海の声

ある

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127.真夏の雪

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窓の網戸で騒がしく鳴く蝉の声で目が覚めた。

「うわっ!!びっくりしたぁ!!」

寝起き早々、すぐ横のテーブルからこちらを見つめていた海美に驚き、その拍子にテーブルの脚へ頭をぶつける。

海美はそれ見て微笑むも、何も言わずに俺へと視線を向け続ける。

朝から何見てんだよー…なんかめっちゃ恥ずいんですけど。

「おはよ。えっと…どうかした??」

頭を抑えつつ俺がそう言うと海美は『ううん、別に。おはようっ♪』と笑った。

洗面所から自分の歯ブラシと使い捨ての物とを部屋に持ってくると、歯を磨きながらカーテンを開ける。

すると俺の起床を待ちくたびれていたかのようにギラギラと輝く灼熱の日差しが降り注いだ。

そして窓を開けベランダへ出て目の前に広がる沖洲の風景を見る。沖洲の海は今日も変わらずに溶けたビー玉みたいだ。

ボーッと"何もない"景色を見つめていると、脇腹に"何か"が突き刺さり、除雪車みたいに口から白い…この先はジシュクしよう。

「ナヌフンダオ!!(何すんだよ)」

俺が振り返ると、満面の笑みを浮かべる海美が俺の背後で口とお腹を押さえて笑いを堪えていた。

『ちょっと!!誠司っ!!何よ今の!!なんか降ってきたんだけどー!!』

庭の方から母さんの声が突き刺さる。

俺が海美を指差してから母さんの声の方へその指を向けると、手を合わせて"ごめん♪"と頭を下げ、何故かピースをして俺の横へと歩み寄ってきた。

俺は首を傾げて"わけわからん"とジェスチャーすると、母さんに手で謝って再び海美と海を…そう、海美と景色を眺めたのだった。







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