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45.海美のキオク2
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と同時に疑問が浮かび上がる。
じゃぁ何故私はここにいるんだろう…
そんな中"その子"の口から出た1つの単語に断片的な記憶が渦巻のように私の中へ入り込んでいく。
"父さん"
その単語とリンクして、私は1番大切な存在を思い出した。
あっ、お母さん…!!
私は無我夢中で走った。
行かなきゃ。
その瞬間"キーン"とした頭痛と共に頭の中で何かが光りを放ち過去の記憶が芽を出したのだ。
そうだ、私は1人で海へ行こうとして…あれ?寒かった…筈なのに。蝉?夏?なんで?理由はわからないけど…それから、何かあった??ッ…思い出せない。わかんないよ。
だけどお母さんはきっと心配してる。たった1人の"家族"だから。
早くお母さんの胸に飛び込んで、柔らかなその温かい身体をぎゅっと抱きしめてこの不安を消して欲しい…
足が悲鳴を上げている。しかしその足は止まる事なく走り続けた。
『やっと…着いたッ…お母さんは?』
張り裂けそうな胸と苦しい喉を抑え、車でお母さんが居ることを確認すると、玄関へと足早に向かった。
"ガチャ"
…と、私の帰りを待ち望んでいたように玄関のドアが開いた。
あっ…お母さんだっ!!
ついさっきまで見ていた筈なのに何故か懐かしさを感じるお母さんの姿が目に映る。
その瞬間、抑え込んでいた不安が一気に弾けた。
『お母さんッッ!!なんか変なのッ!』
私は渾身の力を振り絞り母の元へと強く大地を蹴った。
"ザザーッッ!!"
痛いッ!!!
ダイブした私の身体は、そこにある筈の母の身体を"すり抜け"そのまま地面に叩きつけられてしまう。
えっ…
私は混乱に頭をかき乱されながら後ろに立つお母さんを見上げた。
お母…さん?
私の大好きなお母さんは、転倒した私に目もくれず淡々と玄関の鍵を閉め、無表情に鞄を開き鍵をしまう。
そんな…なんで?
『ねぇ…お母…さん?』
そしてお母さんは"ふぅ"と小さな溜息を吐き、私の部屋の窓を見上げると、ゆっくりと私の側から段々と離れていく。
私は立ち上がり目の前で何度も叫んだ。
『お母さんッ!!ねぇっ…お母さんッ!!…お母さぁぁぁんッッ!!』
そんな私には目もくれず顔色ひとつ変えるく、お母さんは車の横へ立つと運転席のドアへと手を掛けた。
『ねぇ…お母さん…なんで気付いてくれないの??助けてよ…怖いよ…不安だよ…』
…そんな問いかけも虚しく、母は無表情のまま車へと乗り込んでしまった。
"海美っ、ちゃんとシートベルトしてね♪"
その優しい声も今は聞こえない。
私が乗る筈の助手席には鞄が置かれ、私の乗車を待つことなくお母さんは私を置いて行ってしまった。
そっか…やっぱり…私…死んじゃったんだね…
私はその場に座り込む。
ヒグラシの声が包み込むオレンジ色に染まり始めた空の下、声を押し殺して地面を濡らした。
じゃぁ何故私はここにいるんだろう…
そんな中"その子"の口から出た1つの単語に断片的な記憶が渦巻のように私の中へ入り込んでいく。
"父さん"
その単語とリンクして、私は1番大切な存在を思い出した。
あっ、お母さん…!!
私は無我夢中で走った。
行かなきゃ。
その瞬間"キーン"とした頭痛と共に頭の中で何かが光りを放ち過去の記憶が芽を出したのだ。
そうだ、私は1人で海へ行こうとして…あれ?寒かった…筈なのに。蝉?夏?なんで?理由はわからないけど…それから、何かあった??ッ…思い出せない。わかんないよ。
だけどお母さんはきっと心配してる。たった1人の"家族"だから。
早くお母さんの胸に飛び込んで、柔らかなその温かい身体をぎゅっと抱きしめてこの不安を消して欲しい…
足が悲鳴を上げている。しかしその足は止まる事なく走り続けた。
『やっと…着いたッ…お母さんは?』
張り裂けそうな胸と苦しい喉を抑え、車でお母さんが居ることを確認すると、玄関へと足早に向かった。
"ガチャ"
…と、私の帰りを待ち望んでいたように玄関のドアが開いた。
あっ…お母さんだっ!!
ついさっきまで見ていた筈なのに何故か懐かしさを感じるお母さんの姿が目に映る。
その瞬間、抑え込んでいた不安が一気に弾けた。
『お母さんッッ!!なんか変なのッ!』
私は渾身の力を振り絞り母の元へと強く大地を蹴った。
"ザザーッッ!!"
痛いッ!!!
ダイブした私の身体は、そこにある筈の母の身体を"すり抜け"そのまま地面に叩きつけられてしまう。
えっ…
私は混乱に頭をかき乱されながら後ろに立つお母さんを見上げた。
お母…さん?
私の大好きなお母さんは、転倒した私に目もくれず淡々と玄関の鍵を閉め、無表情に鞄を開き鍵をしまう。
そんな…なんで?
『ねぇ…お母…さん?』
そしてお母さんは"ふぅ"と小さな溜息を吐き、私の部屋の窓を見上げると、ゆっくりと私の側から段々と離れていく。
私は立ち上がり目の前で何度も叫んだ。
『お母さんッ!!ねぇっ…お母さんッ!!…お母さぁぁぁんッッ!!』
そんな私には目もくれず顔色ひとつ変えるく、お母さんは車の横へ立つと運転席のドアへと手を掛けた。
『ねぇ…お母さん…なんで気付いてくれないの??助けてよ…怖いよ…不安だよ…』
…そんな問いかけも虚しく、母は無表情のまま車へと乗り込んでしまった。
"海美っ、ちゃんとシートベルトしてね♪"
その優しい声も今は聞こえない。
私が乗る筈の助手席には鞄が置かれ、私の乗車を待つことなくお母さんは私を置いて行ってしまった。
そっか…やっぱり…私…死んじゃったんだね…
私はその場に座り込む。
ヒグラシの声が包み込むオレンジ色に染まり始めた空の下、声を押し殺して地面を濡らした。
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