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126.暗闇に響く
しおりを挟む「ちょっ…気になんないの?」
『だって考えても分かんないでしょ??たぶんいつか分かるって♪私がずーっとこのままなワケないしさ。』
「それってどういう…っ何でもない…」
俺はその質問の答えが返ってくるのがなんだか怖くなって聞くのをやめた。
このままなワケがない…
病院で横になっていた海美の姿が脳裏に浮かび、ふと目をやった枕元の心電図の波が弱々しくなり、だんだんと直線に近づいていき…
やめた。そんなワケない。
変な事考えすぎだ。
きっと海美が"目的"を果たせば、その時にはきっと港で待つ俺たちに、フェリーから降りてきた海美が笑顔で"お待たせ"って。
うん。そうだ、そうじゃなきゃ困る。
俺は晩御飯を一気に胃袋へかきこみ、片付けをして一通りの寝る前の支度を終えると、床に敷いた布団の上に横になって照明のリモコンボタンを押した。
すると、しばらくしてから常夜灯の光がうっすらと照らす室内に、ベッドの上の海美から小さな声が届いた。
『誠司くん起きてる??』
海美の影が少し身体を起こしてこちらを見る。
「どうしたの??」
『ううん、何でもない。』
「…もしかして寝れない?」
俺がそう言うと影が元に戻り『なんかね…』という言葉の続きを待った。
そして小さな咳払いが聞こえた後『気がついたら誰も居ない世界になっちゃってるんじゃないかって…不安になる。』と細い声が耳に届いた。
俺は、時折不安を打ち明けてくる海美の心の繊細さを少しくらい知っているつもりだ。
今日は色々あったからな…無理もないか。
「なんで?大丈夫だよ。どんな世界にだって俺と美雨だけは居るからさ…ははは♪それって逆にウザいかなぁ?」
そう言ってはみたけど、海美は黙ったままだ…
俺はベッドに横になる海美の影へと目をやるが、眠りに落ちるその時までその影が動く事はなかった。
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