7 / 7
Epilogue
Epilogue
しおりを挟む――101号室の応接間には、オトコの子/娘たちが揃っていた。
テーブルにはジュースのペットボトルや紙コップが置かれ、クッキーやスナック菓子が皿に盛られていた。
無事撮影を終えての、ささやかな打ち上げだ。
「ふぅ……」
そんな中、ちょっと居心地の悪さを覚えながら、それでも進一郎は安堵のため息を吐いていた。
――今までのパターンだと、いつの間にかぼくが出演者に回って……なんて展開が待ってたけど、今回はそういうのは免れたみたいだ……。
ともあれ、終わってよかった。
真心にジュースを勧められて、ずっと尿意を感じていたものの、カメラマンという大役を仰せつかっていたせいで、トイレに行きづらかった。
しかしさすがに、そろそろガマンも限界に近づきつつある。
ちょっと失礼して、トイレへ――。
と、応接間を出ようとした時。
「進一郎お兄ちゃん!」
真心が邪気なく声をかけてきた。
「ま……真心クン……っ!?」
思わず声を裏返らせ、進一郎は少し後ずさる。
それも無理はない。
彼には僅かばかり、真心への警戒心が残っていた。
――この娘は最初の時も、この101号室でぼくに聞いてきた。
「オシッコ……です……♥」
そう、ぼくにおしっこが出せるかどうかを――。
それに、102号室に転がっていた試作パッケージには光児クンが映し出されていた。
――しょうがく5ねんせい 香山光児きゅんがしょうべんきチャレンジ!
すきなあの子のオシッコは、のめるかな?
この企画、最初は光児クンが光児クンの姿のままで出演するはずだったのが、予定が変わったんだ。
それに103号室で見たプレスリリースでは、真心クンが自ら進んでこの企画を受けたと書かれていた。
――本企画は梶谷真心本人のたっての希望から始まった。
――好きなオトコの子/娘のおしっこを飲むのが大好きな真心は、自ら本動画への出演を望み、笑顔で人間小便器の役にチャレンジ――。
そして104号室に置かれていた脚本の準備稿には、
「進一郎お兄ちゃんのおちんちんをお口の中に入れて、オシッコ飲みたいんです!」
――というセリフが書かれていた。そう、真心クンじゃなく光児クンのセリフとして。
最後に105号室に訪れた時には、PCに収められたインタビュー動画を見た。
そこでは光児クンが光児クンとしてインタビューに出て、答えていた。
「ホントは――○○〇〇○○〇〇のオシッコが……飲みたい……んですぅぅ……」
ピー音で肝心なところは聞こえなかったけれど、つまり、これらの手がかりをまとめると――。
思い悩む進一郎に、しかし真心は屈託なくペットボトルを勧めてくる。
「進一郎お兄ちゃん、何も飲まないんですか……?」
「い……いいよ……」
遠慮する進一郎。
何しろ飲み物はさっき、この娘にさんざん飲まされた。
そのせいで尿意を催して、それでもいまだトイレに行けていない。
「ともあれ、無事に終わってよかったよ」
そんな風に話題を変えると、真心はうんうんと頷いた。
「ですねぇ……ぼくもほっとしました、何ごともなくて……」
ため息を吐く真心には、妙に実感がこもっている。
「何ごとも?」
「はい、ぼく、最初はこの企画、お断りしようと思ったんです。でも、是非にって言われて、それで条件をつけて出ることにしたんです……」
「条件?」
「はい……」
と、真心は熱を帯びた目でこちらを見上げてきて――。
「……バレなくてよかった」
また、安堵のため息を吐く。
「え? 何が?」
「な……何でもないですぅ……!」
頬を染め、真心はぶんぶんと頭を振った。
――ひょっとして……真心クン、ぼくに正体がバレなかったことを……?
