オトコの子/娘のおし○○! 林間学校編

雛子一

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1.おしっこガマン INTRODUCTION

1.おしっこガマン INTRODUCTION

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「――とゆーわけで林間学校の間、皆さんをお世話します、富士ノリコですぅ♥」
 ロングのおかっぱヘアの少女が、ぺこりと頭を下げた。
「「「「「「………………」」」」」
 その場に微妙な空気が流れる。
 ――私立晶瑞学園の校門前。
 既に4年C組の一同、全員が集まっていた。
 そこにやや遅れて到着したのが、観光バス。
 その中から現れたのが、頭にエクステンションを被せ、セミロングにした進一郎であった。
 しかし一同は進一郎とは幾度も顔をあわせており――。
「……ねえ、あの娘……?」
「……うん、彼だね」
「やっぱり彼……?」
 ――ひそひそと囁きあうのは北羽柊一きたわしゅういち香山光児かやまこうじ五十嵐柚一いがらしゆういちといった常識人チーム。
 我関せずなのが蒼生あおい水下雫みなもとしずく江木月洩斗えぎづきえいと尾根河おねかわそそおといった変人チーム。
 そしてぱうお、萌依メイ=デンハーハ、花菱愛兎はなびしあいと港田滝流こうだたけるといった天然チームは、何も考えずに「富士ノリコ」を「富士ノリコ」として受け容れていた。
「はぁい、みなさん!」
 と、微妙なムードを吹き飛ばすかのように、威勢のいい声が響く。
 振り向けば、校門の向こうからさくらが現れた。
「もう時間です。速やかに乗車してください!」
 女教師然としたスーツに身を包み、眼鏡をかけ、凛とした物言いで一同を仕切る。
「「「「「「は~~~~~い!!!!!」」」」」
 と、オトコの子/娘たちも素直に声を揃え、バスへと乗り込んだのだった――。

