海の声

ある

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55.ボクの家

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「な、なんだよ?」

『ん?なんか気持ち悪い顔してるなぁーって思ってさ♪』

「はいはい…で、この先には何があんの?」

『はいっ♪この先は何もありませーんッ♪』

「はぁ?なんだよそれ。」

『こっから先は特に何もないんですよ♪』

「なんでそんな嬉しそうなんだよ?」

『だってなんか期待してるみたいだったからさ♪』

性格わりーなコイツ…
けど、なんかだんだんと打ち解けてきたよな。いや、俺がコイツの辛口に慣れてきただけなのか?

「そーいえば美雨んちってドコよ?」

『なに…?家聞いてどうすんの?』

なんだよその顔は…

「いやなんとなくだよなんとなく!!別に教えたくないってんならいいよ!」

『…別に教えてやってもいいよ。すぐ近くだし。』

…?ちょっと待てよ。性格が違い過ぎてすっかり忘れてたけど、そういえば美雨は海美の妹なんだよな?

「あれ?お前海美の妹って言ってなかった?」

『!!!!…あ、』

「"あ、"ってなんだよ!!」

『ハメたなぁ!!こんにゃろぉーっ!!』

「いやいや…俺もすっかり忘れてて…ってか"ハメたな"ってことはやっぱちげーのかよっ!!」

『違わないッ!!ボクはずっと海美ねぇと一緒だったし、ホントのお姉ちゃんみたいなモンだもん!!』

どおりでこんなにも性格が違うわけだ…納得…

「まぁいいや。お前はお前だもんな。」

『なんだよそれ!!勝手に納得すんなし。』

「で、お前んちはドコなの?もう着く??」

『なんかムカつく…』

急に機嫌を悪くしてしまった美雨の後を追って海沿いの道から山の方へと脇道に入った。
コンクリートで簡単に舗装された坂道をひたすら登って行くと、樹々の隙間に瓦屋根が見え始める。しかし近づいて行くとその屋根には枝葉が積もり、その家の敷地も玄関へと続く通路部分を除いて草が伸びきっており、人の住んでいるような家ではなかった。

「おっ、これが美雨の家か!!」
俺が完全に冗談で言った一言に美雨はクスリとも笑わずに答えた。

『これがボクの家だよ。』

その表情は冗談を言ってるわけではないようだった。だがこんな廃墟のような家が美雨の家とは思えない。

「え?お前さぁ、冗談ってのは本当か嘘か分からないから通用するモンであって、こんなん冗談にもなんねーよ。」


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