海の声

ある

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121.隠れた想いは突然に。

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「もしさぁ…」

俺は頬杖をついて海を見つめたまま口を開いた。

「もし美雨のおじさんが本当に美雨の事どーでもいいって思っててもさ、俺達は美雨の事ちゃんと心配するからな。」



ん?

何故か無言の2人に顔を向けると、海美は口元を緩ませ、美雨に関しては笑いを堪えているのは明らかだった。

「なんだよっ。」

『セイジ自分でナニ言ったか分かってんの??ップ…』

「ナニ笑い堪えてんだよ!!んまぁ、確かに今思えば恥ずかしい事言ったかもしんないけど…いちお言っとかなきゃって思ったの!!」

『"今"じゃなくて"言う前"に思えって!!あははははッッ♪』

『ゴメン誠司くんッ…あははははッ♪だって親みたいなこと言うんだもんっ!!』

すると美雨が立ち上がって両手をぐんと天井へ伸ばした。

『ンーッ!!ほんとセイジってばか。もーいーやっ♪お腹空いたッ!!コンビニかどっか行…こーよ…』

突然に語勢を失った美雨を見上げる。
すると見開いた目が海の方に向けられたままその身体を硬直させていた。
そしてその腕がゆっくりと下へ降り始めた時、"ザッ"という靴の擦れる音に、俺達も美雨の視線の先へと目をやった。
と見覚えのあるその顔に俺は慌てて背筋を伸ばした。

『なんで…えっ、どう…したの?』

「あっ、こんばんは…」

そこに立っていたのは何と、たった今俺たちの話に出ていたばかりの"美雨のおじさん"だったのだ。

何故この人が居るのか、どうしてこの場所が分かったのか、そんな事が頭の中を猛スピードで駆け巡る。それは美雨も同じようで、口を僅かに動かしつつ微動だにしないままおじさんを見つめている。

そして、そんな俺たちの様子を気にすることもなく、おじさんはゆっくりと低く、そして優しい声で言ったのだ。

『帰るぞ。』と。

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