いや、正確には正体はとっくにバレてて、真心クン――というか、光児クンだけがバレてないって思ってるんだけど――。
ともあれ、適当に調子をあわせつつ真心と話していると。
「――えぇと、というわけでみなさん、先に始めてもらっているかと思いますが、ささやかながらお菓子をご用意させていただきましたので……」
洩斗が挨拶を始めた。
「……まず最初に、簡単に出席だけ取らせていただきたいと思います」
打ち上げって出席なんか取るモンなんだろうか……。
疑問に思う進一郎だが、洩斗は点呼を始めた。
「蒼生クン!」
「……はい」
「五十嵐柚一クン!」
「はい!」
次々に声が上がっていき――。
「香山光児クン!」
「はい!」
元気よく、真心が手を上げる。
「え゛……?」
思わず大きな目を開けて、進一郎は真心の顔を見つめてしまい――。
「あ゛……」
自分のしでかしたことに気づき、真心は硬直した。
「あ……違った、今のはナシです」
洩斗も慌てて打ち消したが、後の祭りだ。
「あ゛……あ゛ぁ゛……」
真心はしばし呻き声を漏らしていたが、それはやがて。
「いやあああああぁぁぁぁぁ~~~~~ッッッッッ!!!!!」
絶叫へと変わり、真心はその場から逃げようとして――。
すてんッ!
「あ痛ッ!!」
派手に転倒してしまった。
「だ……大丈夫!?」
手を差し伸べようとして、進一郎はまたウィッグが取れていることに気づいた。
「あ゛……あ゛ぁ゛…………あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……ッッッッッ!!!!!」
言葉にならない声を上げつつ、光児は廊下をばたばたと走っていき、そしてそのままトイレへと駆け込んでしまった。
「ええ……ッッ!?」
慌てる進一郎。
「ちょ……ちょっと……ッッ!! 光児クン、その、出てきて! あの、引き籠るなら、その、ぼくが……ぼくが用を足してからに……!!」
トイレのドアをノックし、進一郎は中の光児へと訴え続けた――。
====================================
ご愛読ありがとうございました。
さて、毎回のことですがちょっとした後日談、「トイレ:進一郎・光児」を含めた「オトコの子/娘のおし○○! 社会科見学編 Complete」を「DLsite」様、「fanza」様(またちょっと遅れますが「デジケット」様、「fantia」様などでも)で販売しています。
\100なので今回の小説、お気に召した方は見てみてください。
0
お気に入りに追加
18
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
小スカ短編集(没作品供養)
青宮あんず
BL
小スカ小説の没にしたものを公開していきます。
設定を変えて別のシリーズとして公開したり、他で公開するのをやめたものなど。
BL多め、稀に登場人物一人の場合がある可能性あり。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話
赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。
前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)
ドS×ドM
桜月
BL
玩具をつかってドSがドMちゃんを攻めます。
バイブ・エネマグラ・ローター・アナルパール・尿道責め・放置プレイ・射精管理・拘束・目隠し・中出し・スパンキング・おもらし・失禁・コスプレ・S字結腸・フェラ・イマラチオなどです。
2人は両思いです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
オトコの子/娘のおし○○! 運動会編
雛子一
BL
少年記者、富士進一郎はオトコの子のための高収入求人マガジン、『Weekly Willy Work』で働いている。
ふとしたきっかけから、同誌主催の運動会に出場することになったが――。
週一くらいで更新していきますので、よろしく。
(最初の方は前フリなのでエロなしです)
この作品は「ファンティア」、「ノクターンノベルズ」にも掲載しています。
♡ド田舎×エロショタ×汗だくセックス夏休み♡
霧乃ふー 短編
BL
夏休み。
親戚のいるド田舎に行くことになった俺はそこで美しい少年、結に出会った。
俺は夏休みの間、結の艶かしい肢体を犯して続けた。
そんな夏休みの淫靡な日々♡
ショタ18禁読み切り詰め合わせ
ichiko
BL
今まで書きためたショタ物の小説です。フェチ全開で欲望のままに書いているので閲覧注意です。スポーツユニフォーム姿の少年にあんな事やこんな事をみたいな内容が多いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる