海の声

ある

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192.私の娘

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聞こえてたのね。でも、こんな笑顔を見たのはいつぶりなんだろう…そんな風に思ってしまうほどにキラキラと輝く笑顔を見せた我が子の願いを断れる訳がなかった。

勿論、村長には理由を話して、"祭事よりも娘の体調を優先する"という条件でその依頼を引き受けることにした。 

それからは体調の良い日に万全を期してから、祭で必要になる貝殻を拾いに行ったりもした。

そして半年が経つ頃だった。
私が仕事を終え、家へと戻ると、外から見上げた娘の部屋の窓が、やけに眩しく夕陽を反射している気がしたが、あまり気にとめずに玄関、そして階段を上がると、そのまま"ただいま"と声を掛けてから娘の部屋のドアを開けた。
そこで目に映り込んだのは、ベッドから腕をだらりと下ろしたまま、その手のひらから床へと海石を零している娘の姿だった。

私はすぐに脈を確認する。前職でもある准看護師の資格を有する私が間違える筈も無い。何度も何度も確認をするも…娘の脈は完全に止まっていた。

すぐに救命処置を行い、脈と呼吸の確認を終え、安心するのも束の間、診療所、そして本土の大きな病院へと連絡を取る。いつから呼吸が止まっていたのか…
チアノーゼ…変色は見られなかったが、心配でならない。
この島の医療設備では満足な治療は受けられない事くらい知っている。いや、知っていたからこそもっと設備の整った大きな病院へ入院させるべきだった。そんな後悔をしてもあとの祭りだ。
それでもこの島に残っていた理由は海美のメンタルケアの面が大きい。こんな小さな子供にひとり入院生活を送らせるわけにはいかない。唯一の家族である私が側に居なければ…そんな思いが大半を占めていたが、海美が育ってきたこの島の自然こそが一番の薬になるとも思っていたからだった。
しかし今は、その選択の全てが後悔と自虐の念へと変わって私の胸を締め付けた。

そして駆けつけた医者に診てもらっているうちに到着したドクターヘリに同乗すると、私と娘は竹島病院へと搬送された。

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