「「「「「「………………」」」」」
「はぁ~い、どうしました皆さん、元気に歌いましょ!?」
「「「「「「………………」」」」」
「はいは~い、行きますよ~? ウィーリー ウィリー ウィーリー 求人♪ ウィーリー ウィリー 高収入!」
「「「「「「………………」」」」」
 ――バスの中、妙に高いテンションの進一郎による、JASRAC的に問題なさそうな歌声が響き渡っていた。
「「「「「「………………」」」」」
 しかし、生徒たちの反応は芳しくない。
 皆、一様に押し黙り、赤らんだ顔を歪めていた。
「どうしたんでしょう?」
 進一郎は頭にクエスチョンマークを浮かべ、隣に座るさくらへと耳打ちした。
「あー、そうね、みんなおしっこしたいんじゃないかしら?」
 さくらも小声で返してくる。
「え? どうしてです? さっきパーキングエリアに寄ったじゃないですか?」
 ――そう、確かに三十分ほど前、一同はパーキングエリアに寄った。
 もちろんトイレ休憩を取ったが、同時にレストランに入り、昼食も摂った。
 その時、さくらは進一郎へと命じたのだ、一同へと出す水差しに、用意した粉末を入れろと。
 さらに、進一郎自身は飲まない方がいいとも進言した。
「う~む、みんな何でそんなにおしっこがしたいんだろう、全然分からない……」
 考え深げにつぶやく進一郎。
 ――記すまでもなく、その粉末が利尿剤だったわけだが、彼の脳裏にそんな可能性は1mmたりとも思い浮かばないらしい。
「まあ、アンタがバカポンで助かるわ……」
 密かにさくらは満足げなため息をもらした。
 ――ことほど左様に進一郎、性格的には天然だ。
 学力テストでは全国ベスト10にランキングされたこともあるほどに天才的な頭脳を持ちながら、この性格で、さくらにつけられたあだ名が「天才バカポン」。
 天才で、バカで、ポンコツ。
 といっても最近は「天才」が取れて単に「バカポン」呼ばわりが多いのだが……。
「えぇと、ならちょっとどこかでトイレ休憩でも……」
「何言ってんの、そんなことできるわけないでしょ?」
 そう、今は高速道路のど真ん中を絶賛疾走中。
 そんなことはできるわけがなかった。
「目的地の“少年自然の家”への到着にはまだ二時間ほど……えぇ~と、そういうわけだからみなさん、それまで我慢しましょう!」
 進一郎の声に、座席から怒りのオーラが沸き立った。
「そんなに待てないノダ!」
「もれる……もうもれるゾ……!!」
 一同からブーイングがあふれる。
「ど……どうしましょう……?」
 おろおろと、さくらへと向き直る進一郎だが、さくらは何やら顔をうつむけたままだ。
「ね……ねえ、編集……じゃない、さくら先生?」
 その肩を揺するが、それでもさくらはうつむいている。
「ん……?」
 ふと気づく。
 さくらはノートPCのモニタを覗き込んでいて、そしてそれには。
 オトコの子/娘たちの下半身のアップが、何というか、テレワーク風味に分割画面でいくつもいくつも映し出されていた。
 みんなが座る座席に、隠しカメラが取りつけられていたらしい。
「ちょっと編集長ッッ!?」
 思わず大声を上げる進一郎。
「うっさいわねー、みんなを信じなさい!!」
 さくらはモニタから目を離すことなく、一喝する。
「で……でもぉ……」
「4年C組の面々よ! トイレに行けないくらいの試練、自分たちの力で打ち破ってみせてくれるわ!」
「あの~、セリフだけ聞いてると何かアニメの感動シーンみたいですけど……」
「あ、ほら!」
 と、さくらはいよいよモニタに食い入り、そしてノートに小型マイクを接続した。
「――え~~というわけで、始まりました、『ザ・ガマン』!!」
 小声でマイクに向かって、ナレーション風に囁きかける。
 どうやら、もう動画制作は始まっているようだ。
「あの、『ザ・ガマン』って……?」
 進一郎の問いかけを、しかしさくらはスルーしてなおもナレーションを続ける。
「第一回目は『おしっこガマン』! 4年C組の面々は、知らず知らずのうちに利尿剤を盛られてしまいました……」
「――利尿剤……」
 その言葉に、進一郎も反応する。
「へえ……みんなそんなものを飲まされたのか……いつ、誰に……?」
 進一郎の考え深げな声をスルーして、さくらは続けた。
「さて、ここで再度、一同の座席配置を確認しておきましょう」
 ――さくらは手持ちのデジカメで、バスの中を見渡すように撮影した。
 今、一同が乗っているのは定員十数名のマイクロバス。
 座席は左側に一人席が、右側に二人席が配置され、一人席は荷物置きになっていた。
「最前列の二名席に並んで座っているのが、蒼生きゅんと萌依=デンハーハきゅんの淫乱コンビ。二列目に座っているのが江木月洩斗きゅんと尾根河そそおきゅんの一卵性双生児コンビです!」
 はしゃいだ声で、解説するさくら。
 ――う~ん、コンビ名まで作るとは、配置も意図的なものなんだろうか……?
 進一郎が思う間にも、ナレーションは続く。
「三列目が香山光児きゅんと水下雫きゅんの気弱コンビ。四列目は北羽柊一きゅん、五十嵐柚一きゅんの真面目コンビ! そして一番後部のロングシートに座っているのはぱうおきゅん、花菱愛兎きゅん、港田滝流きゅんの天然組になります!」
 ナレーションの間にも、モニタには隠しカメラで捉えたみんなの下半身が、そして尿意を堪えて赤くなったり青くなったり、汗を浮かべたり縦線の入ったりしている表情が写し出される。
「果たして、この中で最初におもらししてしまうのは誰か!? さあみなさん、ベット開始です!!」
 叫ぶさくら。
 どうも誰がもらすかで、賭けを行う趣向のようだ――。
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