ッッッッッ!!!!!」
 絶叫へと変わり、真心はその場から逃げようとして――。
 すてんッ!
「あ痛ッ!!」
 派手に転倒してしまった。
「だ……大丈夫!?」
 手を差し伸べようとして、進一郎はまたウィッグが取れていることに気づいた。
「あ゛……あ゛ぁ゛…………あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……ッッッッッ!!!!!」
 言葉にならない声を上げつつ、光児は廊下をばたばたと走っていき、そしてそのままトイレへと駆け込んでしまった。
「ええ……ッッ!?」
 慌てる進一郎。
「ちょ……ちょっと……ッッ!! 光児クン、その、出てきて! あの、引き籠るなら、その、ぼくが……ぼくが用を足してからに……!!」
 トイレのドアをノックし、進一郎は中の光児へと訴え続けた――。

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ご愛読ありがとうございました。
さて、毎回のことですがちょっとした後日談、「トイレ:進一郎・光児」を含めた「オトコの子/娘のおし○○! 社会科見学編 Complete」を「DLsite」様、「fanza」様(またちょっと遅れますが「デジケット」様、「fantia」様などでも)で販売しています。

\100なので今回の小説、お気に召した方は見てみてください。
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