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1.PrologueⅡ
1.PrologueⅡ
しおりを挟む――雲ひとつない空から、陽射しが容赦なく降り注ぐ。
浜の砂は触れれば火傷しそうなまでに灼けつき、そしてまたそんな中ではしゃぐ晶瑞学園の少年たちの身体も、容赦なく灼かれていった。
小麦色の肌と着ている純白の水着とのコントラストが陽の光の中で躍動する様子は、ただひたすらにまぶしい。
今日は臨海学校の最終日。
生徒たちは観光地となっている伊豆諸島の某島のホテルに宿泊していたが、本日はファンサービスの一環である撮影会ということで、この伊豆諸島の中にある、ごく小さな無人島へとやってきたのだ。
進一郎は臨海学校の間じゅう、ずっと望遠機能つきのデジカメで海を睨みつけて過ごしたが、ドラゴンズ・トライアングルに潜むシーサーペントを見つけることは、残念ながら叶わなかった。
もちろん、彼も生徒として参加した以上、島での撮影会に参加する義務がある。
今の彼は頭にエクステンション――つまりつけ毛を引っつけ、ロングヘアになり、そしてその日焼けした肢体には、純白の女子向けスクール水着をまとっていた。
生徒のひとり、オトコの娘の富士ノリコ・12歳として臨海学校に参加していたのだ。
とはいえ、ファンがついているでもない飛び入りの生徒とあっては、特に撮影したいと寄ってくるカメコもおらず、時間の間はほぼ自由にUMA探索に費やすことができた。
ことに今日はいつもより外海にある無人島に来たとあって、いつもにも増して目を皿にして、海を観察していたのだが――。
しかし、それにしてもこう暑いと額から汗が滝のように噴き出し、それが眼鏡を濡らして数分ごとに役に立たなくさせた。
幾度眼鏡を拭き、双眼鏡を覗き直しても、視界にはただ青い青い空と、そして碧い碧い海を隔てる海岸線が広がるばかりで、怪しいものは何一つ見えては来ない。
いい加減UMAウォッチにも飽きて視点をずらせば、デジカメに映るのは浜ではしゃぐ少年たちの姿。
オトコの娘アイドル・She-Xxxy'sの四人はみな、カメラを抱えた大きなお友だちに囲まれていた。
スポーティな白ビキニスタイルなのは、五十嵐柚一。
生真面目でおとなしい性格のせいか、この光降り注ぐ中、木陰で佇んでいる。
白いスクール水着で浜風に吹かれているのは、花菱愛兎。
無邪気で子供な性格のため、愛想よくリクエストに応じてポーズを取っている。
サングラスをかけ、マイクロビキニでビーチチェアに寝そべるのは萌衣=Den Hagg。
スゥエーデン人とのハーフである彼の透き徹るような白い肌も、今は褐色になっていた。
そして、可愛らしいフリルのついたワンピースの水着を着ているのは、香山光児。
本来はShe-Xxxy'sのマネージャーだが、今日はウィッグをつけて「梶谷真心」というオトコの娘になりきっている。
また少し視点をずらすと、アトラクションショーの様子が見えてきた。
折りたたみの簡易ステージを砂の上に拡げ、その上に立つのは三人の少年たち。
白いレオタード状のコスチュームで少年ヒーローに扮しているのは洪田滝流。
ステージの中央で派手なアクションを繰り広げていた。
魔法少女のコスチュームでそれをサポートするのが水下雫。
超ミニスカから覗く純白の下着は、灼けた脚と鮮やかなコントラストをなしていた。
悪役として、怪盗風の衣装に身をまとうのは尾根河そそお。
他の少年とは対照的に、黒いタイツにビキニパンツから、灼けた肌を露出させていた。
また、別なステージで歌を歌っているのは江木月洩斗。
白いベストに黒い半ズボンという正装スタイルから、灼けた手脚を伸ばしている。
「しっかし、みんなこの暑い中、よく動くよなあ……」
感嘆のため息をもらしつつ、また少しデジカメを動かすと、浜辺にテントを張り、イスとテーブルを並べただけの、簡易カフェ「11CC」が営業しているのが見えた。
テーブルとテーブルの間を忙しく飛び回るのは三人の少年。
ショッキングピンクのメイド服を着ているのは北羽柊一。
やはりミニスカから白い下着が覗ける度、そのまぶしい白が視る者の目を灼いた。
一方、後のふたりは裸エプロン姿で給仕している。
長い髪と白い肌、華奢な肢体のオトコの娘は蒼生。
繊細で気弱な彼は顔を赤らめつつ、トレイでお尻を隠しつつ働いていた。
もうひとりは、邪気のない、元気な野生の少年、ぱうお。
普段から浅黒い肌をさらに灼いて、しかしそんな真っ黒のお尻を惜しげもなく晒していた。
しかし――進一郎の目を引いたのは、そんな少年たちの姿ではなく、彼らの運ぶグラスだった。
隠れるもののない中をずっと日射しに晒されていた進一郎、身体全体が水分を求めていた。
自販機ひとつない無人島となると水分補給もままならなかったが、あのお店に行けばコーラでもサイダーでもジュースでも何でも手に入る。
一も二にもなくカフェに向かおうとして――彼はふと、さくらの言葉を思い出した。
――あ、それと。トイレがないから飲み過ぎない方がいいわよ。
無人島を訪れる前、さくらはそう言っていた。
厳密には島にも仮設トイレは用意されている。
また、そもそも島に来る時に乗った小型客船が停泊し、そこには当然、トイレもあった。
が、それはみな「ファン用」、つまり大きなお友だちのためのものだというのだ。
見れば、カフェのお客になっているのもみな大きなお友だち。
撮影会もアトラクションもカフェも、少年たちをご贔屓にしてくれるそうしたシュミのお兄さん、おぢさんたちを対象にしたものであり、彼らはもてなさねばならないお客様。
そんなわけで生徒たちに優先してトイレも用意されているのは、当たり前と言えば当たり前だ。
しかし猛暑の中、水分を摂るなというのも無茶な話。
進一郎は脳裏に浮かんださくらの言葉を一蹴し、カフェに向かった――。
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すんません、エロは次回から。
明日更新します!
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