海の声

ある

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26.ユメ

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…その夜俺は夢を見た。

それは、砂浜で海美と遊んでいる夢だ。

その夢の中で2人は波打ち際を走り、貝殻を拾った。

いつも澄ました顔をして無口な海美は、夢の中ではキラキラとした笑顔で…
声は聞こえないけどたくさん喋って笑って…

すると突然辺りが夕陽に染まり、"ビューッ"と吹いた潮風に海美の麦わら帽子が飛んでいく。

俺はそれを追いかけて走ったが、俺から逃げるように麦わら帽子は天高く昇っていって…

また景色が変わり、今度は星のきらめく夜空へと変わる。

気が付くと、何故か砂浜で海美と座って夜空を眺めていた。

"ドーンッ"

突然夜空に咲いた花火に目が眩む。

「海美っ!!見て!!」

俺は満面の笑みを浮かべて横を向く。

そこには暗闇に砂浜だけが広がっていて…


『誠司ー!!ごはーん!!』
…また母さんか。

朝食を食べながら昨夜の夢の事を考えていた。

『あんた何?ぼーっとしちゃって。』
しゃもじを片手に母さんが俺の顔を見る。

「え?あぁ…今日はちゃんとしたご飯だなぁーって。」

『流石に今日からはちゃんとした朝食くらい作るわよ。で…あんた早速彼女でもできたの?』

突拍子も無い発言に味噌汁が鼻の奥に逆流してきた。いきなりなんて事言うんだこの人は!

「な…なんでだよ!そんなん出来るわけねーじゃん!ちょ…水取って!」
母さんは目を細めながら水を差し出す。
『あら?そう?なんだか引越してから妙にウキウキして海ばっか行くもんだから彼女と待ち合わせでもしてるかと思った。』

「そんな引越してすぐに彼女なんて作るやついねーし!」

『今のご時世、分からないじゃない。小学生でも付き合ったりとかするんでしょ?』

「そんなん一部のマセガキだけだろ。母さんは世間の言葉に流されすぎなんだよ。」

『そ。まぁ誠司も彼女できたらウチ連れて来ていいからね♪』

そう言われて海美の顔が浮かんでしまった自分が恥ずかしくなり朝食を一気にかきこむと、ソファーでテレビを見ている父さんの横に"ドカッ"と座った。





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